第68話 青春は……

文字数 816文字

 入学式の場面の来賓の言葉を検索して見つけた。 

 金縷(きんる)の衣は再び()べし、青春は再び()べからず
王粲(おうさん) 中国三国時代の詩人)

 どんなに高価な服もお金さえあれば手に入れることができる。
だが、1度過ぎ去ってしまった青春は、2度と取り戻すことはできない。青春の可能性と大切さを述べた言葉。

 さらに調べたら、漢詩『金縷衣』作者不明の民間歌謡を杜秋娘(としゅうじょう)という女性が歌い広めた、
 
 君に勧む  惜しむ莫れ (なかれ)金縷(きんる)の衣を

 君に勧む  惜しみ取れ 少年の時を 
 
花開き 折るに堪へなば 直ちに (すべから)く 折るべし

 花 無きを待ちて 空しく 枝を折ること莫れ(なかれ)
 
 あなたに申し上げるが、金縷の衣装などは惜しむに足りない。
 生涯に1度しかない青春の時期を、他の何にもまして大切にしよう。
 花が咲いて見ごろになったら、すぐに折り取るがよい。
 花が散り終わった後に枝だけを折るようなヘマなことをしてはならない。

 これは何度も観た中国ドラマ『宮廷の諍い女(いさかいめ)』の中で皇帝の前で、まだ夜伽に召されていない側室が歌う。
「私を折り取って! すぐに!」

 召されるときはなにも着ずに、布団にくるくる巻かれ皇帝の元へ抱えられていく。皇帝を傷つけるものを持ち込めないように。

 若い盛りの時に愛してくださいという、なまめかしい愛の歌?
 若いうちは短いから、年老いて悲しまぬように努力せよ、と?
 それとも、若い時こそ悔いなく遊べ、楽しめと?

佐藤春夫の訳 (車塵集(しゃじんしゅう)より)

 綾にしき 何をか惜しむ 
 惜しめただ 君若き日を
 いざや折れ 花よかりせば
 ためらはば 折りて花なし

『宮廷の諍い女』は元々は中国のネット小説。読まれた回数はスケールが違う。架空の時代のネット小説が、清の雍正帝(ようせいてい)時代に置き換えられ、とんでもないドラマになった。

 2012年、中国をはじめ台湾・香港で一大社会現象を巻き起こし空前の大ヒット! これぞ中国版「大奥」の真骨頂。

 NOVEL DAYSからそんな作品が出たら……


 
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