第29話

文字数 8,180文字

 この矢田トモコは、35歳…

 これまで、さまざまな艱難辛苦を乗り越えてきた…

 短大を卒業し、就職もせず、フリーター生活に突入…

 理由は、単純に、就職氷河期だったからだ…

 まさに、マンモスが、絶滅する寒さのように、就職先が、凍ったように、採用数が、少なかった…

 よほど、優秀な人間でないと、まともな会社に就職できない…

 そもそも、会社の採用数が、激減した…

 無理もない…

 不況だから、会社も、将来のことは、わからない…

 会社が、生き残るのが、大変だから、将来に向けて、ひとを採用するどころではなかったのだろう…

 が、

 それでは、高校や大学を出て、これから、就職しようとする者には、堪ったものではない…

 そもそも、会社の採用数が、少なすぎるから、就職できる人間が、限られるからだ…

 だから、別段、優秀でも、なんでもない私は、就職できなかった(涙)…

 結果、フリーターになった…

 元々、あまり、一つのところにいるのが、苦手な私にとって、それは、僥倖(ぎょうこう)だった…

 僥倖(ぎょうこう)…つまり、不幸が、幸運に転じたということだ…

 私は、男ではないし、将来、結婚しても、家庭の大黒柱で、稼ぐ必要もない…

 だから、女の私は、職業や、職歴にこだわる必要は、まったくないと思っていた…

 私が、男なら、世間に知れた、まともな会社に就職し、一生懸命、働いて、実績を重ね、会社で、地位を得て、結婚する…

 そんな未来を夢見たかも、しれない…

 が、

 私は、男ではないし、そもそも、優秀でもなかった(笑)…

 だから、そんな夢は、見れなかった…

 優秀ならば、見れる夢かもしれないが、そもそも、優秀ではないから、そんな夢とは、無縁だった…

 が、

 会社に就職したわけではないが、派遣や、契約社員で、さまざまな会社で、仕事をして、優秀でもないのに、上を目指す人間がいて、驚いた…

 そして、そういう人間を見ていると、ほぼ学歴がない人間が、多かった…

 いわゆる、高卒で、就職して、大卒には、負けないと、意気込む人間たちだ…

 高卒の人間が、すべて、そういう人間ではないが、たしかに、一部に、そういう人間がいた…

 私は、最初、そういう人間を見て、驚いた…

 ビックリした…

 誰が、見ても、お世辞にも、優秀とは、いえないのに、どうして、上を目指そうとするのか、理解できなかったからだ…

 どう見ても、ソニー学園出身の私よりも、頭の悪い人間が、本気で、上に上がることを夢見ていた…

 だから、最初は、冗談だと思った…

 ウソだと、思った…

 まさか、本気で、上を目指しているとは、思わなかったからだ…

 が、

 ウソではなかった…

 本気だった(爆笑)…

 そして、彼らが、どうして、そんな簡単に、上に上がれると、思うのか、不思議だった…

 そして、思うに、それは、学校の勉強ではなく、仕事だったからだ…

 要するに、学校の勉強では、叶わないが、仕事では、大卒の人間に、負けないゾと、言っていたわけだ…

 そして、その根底には、大卒の人間に対する、コンプレックスがあるのだろう…

 いわゆる学歴=頭では勝てないから、仕事では、負けないゾ、と、言いたいわけだ…

 そして、以前も書いたが、学校の勉強と仕事の大きな違いは、優劣が、つけづらいことだと、思った…

 たとえば、学校では、国語でも、数学でも、クラスで、試験を実施すれば、誰々が、一番で、誰々が、二番ということが、簡単にわかる…

 が、

 仕事では、優劣が、つけづらいことが、多々ある…

 仮に、同じ部屋で、20人の人間が、働いていても、皆、同じ仕事をしているわけではないことが多いからだ…

 また、それぞれ、役割も違う…

 末端で、直接、作業するのか、たとえば、5人でも、ひとを率いて、チームリーダーとして、仕事をするのかで、役割が、異なるからだ…

 しかしながら、高卒でも、与えられた仕事が、それなりに、こなせると、自分は、単純に、優れていると、心の底から、信じることになる…

 大卒でも、不器用で、作業が、遅々として、はかどらない人間よりも、明らかに、優れていると、考えることになる…

 たしかに、それは、間違いではなかった…

 同じ作業で、大卒の人間よりも、高卒の人間の方が、優れていることは、多々あるだろう…

 すると、今度は、自分は、すぐに、5人をまとめるチームリーダーの地位に就けると、単純に思うことになった…

 簡単に出世できると思っていた…

 が、

 それは、違うと、私でも、簡単に気付いた…

 末端で、作業をするのと、たとえ、5人でも、チームリーダーとして、チームをまとめるのとでは、求められる能力が、異なるからだ…

 それが、その高卒の人間には、わからなかった…

 自分は、末端の作業で、優れているから、すぐに上にいけると、心の底から、思っていたのだ…

 私には、それが、不思議でならなかった…

 私でさえ、簡単に、わかることが、わからないのだ…

 ソニー学園出身の私ですら、わかることが、わからないのだ…

 そして、その会社では、わからなかったが、他社にいったとき、そんな人間は、いなかった(笑)…

 見たこともなかった(笑)…

 要するに、ITバブルだから、入ってきた人間たちだった(笑)…

 なにより、その人間たちと接していて、自分たちと、入社時期が、近い人間が、それ以前に、会社に入社した人間よりも、明らかに、レベルが下がっているのは、誰の目にも明らかだったが、そんなことも、わからなかった(爆笑)…

 要するに、与えられた仕事を、自分は、キチンとこなせるから、自分は、優秀だと、心の底から、信じていた…

 なにより、その人間たちを見て、驚いたのは、他人の経歴に、なんの関心を持たないことだった…

 お世辞にも、偏差値の高い短大を出ていない私ですら、たとえば、会社で、○○さんは、優秀で、将来出世すると、噂されていると、じゃ、どこの大学を出ているんだろ? と、気になる…

