第60話 連れ合い

文字数 1,157文字

 小中学校の頃、片親の子はクラスでひとりかふたりだった。二十歳くらいのときにソ連の離婚率を聞き驚いた。3人にひとり。
 今や、日本でも35パーセント。上の階のご夫婦はふた組別れた。隣のご夫婦もふた組別れた。夫の兄弟は5人のうちふたりが別れている。離婚率は40パーセントだ。夫の親は亡くなったあとだった。生きているうちだったら、さぞや嘆いたことだろう。
 祖父母の代では、子供ができないと離婚したり、されたりした。別のところに嫁いだら何人も産んだ、とか。
 豪快な美容師さんの旦那さんは離婚歴2回。カラッと話す。
「養育費やっと払い終わったのよ。1番目も2番目も」
我が娘の旦那も離婚歴がある。
 打ち明けられた時はショックだった。
「この人じゃなきゃダメなの?」
口にはしなかったが。
 夫は拍子抜けするくらい気にしなかった。そんなのザラにいる……夫の会社にもザラにいる……子供5人いて離婚した男もいる。

 私には子供が3人、確率としてひとりは離婚するか? それも仕方ない、とこの頃は思うようになった。我慢に我慢に我慢を重ねれば、いずれは情がわく。
 別れたら、この人どうなるの? 可哀想で別れられない……そうなるまで我慢しろとは言えない。ただ、実家には戻って来ないで。まあ、夫のいる間は戻らないだろう。
 産後すぐに、実家から自分の家にタクシー呼んで帰ったくらいだから。多分、旦那がどんなにいやになっても、おとうさんよりはまし……そう思ってくれたら、夫の価値もあるというもの。

 今の職場に働き始め、普通に話していたら、
「旦那さんとうまくやる秘訣はなんですか?」
と聞かれた。
 離婚した職員さんが多かった。
 帰る実家があったら、子供を養える稼ぎがあれば、別れていたわよ……そういう話はよく聞いた。
 娘には言う。結婚したら片目をつぶれ!
「両目つぶってるよ」と言われるが。
 娘に帰る家はない。旦那が嫌でも父親よりはマシ……

 職場には、おひとり様も多い。新しい人が入るたびに口には気をつけるのだ。働き始めた頃、「お子さんは?」と聞いてしまい、機嫌を損ねてしまった。先日も、一緒に配膳をしていた方が速いので、
「主婦は手際がいいよね」
と言ってしまった。
「私、1度もお嫁にいってないんです」
と、柔らかく言われた。50歳を過ぎて女ひとり。すでにマンションも買っている。腰痛は当たり前。痛み止めを飲んで仕事をしている。
 大変だろうが羨ましくもある。

 いろいろあった。今でもいやなのは夜中のテレビ。寝る部屋は別だが、狭いマンション。音が気になる。頭にきて消せばすぐに付ける。殺したくなる。フライパンでぶん殴りたくなる。
 これは、検索したら同じような方が大勢いた。
『もう、無理。別居したい』
先日は夜中にネットで耳栓を頼んだ。でも付けたら耳が痒くなり使えない。 
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