第162話 体力はあるけれど

文字数 1,581文字

 姉夫婦と旅行した。車で平日2泊3日ののんびり旅。gotoがいつ始まるかと思っていたらとんでもない。感染者数が日々増えていく。行けなくなるのでは? と心配した。
 年寄り4人は3回のワクチンが済んでいるので、それに行けるのは今のうち。義兄は75歳だから山形の山寺に登れなくなってしまう。

 私は雨女。3日間の天気予報は雨。それも半端ではなかった。息子が心配してメールを寄越した。
 2度目の松島はまた雨だった。1度目は中学生のとき。きれいだった記憶がないから雨だったはず。今回はもっとひどい雨。高速を走る車から前が見えない。こんな大雨の中を走るのは初めてだ。怖かった。これで遊覧船に乗れるのか?
 
 遊覧船は出た。ツアー客も大勢いた。皆、半袖で寒そうだ。用意周到な私はカッパに長靴。夫は必要ないと笑ったが、水溜まりだらけ。義兄は靴がびしょびしょだ。

 船の窓にはワイパーはない。景色が水滴で見えない。松島は雨だった。2度目も雨だった。昼食をすませたら、ますます降ってきた。とても観光どころではない。そのあとの予定は取りやめホテルへ。
 ナビが途中で変わった。方向が変わった。Uターンしている。戻って大回り。銀山温泉まで1時間余計にかかることになっている?? 車が水しぶきをあげる。恐ろし。なぜ迂回したのかは不明。危険箇所があるのだろう。

 その2日後は大変なことになったのだ。仙台は川が氾濫。浸水。松島も週末なのに商売にならないとテレビで嘆いていた。

 山形は雨はパラパラだった。泊まるのは銀山温泉。『千と千尋の神隠し』の舞台のモデルと噂されるノスタルジックな街並み。
 でも『千と千尋の神隠し』……観ていないのだ。

 翌日は、山寺の通称で知られる「宝珠山(ほうじゅさん)立石寺(りっしゃくじ)」山全体が修行と信仰の場、絶佳の景観が広がり、俳聖・松尾芭蕉が「(しずか)さや岩にしみ入る蝉の声」の名句を「奥のほそ道」に残した。
 
 1015段ある長い石段を登って奥之院を目指す。石段は登ることにより煩悩が消滅すると言われている、ありがたい修行の石段。

 入定窟(にゅうじょうくつ)というのがある。
 ここは円仁(えんにん)が”入定”つまり、「即身仏(そくしんぶつ)」になった場所だという言い伝えがある。
「即身仏」とはいわば”ミイラ”のこと。厳しい修行の末に、生きたままここの土の中に埋められ、ミイラとなって何十億年後かに弥勒菩薩(みろくぼさつ)様といっしょに、また姿を現す……
 円仁は最後比叡山で亡くなった、とされているが、山寺では、昭和23年に学術調査を行い、中から金箔押しの木棺(木のひつぎ)と、人骨5体分、そして、円仁をかたどったとおぼしき頭部だけの木彫像が発見された。
……(帰ってきてから投稿するのに調べてわかったこと。事前に調べておかない。即身仏はドラマ『相棒』で知ったので興味があったのに)

 ここを登り切るために続けていたウォーキングにスクワットだが……楽勝でした。余裕。
 昼は板蕎麦。1.5人から2人前入っている。余裕で食べられると思ったら量が多すぎる。おいしいけど、残したら悪いと思う私と義兄は食べ過ぎた。
 翌日は阿武隈堂。こちらも階段が多かった。夕方家に着く頃には大雨に。無事になんとか、まあまあ……
 帰って、たいして疲れもせず、その日のうちに洗濯して、次の朝も普通に起きて朝食。家のご飯もおいしい。コーヒーも。家が1番いいわあ……
 9時を過ぎて大変なことに気がついた。

 財布を忘れてきた。予備費の長財布を金庫に入れたまま帰ってきてしまった。現金はほとんど使わないが、一応持っていき、金庫に入れたのだ。中身がいくら入っているかも正確にはわからない。身分証明書はなにもなし。

 すぐに電話した。フロントの対応の見事なこと。逆にすぐに気づかず申し訳ありません、と元払いで送ってくれた。24時間後には手元に届いていた。
 体力はまだまだ大丈夫そうだが、頭は大丈夫か? 一生言われそうだ。
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