第180話 マイナポイントのために

文字数 1,328文字

 マイナンバーカードを作った。2万ポイントに釣られて。期限が迫ってきたので、ついにネットで申し込んでみた。できないだろうと思いながら。
 まず、証明写真を、自撮りする。これは抵抗があった。過去に撮ったパスポートや、ハローワークに行くための写真は、きちんと写真館で撮った。若い人たちのように、撮られることに慣れてはいないのだ。
 
 しかし、ネットでの申し込みは思ったより簡単だった。写真も白い壁の前で自撮りした。髪を整え化粧して、高い方のメガネをかけて……実物よりきれいには撮れないけど、どうせ縮小されるのだから、と妥協した。

 数日して受け取りの予約の封書が届いた。確認した……つもり。
 日時は合ってた。午後2時。性格的に30分も早く着いた。違う場所に。
 庁舎は3館ある。滅多に行かないが、そのどれかが別館だと思い込んでいた。別館3階は見当たらない。適当な窓口で聞けば……わからない? 持ってきた地図を見せたら、道路を渡った向こうの古い建物?

 その日は暑かった。でも、早めに来てよかった。着いたところの係の方は親切でよかったあ……
 ところが……ここではありません!

 私は何を見て別館3階とメモしておいたのか? 狐につままれたように、また歩く。暑い中を10分弱。また道路を戻ってもっと奥に。早めにきてよかった……

 そして、すっかり自信をなくしたばあさんは、ようやくマイナンバーカードをもらうことができたのだった。

 事前に姉に聞いていた。健康保険と口座の手続きも、教えてもらってやってきたほうがいいと。ネットでやるのは難しい、と。
 庁舎に戻り受付で聞いた。手続き場所はすぐ目の前だった。ワクチン接種で並んで座っているのかと勘違いしたほどの人数が待っていた。
 1時間以上は待つだろうとのこと。でも、ネットでできる自信はないし……
 受付は5カ所。私は25人目くらい。ひとりが長い。終われば丁寧にテーブルを拭く。
 
 待っているのは年寄ばかり。うしろでは、コロナ禍なのに数人が、初対面なのに喋り始めた。娘が60歳だとか……80歳を超えたおばあちゃんたちが元気に話していた。まあ、離れているしマスクしているし、大丈夫か? 
 話が結構面白かった。エリザベス女王が亡くなった。お金より自由よね? お金がないのは辛いよう……と実感がこもっていた年金暮らしの方たち。旦那さまは皆いない。30年前に亡くなった、とか。

 待つこと1時間半、すぐ前のお年寄りの男性が、口座を確認できるものを持ってきていなくて、また来てくださいと言われていた。あーあ、1時間半も待ってて……受付したとき確認されたはず。ところがさっさと引き下がらない。あとがつかえているのに。周りもイライラする。

 ようやく私の番だ。持ち物は完璧。駐車券も忘れそうなので最初に出しておいた。思ったより簡単そう。自分でできたかも……暗証番号を何度も打った。それ以外は係の方が打ってくれた。口座番号まで。
 パソコンは私の方を向いている。係の方は不自然な方向から器用にミスせず打っていた。難なく終了。駐車券は1時間のを3枚くれた。3時間近くかかったということ。

 でも、2万円分のポイントだからありがたい。買い物して帰った。大盤振る舞い。
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