第86話 レコードジャケットから

文字数 1,032文字

 昔聴いた音楽を調べていて驚いた。

 1970年代後半、レコードで聞いていた時代。付き合っていた彼は当時30万円出してステレオを買った。大きかった。幅は1メートル以上。奥行きもあった。レコードプレーヤーにカセットデッキ。レコードは聴くたび丁寧に埃を取った。音はアパートだから大きくはかけられないのに……30万円……当時の月給よりも高いもの。のちに買ってもらった婚約指輪より高かった……

 聴いていた曲は、松山千春、太田裕美、テレサ・テン、グラセラ・スシャーナ、レーモン・ルフェーブル……狭い部屋でいつもかかっていた。覚えているのは松山千春の、
「あたい……ブス、だけどあたいの彼は優しくて……」(あたい)

 年月が過ぎ大量のレコードは処分した。ゴミに出した。中身とジャケットを分別し捨てた。夫は今は携帯で聴いている。

 私の大量のレコードも廃棄した。ローンで買ったクラシック名曲集。数枚あったロックのレコードはクイーン、ユーライアヒープ、そしてスコーピオンズ。それらも今は携帯で聴く。小さなスピーカーで。

 先日、なにげなく思い出しスコーピオンズのことを調べた。当時、渋谷陽一さんのラジオを聞いていた。その時に紹介されたのだろう。ハードなドイツのロックグループ。渋谷氏はジャケットがどうの……言っていたが、気に入りすぐに買いに行った。

 まだ若かった娘が買うには恥ずかしいジャケットだった。30センチ掛ける30センチのほぼ全面の写真。今では許可されない女児のヌード……説明するのも(はばか)られる。おまけに歌は『Virgin Killer』恥ずかしかったが、欲しかったのでレジに。

 このジャケットは各国で発禁になったが日本ではOKだった。日本は世界から児童ポルノ天国と呼ばれていた。

 そのレコードもすでに処分して何年? その後、このレコードのジャケットは物議が(かも)されメンバーの写真に変わった。
 
 それが、オークションで出品されている。アマゾンでは今ではアダルト扱いに。定価は1800円だったものが高いものは8000円に。知らなかった。

 知らなかった。2014年の改正児童ポルノ禁止法により、有名な写真集も児童ポルノに当たるとか国会で議論されていた。撮影された時の年齢が18歳なら問題ないが、17歳だったなら? ネット上で話題になっていた。持っているだけで逮捕にはならないそうだが。

 当時騒がれた写真集には怒りが湧いた。とてつもない怒りが湧いた。娘を持つ母親になっていたからだろうか? 

 
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