第115話 ときめき

文字数 1,300文字

 ウォーキングコースの川沿いの道を歩いていたら、人だかりがしていた。数十年前は汚れた川、ワースト上位に入る川がずいぶんきれいになった。
 冬の日中にウォーキングをしている人は結構いる。この川で白鳥を見たのは2度目だ。2羽の白鳥はこの間見たのと同じ鳥か?

 夫に言うと信じなかった。カモかシラサギだろうと。撮ってある写真を見せると納得したのかしないのか? どうでもいいことだ。娘ふたりに至ってはさらにどうでもいいこと。これをお嫁に言って写真を見せると、時間を置かず回答が。

「クチバシがオレンジだからコブハクチョウです」
 彼女は物知りの上に探究心がすごい。すぐに検索してくれた。

 ときめきが嬉しい。歳と共にだんだんなくなっていく。
 思えば常にやりたいことがあった。熱しやすく冷めやすい。ゴルフのレッスンは行けば集中するが、まだ欲がない。それほど好きではないのかも。週1度で充分だし、ひと月、腰痛でできなくても辛くはなかった。夫のように真冬にコースに行く気はない。

 ひとつ前のマイブームの園芸。かつては夜中目を覚ますと、画像を見ていた。寒い冬にベランダで中腰の姿勢で、延々と植え替えをしていた。土を混ぜていた。今は、ときめいた有名な方の寄せ植えの本を開いても、感じなくなってしまった。植物は環境次第。愛情かけても手間をかけても答えない。マニュアル通りにもいかない。エアコンの風が当たる場所でなぜ元気に育つのか? 水をチョロチョロしかもらえずとも、美容院の植物のなんと元気なこと。

 夢中になった中国の歴史ドラマ、調べました。日本の歴史より詳しくなった。なのに熱が冷めていく。
 素晴らしいフィギュアスケートも、鈴木明子さんの時代はかじりついて見ていた。リストのハンガリー狂詩曲。甲子園にいたってははるか昔、毎試合見ていたのに。

 若い頃、お菓子作りもパン作りも今ほどレシピ本はなかった。小さなオーブンを買って毎日焼いた。失敗作品を食べて太った。この間オーブンを買い替えたのに、面倒くさい、が先に立ってしまう。

 ピアノも鳴らさない。年頭には頑張ろうとは思うのだが。
 ノートに項目を書いてある。読んだ本、観た映画、ピアノ、ゴルフ、料理、園芸、ダンベル、レッグマジック、フラフープ、ウォーキング、掃除、片付け……怠けてる。
 少し前までは、ラジオの英語講座、ボールペン字、漢字、高校数学、ランニングも。すでに、諦めた。

 でも、明日大地震がきて死んでも、もういいか、と思うことがある。
 投稿したものを読んでいただいた。投稿した時は、たったひとりの方に読んでいただけたら本望、と思ったのだ。

 贔屓の作者さんが大長編ファンタジーを投稿、執筆中。時々コメントすると返信が。
 
「書くこと、書きたいこと、いっぱいあります!
 そのすべてを出し切れたら人生に悔いなし、ですね。全部書き切るにはけっこう長生きしないとな……と思う今日この頃です。
 まあ、5部作完成できたら、私の人生にも何か意味があったのかな、と思って死に際にも諦めがつきそうです」

 大地震がきたら、高齢者施設に駆けつけて入居者を助けに行かなきゃ……そう思うと、恐怖は減った。


 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み