 学歴が、その人間の優劣を決める、すべてではないが、やはり、たとえば、東大を出ているとか、早稲田を出ているとか、いうと、納得する…

 が、

 その高卒の人間たちは、そんなことは、一切気にしない…

 要するに、与えられた仕事をキチンとこなせるから、自分は、優れているし、すぐにその上の地位を得ることができると、本気になって信じていた…

 自分の能力は、末端で作業するのに、ふさわしく、他人を率いることなど、できないなどと、考えもしなかった…

 そして、それが、能力だと、後年、気付いた…

 要するに、自分の能力も、他人の能力もわからない人間たちだった…

 だから、誰の目にも、わかる形で、結果を出さなければ、その人間たちには、わからなかった…

 たとえば、東大を出ても、ひとを率いることができない人間は、高卒でも、ひとを率いることができる人間よりも、劣っていると、本気になって、信じていた…

 要するに東大を出ていれば、自分よりも、はるかに仕事ができ、簡単に、ひとをまとめることができると、単純に信じていたのだ…

 そして、その当時、その人間は、どうして、そう思うのか、疑問だった…

 私には、さっぱりわからなかった…

 が、歳をとって、振り返ってみると、周りに、いないからだろうと、気付いた…

 いわゆる、東大に代表される、頭のいい大学を出た人間が、周囲に、一人もいない…

 だから、頭のいいということが、そもそも、どういうことか、わからない…

 頭がよければ、おおげさにいえば、なんでも、自分よりも優れていると、考えるのだろう…

 それが、自分の方が、仕事ができると、一転して、コイツは、いい大学を出ているのに、なんなんだろ? と、思う…

 そういうことだろう…

 なにより、その人間たちと接して、わかったのは、たとえば、背の低い男が、モデルのような背の高い女を、好きなのを見て、アイツじゃ、無理としか、言えない現実だった…
 
 他の会社の人間は、

 「…ほら、○○さんは、背が低いから、○○さんのように、背の高い女に憧れるんですよ…どんな人間も、自分にないものを、求めますから…」

 とか、言うことが、できた…

 が、

 その高卒の人間たちは、

 「…アイツじゃ、無理!…」

 の一言…

 それが、失礼ながら、生まれ持った能力の差なんだと、後で気付いた…

 同じものを、見ても、感じることが、違う…

 そういうことだ…

 それが、学力の差であり、能力の差だと、気付いた…

 そして、仮に、そんな人間が、頭のいい人間と結婚すれば、間違いなく、結婚生活は、破綻する…

 そもそも、頭のレベルが違うから、関心の持つ分野が違う…

 関心の持つ分野というと、大げさだが、要するに、日常会話や余暇の過ごし方だ…

 単純に会社が休みだから、たまには、映画でも、観に行こうといっても、そもそも観たい映画が違う…

 読む本が違う…

 だから、夫婦いっしょにいても、話題が違う…

 これは、差別ではない…

 頭のレベルが違うから、当然のことだ…

 また、夫婦や恋人になって、一日中、過ごせば、会話が噛み合わない…

 その高卒の人間たちを見て、思ったのは、そういうことを、まるで、考えないことだった…

 たとえば、○○さんが、早稲田を出て、頭がいいと、噂されていれば、どこの高校を出ているのか、気になる…

 高校を聞いて、偏差値を調べて、自分の住んでいた地域でいえば、どこの高校に該当するのだろうか? と、考える…

 そして、その高校の卒業生が、どんな大学を進学しているか、調べる…

 そうすることで、その人間の能力を知ることができるからだ…

 早稲田を出た人間が、どの程度の偏差値の高校を出たかで、その人間の頭の程度を知ることができるからだ…

 が、

 何度も言うように、その高卒の人間たちは、そんなことに、なんの関心もなかった…

 が、

 それこそが、能力の差なんだと、後年、気付いた…

 そういうことに、なんの関心も持たないことが、能力の差なんだと、気付いた…

 だから、その高卒の人間が、そのまま、会社に残れば、おおげさに、言えば、地獄となる(爆笑)…

