第156話
文字数 4,458文字
まさか…
そんな…
私の心の中に、そんな言葉が、踊った…
そんな言葉が、溢れた…
が、
今、言った、リンダの言葉は、十分に、この矢田トモコの心を、納得させるものだった…
なにより、この矢田トモコが、漠然と感じていた葉尊の心の闇に、言及するものだったからだ…
が、
今度の騒動の黒幕が、葉尊と、いうのだけは、納得できんかった…
それだけは、納得できんかった…
葉尊が、今度の騒動に、どれだけ、関わっているかは、わからんが、黒幕と呼べるほど、関わっているとは、どうしても、思えんかったからだ…
だから、
「…黒幕と呼べるほどなのか?…」
と、私は、呟いた…
まるで、独り言のように、呟いた…
が、
それに、すぐに、リンダは、反応しなかった…
「…」
と、答えんかった…
だから、もう一度、
「…黒幕というのは、言い過ぎなんじゃないか…」
と、呟いた…
すると、リンダも、少しして、
「…たしかに、黒幕は、言い過ぎかも、しれない…」
と、答えた…
トーンを落として、返事した…
「…ただ、葉尊が、今回の件を、どこまで、知っているかは、ともかく、なにも知らないことは、ありえない…」
「…どうして、わかる?…」
「…葉問の存在…」
「…葉問の存在だと?…どういう意味だ?…」
「…あのセレブの保育園で、お姉さんは、二度、危機に陥った…」
「…二度、危機に陥っただと?…」
「…つまり、二度、あのイケメンのオスマンに、襲われかかった…」
「…」
「…そして、その危機を、葉問が、救った…ということは、葉問が、あの場に、現れたという事実は、葉尊も了承済みということ…つまり、葉尊が、今回の騒動をなにも、知らないということは、ありえない…」
「…」
「…だから、どこまで、今回の騒動を知っているか? あるいは、どこまで、今回の騒動に、関わっているかは、わからない…でも、葉尊が、知っているのは、たしか…関わっているのは、たしか…」
リンダが、断言した…
そして、それは、この矢田トモコも、十分納得するものだった…
十分、説得力のあるものだったからだ…
葉問が、あのセレブの保育園に現れたことを、葉尊が、知らないわけは、なかったからだ…
ただ、問題は、このリンダが、言ったように、葉尊が、どこまで、知っているか?
どこまで、関わっているか? だ…
それが、わからんかった…
さっぱり、わからんかった…
だから、この矢田トモコも、悩んだ…
悩んだのだった…
同時に、気付いた…
さっき、あのアムンゼンと、オスマンを、あのまま、あのセレブの保育園に、残してきたこと…
あれで、良かったのか?
気付いたのだ…
「…リンダ…」
「…なに、お姉さん?…」
「…あのアムンゼンと、オスマン…あれで、よかったのか?…」
「…どういう意味?…」
「…あのまま、置き去りにして、良かったのか?…なにか、仕掛けて来ないか?…」
私は、聞いた…
聞かずには、いられんかった…
「…それは、大丈夫…」
リンダが、あっさりと、答えた…
「…大丈夫だと? …どうして、そう言える…」
「…それは、サウジアラビア政府…」
「…サウジアラビア政府だと? …それが、どうした?…」
「…すでに、サウジアラビア政府から…いえ、国王に、アムンゼンの動きは、封じられている…」
「…動きを、封じられているだと?…」
「…そう…あのオスマンは、アムンゼンの動静を見張るために、アムンゼンの庇護下に、置かれる形にした…けれども、そのことに、気付いたアムンゼンが、お姉さんが、AKBの恋するフォーチュンクッキーを踊っている舞台を、利用して、オスマンを、捕らえようとした…」
「…」
「…そして、結果は、お姉さんの、知っているように、オスマンは、捕らえられたけれども、すぐに逃げ出した…そして、あのセレブの保育園に、身を隠した…だから、今回は、また、あのオスマンを捕らえるべく、今度は、日本の警察も、出動する大騒ぎになった…」
「…」
「…でも、日本の警察といっしょになって、あのセレブの保育園を、囲んでいた、サウジアラビア政府から派遣された、屈曲な男たちは、消えた…これは、すでに、アムンゼンが、自分の立場が、わかったから…」
「…いつ、わかったんだ?…」
「…おそらく、ファラドと言う王族が、サウジアラビアには、存在しないと、公式に、聞いたときだと、思う…」
「…どうして、そう思う?…」
