第173話 夏休み

文字数 1,234文字

 夏休みといえば中島みゆきの『あたいの夏休み』

 短パンを穿いた付け焼刃レディたちが
 腕を組んでチンピラにぶらさがって歩く
 ここは別荘地 盛り場じゃないのよと
 レースのカーテンの陰 囁く声
 お金貯めて3日泊まるのが夏休み

 付け焼き刃レディも歳を取った。
 3人の子供たちも歳を取った。長男が40歳になるって。ということは、結婚40周年だった? 見事に忘れていた。
 それぞれの家族。おとなが8人。子どもが1歳から8歳まで5人が狭い我が家に集まった。いつもは姉夫婦も来るのだが、姉が少し前からめまいがひどく今回は欠席。
 検査したら脳の病気ではないらしいがすぐには治らない。私も10年くらい前、明け方天井が回っていたことがある。なにもできない、動けない。犬と猫を飼っていた。ああ、便まみれ……
 めまいを経験している人は多い。

 息子のお嫁さんは、おとうさんが休み明けに目の手術で入院するので、絶対感染したくないから、帰って来てくれるな、と。歳を取るとそこらじゅう悪いところが出てくる。

 今回のメニューは……自前のレシピメモをめくり決めた。もう新しいものを作る気はない。前日から泊まっている8歳の男の子に手伝わせた。ミートローフの具をこねさせ、ケースに入れさせた。うずらの卵を間に入れて3ケース。合挽き肉が1キロ。オーブンは新しいからお任せ。
 次に大正海老の殻をむかせた。面白かったようだ。もっとやりたい、と。大きいエビが20尾のエビチリ。背に切り目を入れると豪華になる。
 それからケーキのクリームを泡立てさせた。前日焼いておいたシフォンケーキを3段に切り、乳脂肪35パーセントの生クリームを塗らせた。絞り出しは面倒だしセンスがないのでやらない。飾りは孫たちにやらせる。市販の誕生日プレートと、チョコベビーに、カラーのスプレー、ろうそく。側面はボコボコだけど皆写真を撮っていた。
 4歳の女の子の誕生日のお祝いなのに、2歳の男の子が火を吹き消したからやり直し。21センチの3段のシフォンケーキ、かろうじてひとりひと切れずつ回った。姉が来る時は近くのケーキ屋に注文してくれるのだが。
 1歳の孫のために前日、プリンも作っておいた。甘味控えめの、この子のはカスタードソースなし。20年ぶりくらいに作った。初めてオーブンで。時間はかかったがきれいに固まった。蒸し器は火加減が難しかった。今は蒸し器もないが。

 あとは和牛細切れ肉のすき焼きサラダ500グラム。かに玉が卵8個分。それに寿司も。頼むと高いから持ち帰り寿司。
 長女が唐揚げを作ってきた。次女は果物を持ってきた。酒は飲み放題。ブランデーまで買っておいた。氷も足りなくなるので買っておいた。が、孫の箸を用意するのを忘れた。いつまでもスプーンではない。コップも。子供用のが足りなかった。

 洗い物が、次から次。お嫁さんには、普段大変だろうから、「いいよいいよ、座ってて……」
 しかしこんなこと、いつまでできるだろう? 皆が帰ったらぐったり。



 
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