聖3〈6月23日(水)①〉
文字数 663文字
聖三、六月二十三日(水)
一
例えば、三日後の予定を待ち遠しく思っていたとする。その場合、間に存在する二日間は、その時こそ長く感じるが、振り返ってみるとその時間こそないに等しい。
だから約束は遠い未来にしない方がいい。そこまでの時間が無くなってしまうから。
出来れば近くに、出来るだけ近くに、焦点を合わせるように。
しかしだからといって現実そううまくいく訳もなく、僕は合わせるべき焦点が見つからず、ただただ美しい過去を引きずりながら日々を食い潰していた。その合間に会長がよぎる。
厄介なのはこちらの事情を共有してしまったこと。体温を知ってしまったこと。手のひらを握りしめる。
スズナ。
僕は静かにため息をついた。
あれなんだよ。それなんだよ。僕は「僕」って言ってるからには男なのであって、昨日みたいに朝ちょっと大変なことになっちゃうと困るわけで。でも正直あれなわけで。
手のひらをじっと見つめる。自分の手であることに変わりはないはずなのに、こうやって長い間見つめていると何だか別の固体にも思えてくるから不思議だ。
会長の手のひらはしっとりと僕の手に吸い付いて、まるで自分の手にこそピッタリなじむようだった。抱きしめた身体は思ったより小さくて、ともすれば壊してしまいそうで、首なんかも頼りなくてあぁもう。
スズナ。
君を、あくまで君を想って、彼女を抱きしめたいと思ってしまうのは浮気なんだろうな。決して触れぬはずの想いが、ともすれば現実になりうる。
空がまぶしい。今日も太陽は昇る。