 なぜなら、ITバブルで、入社した、その高卒の人間よりも、後から、入社した人間の方が、皆、優れているからだ…

 だから、そのまま、会社に残っても、その高卒の人間に出世はない…

 出世どころか、同じITバブルのときに、入社した人間たちは、次々リストラされているだろう…

 すると、なにより、会社で、話をする人間が、いなくなる…

 自分と同じようなレベルの人間がいなくなるからだ…

 それが、なにより辛いに違いない…

 出世うんぬんよりも、誰とも、話が合わなくなるのが、辛いだろう…

 また、そういう人間は、嫉妬心が強かった…

 妬みが凄かった…

 それは、なぜだろうと、当時、考えたが、それは、やはり、コンプレックスに違いない…

 すでに、学歴で負けている…

 だから、頭では勝てない…

 すると、仕事では、負けないゾと、考える…

 そして、そもそも、自分の能力も他人の能力も計れないのだから、仕事で勝てるわけがない…

 勝てるのは、末端の単純な作業だからだ…

 次には、ひとを率いて、仕事をしなければならないが、それは無理…

 指示を下すことが、できない…

 また、仮に、私なら、自分と同じような能力の人間を探して、その人間が、どういうポジションで、仕事をしているのか、見て、その人間に、自分の将来を重ねただろう…

 しかしながら、その高卒のひとたちは、そんなこともできなかった(爆笑)…

 そして、なにより、性格が悪かった(笑)…

 頭のいい人間よりも、頭の悪い人間の方が、性格の悪い人間が多いと、世間で、言われるが、それを当時、目の当たりにした…

 それが、社会勉強になった…

 なにより、その会社でしか、会えない人間が、多かった…

 景気がいいから、入社できたので、普通は、入社できない人たちだったからだ(笑)…

 今、世間で、50代のバブル入社組の会社のオジサンが、リストラされるのと、同じ…

 景気がいいから、その会社に入社できた…

 景気がいいから、それまでは、偏差値60以上でなければ、入社できなかった会社が、偏差値50でも、OKと、なった…

 当然、レベルが下がる…

 そして、そのレベルのひとたちが、入社できたのは、バブル期や、ITバブルの景気のいい、一時期のみ…

 だから、会社でも目立つし、お荷物になる…

 なにより、数が多い…

 だから、目立つ…

 そういうことだ(笑)…

 一言で、言えば、頭が悪ければ、性格も悪い…

 が、

 それに、反比例して、プライドは、高く、上昇志向が強かった…

 学歴がない人間ほど、会社に入って、上に上がりたかったのだ…

 そして、当時、ボンヤリと、私が、考えていたことが、ネットが、発達した今の時代にあって、ヤフーの質問箱等に、掲載されていたのを、偶然、目にした…

 つまり、学歴が、低いひとほど、性格が悪く、学歴が高いほど、性格が、いいひとが、多くありませんか?

 と、いう質問内容だった…

 それに対する、回答は、その通りだと思うという意見と、そういう質問をする、アナタが、性格が、悪いんじゃないですか? という、二通りで、ほぼ拮抗していた…

 そして、その質問者が、選んだベストアンサーは、

 …おおむね、その傾向が強いと思います…

 と、いうものだった…

 我が意を得たりというか、私が、思っていたのと、同じだった…

 そして、私は、考えた…

 そういうアナタが、性格が悪いんじゃないですか?

 と、答えた人たちのことだ…

 私が、思ったのと、違う回答をしたひとたちは、なぜ、そう答えたのだろうと、思った…

 考えた…

 すると、おそらく、そんな人間たちを見たことがないのでは? 

 と、気付いた…

 人それぞれ、歩んで来た人生が違う…

 学歴が、低い人ほど、性格が悪いと、思った、質問者と、その通りだと、それに、同意した回答者たちは、そういう人たちを、目の当たりにしているのだろう…

 真逆に、そういう質問をするアナタこそ、性格が悪いんじゃないですか? と、反発する人たちは、そもそも、そういう人間に、お目にかかったことが、ないんじゃないだろうか?