「…あのイケメンのオスマンは、ファラドと名乗り、反対に、アムンゼンは、オスマンと名乗った…当然、アムンゼンの護衛を含めて、そう名乗っていることは、皆、知っているし、それは、サウジアラビア本国の国王にも、伝わっているはず…」
「…」
「…でも、それを、日本の警察が、日本にある、サウジアラビア大使館に確認したところ、公式に、サウジアラビア大使館が、否定したことで、おそらく、自分の目論見が、失敗したことを、あのアムンゼンは、悟ったと、思う…」
「…」
「…だから、あのままにしても、大丈夫…なにも、起こらない…そして、それは、サウジアラビアの関係者も、わかっていたから、アムンゼンの周りにいた、屈強な男たちも、消えたと思う…」
「…」
「…あの男たちは、皆、アムンゼンの護衛であり、同時に、国王の命を受けた監視だったと思う…でも、すでに、アムンゼンが、反乱の意思を捨てたから、彼らもまた、去った…そういうことだと思う…」
「…」
「…いずれにしろ、あのアムンゼンは、それほどの悪人ではないわ…」
「…どうして、わかる?…」
「…それは、オスマン…」
「…オスマンだと?…」
「…あのオスマンが、兄貴は、ホントは、そんなに悪いヤツじゃないんだと、言ってたでしょ?…」
「…」
「…アレは、ホントは、オジサンだったのけれども、中身は、同じ…」
「…中身は、同じだと? …どういう意味だ?…」
「…アムンゼンは、それほどの悪人ではないということ…」
「…どうして、わかる?…」
「…それは、さっきも、言った、アムンゼンを監視するボディーガードたち…国王の命に背いて、アムンゼンの側についた人間も、いるでしょ?…それが、答え…」
「…それが、答えだと?…」
「…小説や漫画じゃないんだから、アムンゼンが、極悪非道の人間なら、誰も、アムンゼンに味方しない…やはり、いっしょにいて、どこか、魅力があるから、国王の命に、背いてまで、アムンゼンに味方したと、考えるのが、普通じゃない?…」
「…」
「…おそらく、国王は、それを、見落とした…それが、今回の騒動を引き起こした遠因…」
「…」
「…でも、国王自身は、複雑な気分じゃないのかな?…」
「…どうして、そう思う…」
「…信頼する自分の部下を、アムンゼンの監視に就けた…にも、かかわらず、自分の命に背いて、アムンゼンの側に、就いた…当然、頭には、来るけれども、反面、それほどの人望があるのかと、見直す、きっかけにもなる…」
「…」
「…だから、ハッキリ言って、複雑…でも、それほどの人徳もあれば、将来、次期国王を補佐することもできる…」
「…なんだと?…」
「…おそらく、あのオスマンは、将来のサウジアラビアの国王候補の一人…国王陛下は、オスマンが、あのアムンゼンを、どうコントロールするか、見ている…あるいは、コントロールできるか、どうか、見ているんじゃないかな…」
「…なんだと?…」
「…会社でも、なんでも、そうでしょ? 最初は、5人のチームリーダーに命じて、様子を見る…そして、それが、できれば、主任にする…さらに、それを、クリアすれば、課長に上げる…そんなふうにして、テストする…たぶん、それと、同じ…」
「…」
「…まあ、もっとも、会社では、数年で、幹部候補とか、を、何人か、見極めて、ある程度まで、昇進させるでしょうけれど…」
リンダが、笑った…
笑ったのだ…
私は、それを、見て、あらためて、このリンダという女の恐ろしさを思った…
この矢田も、バカではない…
あらためて、このリンダ・ヘイワースの頭の良さを、思ったのだ…
あらためて、このリンダ・ヘイワースの頭の良さを、感じたのだ…
頭の良さといっても、色々ある…
勉強ができるのが、頭のいい代表だが、それだけではない…
例えば、今、このリンダが、言ったこと…
これは、おそらく、リンダ・ヘイワースの持つ、セレブの情報網を元に、自分の、考えを組み合わせて、言ったこと…
そうに、決まっている…
そして、それが、当たっているか、いないかは、わからないが、それでも、リンダの説明は、十分に、納得できるものだった…
だから、それも、頭の良さの一つ…
そして、さらに、わかりやすい例を上げれば、例えば、学校だったり、会社だったりで、男と女が、付き合ったりする…
そして、それを、知る人間が、ごく少数だとしても、気付く人間は、気付くものだ…
では、なぜ、気付くのか?
