第198話 グリーンジャケット

文字数 3,308文字

 連れ合いがゴルフに行く時に、マスターズのテーマ曲を聴いていた。聴き取れたのは、

Augusta green coat Sunday afternoon
Augusta Amen Corner
Augusta……

 マスターズをしっかり観たことはなかった。「Augusta」が、開催されるクラブ名だとも知らなかった。

 マスターズは、アメリカ合衆国ジョージア州のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブを会場に開かれている、ゴルフのメジャー選手権のひとつ。
 他のメジャーは毎回開催コースが異なるが、マスターズは毎年同じオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで開催される。
 このコースはとりわけグリーンの難度が高く、別名「ガラスのグリーン」とも呼ばれるほどアプローチショットやパットでのボールコントロールが難しく、それゆえに「オーガスタのグリーンには“魔女”が棲む」とよく言われる。
 更にINのコース南側の角にある11番・12番・13番の3つのホールは《アーメンコーナー》の別名で恐れられている。
 マスターズでは、観客のことをギャラリーではなく「パトロン」と呼ぶ。実はマスターズの賞金は、入場者のフィー(入場料)から経費を差し引いた金額を原資にしている。マスターズの創始者達が大会の細部にこだわるあまりお金を使い果たしてしまい、開催早々資金難に陥ってしまうという歴史がある。
 厳しい状況の中で賞金の資金を捻出するために取ったのが、「入場料金を賞金の原資にする」という方法だったわけだ。
 賞金総額はだいたい1,000〜1,100万ドル前後が平均で、優勝者には180〜190万ドル(約2億円程度)の賞金が与えらることが多いようだ。
 金額は入場者数によって変動するため一概には言えないが、他のメジャー選手権における賞金相場とほとんど変わらない。

 マスターズの優勝者には、その証であるグリーンジャケットと共に、生涯出場権が与えられる。つまり1度でも優勝すれば、ゴルファーとしての生涯を終えるまで毎年マスターズに招待してもらえるわけだ。

マスターズ・トーナメントの出場資格
歴代優勝者 (生涯)、全米オープン優勝者(過去5年間)、全英オープン優勝者(過去5年間)、全米プロゴルフ選手権(PGA選手権)優勝者(過去5年間)…………
同年公式世界ランキング50位以内(マスターズ大会開催前週に発表のもの)etc...

 2021年には、松山英樹が10回目の出場を果たした末に、アジア出身選手として初めて優勝した。

✳︎✳︎
 小学校の卒業文集に「20歳でマスターズ優勝」と夢を記した少年がいた。

 彼がすごかった時代は興味がなかったが、
2005年「全国中学選手権」優勝。
07年 初めて出場したプロツアーで優勝し、15歳245日の最年少記録を樹立。
08年 16歳でプロ転向。
09年 18歳で史上最年少の賞金王に輝いた。
10年 「中日クラウンズ」最終日に世界最少ストローク「58」をマーク。
 (2012年5月に、ライン・ギブソン選手が「55」をマークし、2年で塗り替えられてしまった)

 マスターズには5度出場しているが、3度は特別枠である。
 マスターズの長い歴史の中、例外の『特別招待』が5年で3回という特別扱いぶりに、米国のジャーナリストの間では、『優勝しなくても生涯出場権を得る最初のプレーヤー』と皮肉たっぷりにささやかれた。

 4日間開催で、一大会に多額の放映権料が支払われる。彼の出場しだいで視聴率も大きく変わるわけだ……

成績
09年予選落ち  10年予選落ち  11年20位タイ  12年予選落ち  13年38位タイ
 夢は叶えられなかった。20歳で優勝の夢は叶えられなかった。

 私が彼に興味を持ったのは去年だ。
 21年、米国からの帰国後の自主隔離期間中に隔離措置違反が発覚し、1カ月の出場停止処分を受けた。

 昨年はヤフーニュースで、石川遼のよくないことをずいぶん読んだ。テレビで見たときも長髪でイメージが悪かった。

 
 石川遼は15歳で優勝し、インタビューではにかむ姿から「ハニカミ王子」と呼ばれ、老若男女の心をつかんだ。
 高校1年の5月、史上最年少でツアー優勝を遂げると、マスコミやゴルフ界は、世間知らずの石川を散々持ち上げ、商売に利用してきた。まるでゴルフ界の宝のように扱い、常識外れやマナーに反する行動をしても苦言を呈する者はいなかった。

