聖6〈8月15日(日)⑦〉

文字数 654文字



  七

 その後かき氷の暖簾の揺れている建物のところまで来ると、六人分の焼きそばとかき氷を買った。かき氷は鮫島先輩の分だけにしたつもりが、
「あたしもかき氷食べたいなー。鮫島先輩に言ったらちょっと分けてくれるかな」
 と言うので急遽もう一つ買うことにした。鈴汝さんはいちごシロップのかかったかき氷を片手に、にっこり笑う。たぶんこの人分かってない。あの人に「かき氷分けて」なんて言ってみろ。「じゃあ分けてあげるよ、口移しで」とか「え、お返しに君食べちゃっていい?」とか言いかねないあの人なら。
〈鈴の鳴る声が聞こえたから〉
 なんだかんだでこの人が最強だと思うんだよね。僕は悔しくなって聞いてみる。
「鈴汝さん」
「何?」
 振り向いた顔には「荷物なら持たないわよ」としっかり書かれている。
「鈴汝さん、何か動物飼ってますか?」
 唐突な質問に目を丸くする。その後首をかしげると、
「前にハムスターは飼ってたけど、今は何も飼ってないわ」
 と答えた。そうして逆に「何で?」と問う。歯の隙間から見える舌はショッキングピンク。
「いえ、きっとそういうの飼い慣らすの上手だろうな、と思いまして」
 もう一口含んで、スプーンをくわえたそのままの格好で「何で?」と同じような調子で口にする。その無防備な表情。プラスなのか、マイナスなのか、僕の中に漂っている感情全ては区分しきれない。でも
「だって現に飼い慣らしてるじゃないですか」
「何を」
 僕は鼻に声をかけて、わざとおどけるようにして言う。
「鳥と、鮫」


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登場人物紹介

草進真琴(そうしんまこと)

高一女子。モットーは「私はただの高校生。それ以上でもそれ以下でもない」

6月10日生まれ、A型。


作画、いく。

火州飛鳥(ひしゅうあすか)

女嫌いの高三。美形。

9月2日生まれ、B型。


作画、いく。

鈴汝雅(すずなみやび)

男嫌いの高二。美人。

3月3日生まれ、O型。


作画、いく。

水島聖(みずしまひじり)

病んだ高一。思い込みが激しい。

6月27日生まれ、A型。


作画、いく。

鮫島勤(さめじまつとむ)

高三。飛鳥の友人。

2月2日生まれ、AB型。


作画、いく。

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