真琴2〈6月14日(月)①〉
文字数 890文字
真琴二、六月十四日(月)
一
「真琴大丈夫?」
突っ伏した後頭部に声をかけられる。声で慶子と分かった。
「大丈夫、じゃないかも」
身体を起こして眉間にしわを寄せると、むぅ、とうなる。笑い声がした。
「何だかお坊さんみたい」
四時間目が終わった。今日は次で終わりだ。体育。頑張れ自分。
「大丈夫、あと一時間は元気でいても」
「その後は?」
「頑張れ」
「・・・・・・」
再び机に突っ伏した。
何故こんなにテンションが低いのかというと、たびたび明るい髪色、金髪のあの怖そな兄さんがここにやってくるためだ。五月に会って以来、今日までに二度現れた。たかが二度と思うことなかれ。規則性はないが、二週間に二度だからもはや週一だ(内一度は部活の日だったため、丁重に帰ってもらった)そして何だか今日は嫌な予感がしている。
「次水泳だから、早く行かなきゃ遅れちゃうよ」
「えー、今日本当にやるのかなー?」
顔だけ上げる。外は雨。夏本番に備えて、草木への前払い制の甘やかしがハンパない。蛍光灯の照らす室内に比べ、ひどく薄暗い外の世界。プールをやるにはどう考えても寒い。下手したら凍死者が出てしまう。
「やるよ。だって変更の連絡ないもん。ほら行くよ」
腕を引っ張られてしぶしぶ更衣室を出ると、雨とカルキの混じったにおいがした。思った通りすでに寒い。雨も現在進行形で降り続いている。天然シャワーひー。
「慶子、待って」
私は顔前にひさしをつくりながら手を伸ばした。超ド級の近眼であるため「メガネをかけてもいい権利を取り戻す(授業が終わる)」までは慶子に近くにいてもらわなければならない。
「もう。ほら、急いで」
あわてて追う。その時、丁度隣の男子更衣室から出てきた人にぶつかってしまった。
「ご、ごめんなさい」
急いでるのもあってあたふたと頭を下げる。派手に転倒することもなく、ぶつかっただけで済んだため「ああ」という返事を聞くと同時に再び走り出す。よい子は学んでね。
慶子はプールサイドに続く階段に足をかけてこっちを向いていた。その白い歯がのぞく。
「あらら」