第112話 全然わからない

文字数 1,398文字

 家の固定電話が通じない。それがいつからかもわからない。かけるのは再配達受付センターくらい。他は出ると面倒なので留守電にしてある。子供たちは携帯だし。

 そういえば雑音がしていた。20年くらい使っていた電話機だ。電話機の故障……買い替えよう。
 ついでに、古い電子レンジにホットカーペット。吸引力の落ちた掃除機も。
 家電量販店で次々決めた。買い替えは最後かな? しかし、1番必要な電話機が売っていなかった。半導体不足で家庭用電話機は後回しにされているとか、入荷するまでにしばらくかかるそうだ。何軒か周り、留守電機能もついていないものをやっと手に入れた。安くて済んだが。

 ところが電話は通じない。ネットで調べて、コンセントや、ルーターのいろんなコードを抜いたり入れたりしてみた。すると、発信はできるようになった。が、着信はできない。携帯からかければツーツーツーと3度音がするだけ。夫の知識も私とたいして変わらず。固定電話はもういらないと思うが、親戚に何かあればかかってくるだろう。まだ、なくすわけにはいかない。夫は
「おまえに任せた……」
 
 電話関係はすべてソフトバンクに変更してある。娘が家族割りにすれば安くなるから、と。娘と娘の旦那と私が契約しに行ったのは、忘れもしない天皇即位礼の日。まさか、昼から夕方までかかるとは思わず、途中から投げ出すわけにも行かず、酔った夫からは何度も帰りはまだか、まだか? と電話が来た。誰に怒りをぶつけることもできず、契約が完了した時には暗くなっていた。

 だから、NTTに電話をするのか、ソフトバンクなのか、それさえわからない。とりあえずソフトバンクに電話をしたら……音声で、ホームページから……相談しろと。

 わからないまま始めた。チャットサポート。オペレーターの顔(アニメ)と文字の案内が出る。こちらは文字を打つのに時間がかかる。何がわからないのかもわからない。一定の時間が過ぎると終了します、との案内が何度も出て焦る。相手も質問するたびにお待ちください、と長い時間待たされる。多分、バイトなのだろう。娘もそんなようなバイトをしたことがある。わからないたびに上に聞くのだろう。

 指示された通りにコードを抜いたり挿したり、すでに何度もやったことをやらされた。それでもダメだと初期化しろ、と。初期化はやっていませんでした。ペンの先でくぼみを数秒押さえ続ける……
 しかし、初期化したら、パソコンの中身はどうなる? 無知ゆえ、ひとりでは決められない。
 そこまでで、とりあえず、夫が帰ってからにします、と礼を言い終了した。

 夫が帰り、初期化をしたが変わらず。そのあと、何度かコードを抜いたり挿したりしたらようやくできた。着信ができた。
 やれやれ。大変な作業だった。これで何年もつのだろう? 買った電話機は無駄になった。安いものでよかったが。

 もう、付いていくのは大変だ。
 買い替えた電子レンジも複雑すぎてわからない。ただ温めるだけなのに、1はごはん、2はおかず、3はスチーム。それが……できない。ダイヤルを回すと54までのメニューに変わる。押したあと回せば、ごはん表示で1、2、3の強さに変わる。どうすれば、おかず表示になるのやら? わからないまま、おかずもごはん表示のまま温めていた。

 お嫁が来たので聞いてみた。
「おかあさん、回してダメなら押すんです。2回続けて(・・・・・)押すんです」
 


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