 そう気付いた…

 そして、私は、むしろ、後者の人間たち…

 つまりは、頭の悪い人間ほど、性格が悪いという考えに同意しないひとたちを、見て、運がいいと、思った…

 そういう人間たちを、目の当たりにしたことがないから、頭が、悪ければ、性格が悪いと考える質問者に反発するのだ…

 そう考えれば、実に運が、いい人生を歩んできた人たちだと、思った…

 これは、別に皮肉でも、なんでもない…

 よく苦労は、若いときには、進んでするものだ、という言葉が、あるが、私は、それは、間違っていると、思う…

 なぜなら、苦労など、一ミリも、しないに限る…

 ただし、もし苦労をするならば、若いときに、限るということだ…

 歳をとって、苦労をするのは、大変だ…

 体力的にも、キツイ…

 それならば、若いときにするに限る…

 そういうことだ…

 さっきも言った、バブル時代に大量採用された、50代のオジサンが、今、どこの会社でも、リストラされている…

 このオジサンたちが、これからする苦労を考えれば、もし、苦労をするならば、若いときにしたかったと、オジサンたちも、考えるだろう…

 実際、就職活動をするにしても、若いときならば、有利だからだ…

 私が、長々と、なぜ、こんなことを、考えているかといえば、リンダとバニラの人生を考えたのだ…

 バニラは、ヤンキー上がりの苦労人…

 アメリカのスラム街出身だ…

 それが、今の地位まで、上り詰めた…

 並大抵の苦労では、ないだろう…

 この矢田トモコなど、想像もできないような苦労をしているに違いなかった…

 これは、リンダも同じ…

 似たようなものだろう…

 だから、バニラとリンダから見れば、この矢田トモコなど、なんの苦労もなく、これまで、生きてきたと思うかもしれない…

 しかしながら、私は、私なりに、苦労している…

 が、

 苦労の質が、違うのだろう…

 たとえば、一般の日本人の苦労と、発展途上国で、その日暮らしに、あえいでいるようなひとたちの苦労は、苦労の質が違う…

 まさに毎日が命がけだろう…

 その違いだ…

 私と、リンダとバニラでは、それほど、違うということかもしれない…

 だから、リンダとバニラは私に憧れる…

 葉問の言葉を借りれば、私に憧れるのだろう…

 日本で、平凡な苦労をしてきた私は、リンダとバニラか見れば、温室育ちというか…

 まるで、苦労をしてきたように見えないのだろう…

 だから、あったかい…

 葉問の言葉を借りれば、私は、あったかいのだ…

 これが、私が、発展途上国で、その日暮らしをしてきたならば、こうはならないだろう…

 生活=環境は、その人間を作る…

 どういった環境で、育つかで、その人間の性格が、決まることが多い…

 以前、ネットで、見たが、大物芸能人の息子や娘たちにインタビューをしたレポーターが、彼ら、あるいは、彼女らを、インタビューして、こう総括した…

 一言で言えば、皆、性格が、よく、おっとりとしていると…

 が、

 それで、この厳しい競争社会を生きてゆけるのか、少々不安だと(笑)…

