飛鳥6〈8月15日(日)①〉
文字数 570文字
飛鳥六、八月十五日(日)
一
例えば、二人の人間が互いに背を向けて立っているとする。その関係は何だっていい。それぞれに言い分があり、対立する。そうして相手が折れるのを待つ。
俺は自分の意思を貫きたかった。しかし、同時にこっそり振り返っては、振り返ることのない相手がこっちを向くことをずっと待っていた。本当に長い間、ずっと。
真琴は何とか残れることになった。これも鈴汝が「学校行事の一環」を熱く訴えたためだ。真琴の親父も生徒会長の言うことはすんなり受け入れたようだった。
「すいません・・・・・・ありがとうございます」
真琴は鈴汝が戻って来るなり、丁寧に頭を下げた。ほっとする。ようやく空気があたたかいものに変わった。言っておくが、今は夏だ。
その後食事を終えて部屋に戻る。食事前にシャワーは浴びたが、頭はまだ洗っていない。それにせっかく温泉があるのだからもう少し足を伸ばしたい。
二十時前か。
「お、お前また風呂行くのか?」
高崎が腹の向こうから顔をのぞかせた。
「ああ。お前は?」
「俺はもういいや。あとさっき鮫と水島が準備してたぜ」
げ。
気が重くなる。俺の顔を見て、何か思う所があったのか、高崎は眉を下げた。
「・・・・・・でもすぐ行けば大丈夫じゃねぇの? あいつらまだ部屋で遊んでるだろうし」
それなら、と俺は早めに地下の風呂場に向かう。
一
例えば、二人の人間が互いに背を向けて立っているとする。その関係は何だっていい。それぞれに言い分があり、対立する。そうして相手が折れるのを待つ。
俺は自分の意思を貫きたかった。しかし、同時にこっそり振り返っては、振り返ることのない相手がこっちを向くことをずっと待っていた。本当に長い間、ずっと。
真琴は何とか残れることになった。これも鈴汝が「学校行事の一環」を熱く訴えたためだ。真琴の親父も生徒会長の言うことはすんなり受け入れたようだった。
「すいません・・・・・・ありがとうございます」
真琴は鈴汝が戻って来るなり、丁寧に頭を下げた。ほっとする。ようやく空気があたたかいものに変わった。言っておくが、今は夏だ。
その後食事を終えて部屋に戻る。食事前にシャワーは浴びたが、頭はまだ洗っていない。それにせっかく温泉があるのだからもう少し足を伸ばしたい。
二十時前か。
「お、お前また風呂行くのか?」
高崎が腹の向こうから顔をのぞかせた。
「ああ。お前は?」
「俺はもういいや。あとさっき鮫と水島が準備してたぜ」
げ。
気が重くなる。俺の顔を見て、何か思う所があったのか、高崎は眉を下げた。
「・・・・・・でもすぐ行けば大丈夫じゃねぇの? あいつらまだ部屋で遊んでるだろうし」
それなら、と俺は早めに地下の風呂場に向かう。