聖4〈7月25日(日)①〉
文字数 667文字
聖四、七月二十五日(日)
一
夏休みに入る直前、生徒会で一学期最後の集まりがあった。内容は相変わらず一方的な業務連絡に終始する。話が終わり帰り支度をしていると、人の気配がした。視界の端に映り込んだ赤茶色の髪。通り過ぎる時、声がした。
「今月二十五日、午後六時半、××神社前」
振り返る。近い距離で目が合った。
「時間厳守」
そうして何事もなかったかのように、会長は後輩に必要書類を渡して出て行った。
今日は日中ずっといい天気だった。それは夜も続いていて、月も星も明るい。この調子が明日も続いて欲しい。
七月二十五日。
夜の空気にも四季はある。温度、湿度、その匂い。夏は、成長し続ける葉の青臭い香りが立ちこめる。
家から歩いて三十分ちょっと。僕は軽い足取りで××神社に向かっていた。家を出るとき自転車にしようか迷ったが、人混みでの機動力の低下と、盗難のリスクと、たぶん、いやおそらく浴衣で現れるはずの会長と歩くことを想定してやめた。
今日は地元の花火大会の日だ。毎年七月最週の日曜日に行われる。その規模はどうやら国内でも三本の指に数えられるようで、県外からの集客力もあった。
そうして神社前のこの辺り一帯は、花火をより近いところで見ることが出来るため、本当に花火を楽しみたい人たちが集まり、恋人同士など、一緒にいることを楽しみたい人たちは川沿いに向かう。そこなら花火から離れる代わり、音を気にせず会話をしながら、川に映る花火を見ることができる。露天は主に丘のふもと、大通りから一本入った通りに並ぶ。
一
夏休みに入る直前、生徒会で一学期最後の集まりがあった。内容は相変わらず一方的な業務連絡に終始する。話が終わり帰り支度をしていると、人の気配がした。視界の端に映り込んだ赤茶色の髪。通り過ぎる時、声がした。
「今月二十五日、午後六時半、××神社前」
振り返る。近い距離で目が合った。
「時間厳守」
そうして何事もなかったかのように、会長は後輩に必要書類を渡して出て行った。
今日は日中ずっといい天気だった。それは夜も続いていて、月も星も明るい。この調子が明日も続いて欲しい。
七月二十五日。
夜の空気にも四季はある。温度、湿度、その匂い。夏は、成長し続ける葉の青臭い香りが立ちこめる。
家から歩いて三十分ちょっと。僕は軽い足取りで××神社に向かっていた。家を出るとき自転車にしようか迷ったが、人混みでの機動力の低下と、盗難のリスクと、たぶん、いやおそらく浴衣で現れるはずの会長と歩くことを想定してやめた。
今日は地元の花火大会の日だ。毎年七月最週の日曜日に行われる。その規模はどうやら国内でも三本の指に数えられるようで、県外からの集客力もあった。
そうして神社前のこの辺り一帯は、花火をより近いところで見ることが出来るため、本当に花火を楽しみたい人たちが集まり、恋人同士など、一緒にいることを楽しみたい人たちは川沿いに向かう。そこなら花火から離れる代わり、音を気にせず会話をしながら、川に映る花火を見ることができる。露天は主に丘のふもと、大通りから一本入った通りに並ぶ。