 一方、優勝から3カ月後には迷彩柄のカーゴパンツでツアーに出場し、「ゴルフにふさわしくないパンツだ」などと多くの苦情が寄せられた。

 翌年1月にはプロ転向宣言直後に行われた日本スポーツ賞の表彰式に、ジャージー姿で現れてトロフィーを受け取り、出席者を唖然とさせたこともあった。
 中学時代からゴルフがうまい少年が、高校1年でプロツアーで優勝し、多くのスポンサーと契約し、莫大な契約金を手にする。利用価値がある人気プロに対し周囲は厳しいことは言わない。

 2007年関東アマチュアゴルフ選手権で、TBSが石川に取材を試みようとし、同伴競技者に小型マイクを装着する依頼を行った。しかし、依頼は通らず、選手は大会主催者に報告をした。
 また、同日にTBSのヘリコプターを大会中に飛ばし、プレイを妨げる行為が発覚。この迷惑行為により、TBSは関東ゴルフ連盟に謝罪を行い、同日午前放送の番組で陳謝した。
 
 2008年4月25日 - 27日に行われた、つるやオープンゴルフトーナメントでは、多数のギャラリーの対応の為に、送迎バスは臨時ダイヤになり増発となった。
 また、ギャラリーの女性が転倒・骨折し救急車に運ばれる事故も発生している。

 2009年8月2日のサン・クロレラクラシック最終日の17番ホールと最終ホールにて、同スコアで並んでいたオーストラリアのブレンダン・ジョーンズがパットを外した際、観客の一部から拍手が起こった。
 後に大会主催者がブレンダンに謝罪した。テレビの解説者も放送内で苦言を呈し、石川も「ゴルフは紳士のスポーツで、(相手が)外したことを喜ぶ応援のスタイルはない。ギャラリーの方も真摯な気持ちで観戦してもらいたい」と話している。

 石川目当てのギャラリーによる迷惑行為は数多く起きており、シャッター音などでプレーの妨げになるなど、ギャラリーのマナーを問う声がある。
 2009年11月29日のカシオワールドオープンにて取材中のTBSスタッフがカートを暴走させ、前方に居た移動中のギャラリー数人をはねた。うち女性一人がカートの下敷きになり、眼窩底骨折の大ケガを負った。なお、カートを運転していたTBSカメラマンの男は自動車運転過失致傷罪で禁錮2年(執行猶予4年)の刑事処分。


 そして仕切り直しの今季の先日の「三井住友VISA太平洋マスターズ」で優勝を飾り、インタビューに答えた。
「やるべきことをやり続けてきた。それを今日も1打1打しっかりと、打ち方だけじゃなくて、攻め方だったり、しっかり考えて意識しながらやれた。でも正直、今でも信じられないという感じです」

 男子ゴルフはあまり観ないが、今回は3日目の途中から観た。
 いないと思った石川遼が上位にいたから、応援してしまった。

 国内男子ツアーはかつて年間40試合以上を誇ったが、21年は24試合開催。テレビ世帯視聴率も平均3.5%と低迷している。国内女子ツアーの38試合開催、同平均6.0%と比べても差は開くばかりだ。

 若い男子選手が頑張っていた。
 盛り返してください。


https://www.clunk.jp/golf-masters-tournament
https://search.yahoo.co.jp/amp/s/news.golfdigest.co.jp/news/jgto/article/151944/1/%3Fformat%3Damphtml%26usqp%3Dmq331AQIKAGwASCAAgM%253D
https://www.nikkangendai.com/articles/view/sports/297195を参考にしました。

 
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