おそらくは、当事者同士のちょっとした親しさと、いうか、馴れ馴れしさだろう…
男女の関係になっていなくても、付き合っていれば、当然、馴れ馴れしさは、表面に出る…
ちょっとした態度に出る…
だから、会社、あるいは、学校だから、そういう関係は、第三者には、見せまいと、努力するが、どうしても、隙が出ると言うか…
親しさを、隠せないときが、ある…
それを、頭の良い人間は、見逃さない…
だから、わかる…
いわゆる、このリンダのように、自分の得た情報網を、含めて、総合的に判断するのではなく、極端な話、自分だけの力で、気付く…
いわゆる直感なのだが、それも、また頭の良さの一つだろう…
気付かない人間は、いくらたっても、気付かない…
そういうものだ(笑)…
だから、私は、
「…凄いな…オマエは…」
と、素直に、リンダを賞賛した…
リンダを褒めた…
が、
リンダの反応は、違った…
「…それを、言えば、お姉さんの方が、遥かに、凄い…」
「…私が、凄い? …どうして、凄いんだ?…」
「…あの小人症の男が、アムンゼンだとは、私は、気付かなかった…」
「…」
「…そんな情報は、得られなかった…サウジアラビア政府…そして、サウジアラビアの王族が、情報統制して、アムンゼンの顔は、一切、誰にも、見せない…だから、わからなかった…それを、お姉さんは、一発で、見破った…」
リンダが、感嘆した声で、言った…
「…誰にもできることじゃない…お姉さんだから、できること…」
「…私だから、できること?…」
「…そうよ…」
リンダが、短く言った…
そして、それ以上、なにも、言わんかった…
だから、余計に、その言葉が、重く思えた…
なにも、言わん…
だから、余計に、重く思えたのだ…
車内の空気が、どんよりと、重くなった気がした…
なにやら、話が、シリアスになってきた…
もはや、コメディでは、なくなってきた気がした…
そんな…
私の心の中に、そんな言葉が、踊った…
そんな言葉が、溢れた…
が、
今、言った、リンダの言葉は、十分に、この矢田トモコの心を、納得させるものだった…
なにより、この矢田トモコが、漠然と感じていた葉尊の心の闇に、言及するものだったからだ…
が、
今度の騒動の黒幕が、葉尊と、いうのだけは、納得できんかった…
それだけは、納得できんかった…
葉尊が、今度の騒動に、どれだけ、関わっているかは、わからんが、黒幕と呼べるほど、関わっているとは、どうしても、思えんかったからだ…
だから、
「…黒幕と呼べるほどなのか?…」
と、私は、呟いた…
まるで、独り言のように、呟いた…
が、
それに、すぐに、リンダは、反応しなかった…
「…」
と、答えんかった…
だから、もう一度、
「…黒幕というのは、言い過ぎなんじゃないか…」
と、呟いた…
すると、リンダも、少しして、
「…たしかに、黒幕は、言い過ぎかも、しれない…」
と、答えた…
トーンを落として、返事した…
「…ただ、葉尊が、今回の件を、どこまで、知っているかは、ともかく、なにも知らないことは、ありえない…」
「…どうして、わかる?…」
「…葉問の存在…」
「…葉問の存在だと?…どういう意味だ?…」
「…あのセレブの保育園で、お姉さんは、二度、危機に陥った…」
「…二度、危機に陥っただと?…」
「…つまり、二度、あのイケメンのオスマンに、襲われかかった…」
「…」
「…そして、その危機を、葉問が、救った…ということは、葉問が、あの場に、現れたという事実は、葉尊も了承済みということ…つまり、葉尊が、今回の騒動をなにも、知らないということは、ありえない…」
「…」
「…だから、どこまで、今回の騒動を知っているか? あるいは、どこまで、今回の騒動に、関わっているかは、わからない…でも、葉尊が、知っているのは、たしか…関わっているのは、たしか…」
リンダが、断言した…
そして、それは、この矢田トモコも、十分納得するものだった…
十分、説得力のあるものだったからだ…
葉問が、あのセレブの保育園に現れたことを、葉尊が、知らないわけは、なかったからだ…
ただ、問題は、このリンダが、言ったように、葉尊が、どこまで、知っているか?
