真琴3〈6月19日(土)①〉
文字数 867文字
真琴三、六月十九日(土)
一
相変わらず雨は降り続いている。これで三日連続だ。これだけ続くと一体どこにそれだけの水分をため込んでいたのかと思ってしまう。まるで「新しい世界に適応するためにいい子を演じてきたけど、ようやくそれが日常になじんで、その反動で疲れが一気に出てしまった」ような降り方。
それでもいい加減止んでくれるといいんだけどなぁ、と思う。帰り合羽着たくないし。自転車通学ならでは。
その時ふと前に学校の前の坂を下っている時、歩きの人に「自転車は楽でいいなー」と言われたことがあるのを思い出す。しかし家から学校までの距離を考えて自転車が許可されているのであって、決して楽じゃない。特に冬の晴れた日なんかは田んぼ道を西に向かって帰るつらさは一度体験して欲しい。偏西風。別名遠州の空っ風。あれだけは本当にえげつない。
「真琴ちゃん、今日部活一時からだって」
振り向くと千嘉ちゃんが次の授業である数学の教科書を机に出していた。
「分かった、ありがとう」
「今日からポジション別に練習に加えてもらえるらしいよ」
「え、本当に?」
普段ボールを触れるのは、練習が始まる前のほんの数分だけだ。その後は走り込み、筋トレ、声出しをずっと繰り返してきた。そのためボールを使った練習に加えてもらえるのは単純にうれしかった。千嘉ちゃんはアウトサイドヒッターで、私はリベロ。
「うん。今朝キャプテンに会って、そのとき言ってた」
・・・・・・すごい。さすが千嘉ちゃん。あのキャプテンともう普通に話してる。
キャプテンも千嘉ちゃんと同じくアウトサイドヒッターで、左に比べて右肩の筋肉が一回り大きく、背中は肩甲骨が飛び出そうなくらいよくしなる。ヨーロッパの絵画に描かれそうな体つきをしていて、その姿は単純に美しいのだけれど、まとうオーラというか、雰囲気というか、その辺の何かに圧されて非常に近寄りがたいのもまた事実。
チャイムが鳴る。十一時十五分。土曜日であるため、今から始まる数学で今日の授業はおしまいだ。あと一頑張り。
一
相変わらず雨は降り続いている。これで三日連続だ。これだけ続くと一体どこにそれだけの水分をため込んでいたのかと思ってしまう。まるで「新しい世界に適応するためにいい子を演じてきたけど、ようやくそれが日常になじんで、その反動で疲れが一気に出てしまった」ような降り方。
それでもいい加減止んでくれるといいんだけどなぁ、と思う。帰り合羽着たくないし。自転車通学ならでは。
その時ふと前に学校の前の坂を下っている時、歩きの人に「自転車は楽でいいなー」と言われたことがあるのを思い出す。しかし家から学校までの距離を考えて自転車が許可されているのであって、決して楽じゃない。特に冬の晴れた日なんかは田んぼ道を西に向かって帰るつらさは一度体験して欲しい。偏西風。別名遠州の空っ風。あれだけは本当にえげつない。
「真琴ちゃん、今日部活一時からだって」
振り向くと千嘉ちゃんが次の授業である数学の教科書を机に出していた。
「分かった、ありがとう」
「今日からポジション別に練習に加えてもらえるらしいよ」
「え、本当に?」
普段ボールを触れるのは、練習が始まる前のほんの数分だけだ。その後は走り込み、筋トレ、声出しをずっと繰り返してきた。そのためボールを使った練習に加えてもらえるのは単純にうれしかった。千嘉ちゃんはアウトサイドヒッターで、私はリベロ。
「うん。今朝キャプテンに会って、そのとき言ってた」
・・・・・・すごい。さすが千嘉ちゃん。あのキャプテンともう普通に話してる。
キャプテンも千嘉ちゃんと同じくアウトサイドヒッターで、左に比べて右肩の筋肉が一回り大きく、背中は肩甲骨が飛び出そうなくらいよくしなる。ヨーロッパの絵画に描かれそうな体つきをしていて、その姿は単純に美しいのだけれど、まとうオーラというか、雰囲気というか、その辺の何かに圧されて非常に近寄りがたいのもまた事実。
チャイムが鳴る。十一時十五分。土曜日であるため、今から始まる数学で今日の授業はおしまいだ。あと一頑張り。