雅4〈7月25日(日)①〉
文字数 522文字
雅四、七月二十五日(日)
一
見ると水島は泥のように眠っていた。
全く音を立てなかったため、再び声をかけるまで気付がなかった。ただ目をつぶっているだけのように見える。キレイな寝顔だった。
まったく、何しに来たんだか。
あと五分もすれば打ち上げが始まる。手元の時計を確認したとき、自分の爪がチラついた。ラメの入った桜色。露天の光を受けてキラキラと輝く。恥ずかしいほど自分は恋をしているのだと思った。神経を使うのが嫌でセットすることのなかった前髪。夜は肌がキレイに見えるからと、いつも以上に重ねたおしろい。何度も上げ直したまつげ。そう、すべては飛鳥様に見合うため。
鼻の奥がしびれる。目頭が熱い。
でも飛鳥様は。
手のひらを強く握り締める。あたしは、飛鳥様が連れて戻ってくるだろうあの子に謝らなければならない。心底から憎らしいあの子に。人の時間を奪おうとする、あの子に。
いても立ってもいられなかった。飛鳥様があの子を連れて戻ってくるのなんか見たくなかった。これだけの人混みだ。今から追いかけてもまだ間に合うかもしれない。そっとイカ焼きを置くと立ち上がる。水島が起きる気配はない。
少しだけ裾を上げて駆け出した。
一
見ると水島は泥のように眠っていた。
全く音を立てなかったため、再び声をかけるまで気付がなかった。ただ目をつぶっているだけのように見える。キレイな寝顔だった。
まったく、何しに来たんだか。
あと五分もすれば打ち上げが始まる。手元の時計を確認したとき、自分の爪がチラついた。ラメの入った桜色。露天の光を受けてキラキラと輝く。恥ずかしいほど自分は恋をしているのだと思った。神経を使うのが嫌でセットすることのなかった前髪。夜は肌がキレイに見えるからと、いつも以上に重ねたおしろい。何度も上げ直したまつげ。そう、すべては飛鳥様に見合うため。
鼻の奥がしびれる。目頭が熱い。
でも飛鳥様は。
手のひらを強く握り締める。あたしは、飛鳥様が連れて戻ってくるだろうあの子に謝らなければならない。心底から憎らしいあの子に。人の時間を奪おうとする、あの子に。
いても立ってもいられなかった。飛鳥様があの子を連れて戻ってくるのなんか見たくなかった。これだけの人混みだ。今から追いかけてもまだ間に合うかもしれない。そっとイカ焼きを置くと立ち上がる。水島が起きる気配はない。
少しだけ裾を上げて駆け出した。