どこまで、関わっているか? だ…
それが、わからんかった…
さっぱり、わからんかった…
だから、この矢田トモコも、悩んだ…
悩んだのだった…
同時に、気付いた…
さっき、あのアムンゼンと、オスマンを、あのまま、あのセレブの保育園に、残してきたこと…
あれで、良かったのか?
気付いたのだ…
「…リンダ…」
「…なに、お姉さん?…」
「…あのアムンゼンと、オスマン…あれで、よかったのか?…」
「…どういう意味?…」
「…あのまま、置き去りにして、良かったのか?…なにか、仕掛けて来ないか?…」
私は、聞いた…
聞かずには、いられんかった…
「…それは、大丈夫…」
リンダが、あっさりと、答えた…
「…大丈夫だと? …どうして、そう言える…」
「…それは、サウジアラビア政府…」
「…サウジアラビア政府だと? …それが、どうした?…」
「…すでに、サウジアラビア政府から…いえ、国王に、アムンゼンの動きは、封じられている…」
「…動きを、封じられているだと?…」
「…そう…あのオスマンは、アムンゼンの動静を見張るために、アムンゼンの庇護下に、置かれる形にした…けれども、そのことに、気付いたアムンゼンが、お姉さんが、AKBの恋するフォーチュンクッキーを踊っている舞台を、利用して、オスマンを、捕らえようとした…」
「…」
「…そして、結果は、お姉さんの、知っているように、オスマンは、捕らえられたけれども、すぐに逃げ出した…そして、あのセレブの保育園に、身を隠した…だから、今回は、また、あのオスマンを捕らえるべく、今度は、日本の警察も、出動する大騒ぎになった…」
「…」
「…でも、日本の警察といっしょになって、あのセレブの保育園を、囲んでいた、サウジアラビア政府から派遣された、屈曲な男たちは、消えた…これは、すでに、アムンゼンが、自分の立場が、わかったから…」
「…いつ、わかったんだ?…」
「…おそらく、ファラドと言う王族が、サウジアラビアには、存在しないと、公式に、聞いたときだと、思う…」
「…どうして、そう思う?…」
「…あのイケメンのオスマンは、ファラドと名乗り、反対に、アムンゼンは、オスマンと名乗った…当然、アムンゼンの護衛を含めて、そう名乗っていることは、皆、知っているし、それは、サウジアラビア本国の国王にも、伝わっているはず…」
「…」
「…でも、それを、日本の警察が、日本にある、サウジアラビア大使館に確認したところ、公式に、サウジアラビア大使館が、否定したことで、おそらく、自分の目論見が、失敗したことを、あのアムンゼンは、悟ったと、思う…」
「…」
「…だから、あのままにしても、大丈夫…なにも、起こらない…そして、それは、サウジアラビアの関係者も、わかっていたから、アムンゼンの周りにいた、屈強な男たちも、消えたと思う…」
「…」
「…あの男たちは、皆、アムンゼンの護衛であり、同時に、国王の命を受けた監視だったと思う…でも、すでに、アムンゼンが、反乱の意思を捨てたから、彼らもまた、去った…そういうことだと思う…」
「…」
「…いずれにしろ、あのアムンゼンは、それほどの悪人ではないわ…」
「…どうして、わかる?…」
「…それは、オスマン…」
「…オスマンだと?…」
「…あのオスマンが、兄貴は、ホントは、そんなに悪いヤツじゃないんだと、言ってたでしょ?…」
「…」
「…アレは、ホントは、オジサンだったのけれども、中身は、同じ…」
「…中身は、同じだと? …どういう意味だ?…」
「…アムンゼンは、それほどの悪人ではないということ…」
「…どうして、わかる?…」
「…それは、さっきも、言った、アムンゼンを監視するボディーガードたち…国王の命に背いて、アムンゼンの側についた人間も、いるでしょ?…それが、答え…」
「…それが、答えだと?…」
「…小説や漫画じゃないんだから、アムンゼンが、極悪非道の人間なら、誰も、アムンゼンに味方しない…やはり、いっしょにいて、どこか、魅力があるから、国王の命に、背いてまで、アムンゼンに味方したと、考えるのが、普通じゃない?…」
「…」
「…おそらく、国王は、それを、見落とした…それが、今回の騒動を引き起こした遠因…」
