第191話 痛いよ 3

文字数 854文字

 腰が痛い。足も痛い。左向きに寝ていないと立っても座っても痛い。
 なにもできない。座るのが辛いから食べるのも辛い。バナナと牛乳とロキソニン。ロキソニンも効かなくなってきたから、まだ2度目は飲んでいない。

 家事をしなくていいから助かる。今日は夫はゴルフだ。昨日たくさん食料を買い込んできてくれた。でも、なにもできないのだ。何日無駄にするのだろう? せめて食べるの控えて、年内にやり残しそうだったダイエットでもしようか?
 仕事もとりあえず1週間様子をみます、と電話した。もう、辞めてもいいか、とも思う。でも、もうすぐ夫は完全な年金生活だから、お金は欲しい。考える時間はたくさんある。
 こんな立場だから気楽だけれど、施設で腰を痛めて介護職を離れていった方たちはどうしているだろう? ひとり暮らしや妻子のいる男性も。

 思えば夫も腰痛持ちだった。現場作業の時は朝、電話機まで這いずって会社に連絡したことも。
 夜中に何度も風呂に浸かっていたことも。そのたび、こちらは生活力がないので不安に駆られた。
 こんなに痛くて仕事行ったの? と聞いたら当たり前、と返ってきた。トイレに行ければまだ大丈夫だと。
 夫は今でも月に1度整体に行っている。いろいろ試して、そこなら間違いないそうだ。
 息子も鍼にも通っていた。1度行くと五千円。鍼治療で小遣いが消える。痛み止めを常用し、ストレッチをしている。まだまだ子供が小さいのだ。
 私の通っていた整骨院は繁盛していて、1回千円で丁寧にやってくれるのだが……
 健保から届いた施術確認の内容がかなり違うので不信感が。正直に書いて出してよいのか迷う。
 
 左向きに寝ながらiPadで、1度観たブラウン神父を観ている。この英国ドラマからはエッセイや小説にかなりのヒントをいただいた。
 
 うとうとしていたら、夫がリンゴと柿をむいて小さく切って持ってきてくれた。ああ、我慢したけど別れなくてよかった。
 でも、5日も寝てたら怒り出すかな?

 つくづく日頃の、どこも痛くない、ということがどんなに幸せかわかる。
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