 性格がよく、おっとりしているのはいいが、それでは、抜け目ない連中に騙されて、お金を失ったりするのでは? と、心配したのだ…

 父や母が大物芸能人だから、生活の心配はないどころか、皆、普通以上の生活がしてきた…

 だから、生活にゆとりができ、それが、彼ら、彼女らの性格に現れているのだろう…

 私は、思った…

 そして、それを思えば、以前、職場で知り合った女が、それとは、真逆だった…

 ルックスは、平凡で、学歴も低く、性格も悪い…

 が、

 上昇志向が、人並み外れて、高かった…

 まるで、世界的な有名人である、リンダやバニラが、口にしても、おかしくない高飛車なセリフを、日々、口にしていた…

 たとえば、学歴が高くても、ルックスが、悪いから、アレはダメとか…

 そういう自分は、陰では、イロモノ扱いされていたが、本人は、それに気付いていなかった(爆笑)…

 また、金に汚かった…

 普段は、悪口の限りを言っている相手でも、おごってくれるとわかると、すぐについて行った…

 私は、その当時、ただ、性格が悪い女とだけ、見ていたが、ある会社の同僚が、

 「…アレは、たぶん、家が貧乏だから…」

 と、陰口を叩いた…

 「…家が貧乏だから、お金に汚いし、いつも悪口を言っている相手でも、相手がおごってくれると、わかると、ついてゆく…本人は、うまく相手を利用しているつもりかもしれないけど、ただ、がめついだけ…性格が悪いだけ…」

 と、説明した…

 喝破した…

 私は、当時、そんなものかと、漠然と思ったが、歳をとって、それが、正しいのかも、と、思い直した…

 ちょうど、さっき例に挙げた、芸能人の息子や娘たちと真逆…

 貧乏な家庭に育って、頭もルックスも秀でたものは、ひとつもない…

 自分が、根底では、それが、わかっているから、少しでも、自分よりも、優れている人間を見れば、悔しくて仕方がない…

 学歴でも、ルックスでも、自分よりも、優れていれば、悔しくて仕方がない…

 そういうことだろう…

 が、

 バニラもリンダも、貧乏な家庭に育ったかもしれないが、そういうことはなかった…

 バニラは、根性曲がりだが、他人の悪口をいうことは、一切なかった…

 だから、貧乏な家庭に生まれても、必ずしも、彼女のように、性格が劣悪であるわけではない…

 しかし、やはり、裕福な家庭に育った人間よりも、貧乏な家庭に育った人間の方が、性格が、悪い人間が多い…

 これは、さっき言った学歴と同じだろう…

 が、

 あくまで、それは、全体の傾向…

 すべての人間に当てはまるわけでない…

 また、リンダとバニラを例に取れば、彼女たちは、抜群のルックスを持って生まれた…

 つまり、他人に勝てるものがあった…

 それが、今、例に挙げた、昔知り合った会社の同僚との決定的な差だった…

 私は、いつのまにか、部屋で、そんなことを考えていた…

 いつものことだった(笑)…

                
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