「…」
「…でも、国王自身は、複雑な気分じゃないのかな?…」
「…どうして、そう思う…」
「…信頼する自分の部下を、アムンゼンの監視に就けた…にも、かかわらず、自分の命に背いて、アムンゼンの側に、就いた…当然、頭には、来るけれども、反面、それほどの人望があるのかと、見直す、きっかけにもなる…」
「…」
「…だから、ハッキリ言って、複雑…でも、それほどの人徳もあれば、将来、次期国王を補佐することもできる…」
「…なんだと?…」
「…おそらく、あのオスマンは、将来のサウジアラビアの国王候補の一人…国王陛下は、オスマンが、あのアムンゼンを、どうコントロールするか、見ている…あるいは、コントロールできるか、どうか、見ているんじゃないかな…」
「…なんだと?…」
「…会社でも、なんでも、そうでしょ? 最初は、5人のチームリーダーに命じて、様子を見る…そして、それが、できれば、主任にする…さらに、それを、クリアすれば、課長に上げる…そんなふうにして、テストする…たぶん、それと、同じ…」
「…」
「…まあ、もっとも、会社では、数年で、幹部候補とか、を、何人か、見極めて、ある程度まで、昇進させるでしょうけれど…」
リンダが、笑った…
笑ったのだ…
私は、それを、見て、あらためて、このリンダという女の恐ろしさを思った…
この矢田も、バカではない…
あらためて、このリンダ・ヘイワースの頭の良さを、思ったのだ…
あらためて、このリンダ・ヘイワースの頭の良さを、感じたのだ…
頭の良さといっても、色々ある…
勉強ができるのが、頭のいい代表だが、それだけではない…
例えば、今、このリンダが、言ったこと…
これは、おそらく、リンダ・ヘイワースの持つ、セレブの情報網を元に、自分の、考えを組み合わせて、言ったこと…
そうに、決まっている…
そして、それが、当たっているか、いないかは、わからないが、それでも、リンダの説明は、十分に、納得できるものだった…
だから、それも、頭の良さの一つ…
そして、さらに、わかりやすい例を上げれば、例えば、学校だったり、会社だったりで、男と女が、付き合ったりする…
そして、それを、知る人間が、ごく少数だとしても、気付く人間は、気付くものだ…
では、なぜ、気付くのか?
おそらくは、当事者同士のちょっとした親しさと、いうか、馴れ馴れしさだろう…
男女の関係になっていなくても、付き合っていれば、当然、馴れ馴れしさは、表面に出る…
ちょっとした態度に出る…
だから、会社、あるいは、学校だから、そういう関係は、第三者には、見せまいと、努力するが、どうしても、隙が出ると言うか…
親しさを、隠せないときが、ある…
それを、頭の良い人間は、見逃さない…
だから、わかる…
いわゆる、このリンダのように、自分の得た情報網を、含めて、総合的に判断するのではなく、極端な話、自分だけの力で、気付く…
いわゆる直感なのだが、それも、また頭の良さの一つだろう…
気付かない人間は、いくらたっても、気付かない…
そういうものだ(笑)…
だから、私は、
「…凄いな…オマエは…」
と、素直に、リンダを賞賛した…
リンダを褒めた…
が、
リンダの反応は、違った…
「…それを、言えば、お姉さんの方が、遥かに、凄い…」
「…私が、凄い? …どうして、凄いんだ?…」
「…あの小人症の男が、アムンゼンだとは、私は、気付かなかった…」
「…」
「…そんな情報は、得られなかった…サウジアラビア政府…そして、サウジアラビアの王族が、情報統制して、アムンゼンの顔は、一切、誰にも、見せない…だから、わからなかった…それを、お姉さんは、一発で、見破った…」
リンダが、感嘆した声で、言った…
「…誰にもできることじゃない…お姉さんだから、できること…」
「…私だから、できること?…」
「…そうよ…」
リンダが、短く言った…
そして、それ以上、なにも、言わんかった…
だから、余計に、その言葉が、重く思えた…
なにも、言わん…
だから、余計に、重く思えたのだ…
車内の空気が、どんよりと、重くなった気がした…
なにやら、話が、シリアスになってきた…
もはや、コメディでは、なくなってきた気がした…