第90話 面白いおかあさん

文字数 807文字

 娘たちには、面白いおかあさん、と言われている。娘の旦那には、さらにおかしい人だと思われている。しっかりしているし、ある面では物知りだが……
 携帯、iPadのことは娘に頼る。今のも次女と買いにいき、使えるようにしてくれた。
 孫たちが来ると、長い時間の終わりにiPadでYouTubeを見たりゲームをする。ふたりの孫が奪い合う。
 帰った後に画面にヒビが。
 あーあ……操作に支障はないが……もう触らせない! 次に娘が来た時に言うと(弁償しろとは言わないが)ヒビの入った保護シールを剥がした。
 よかったあ。こなごなになったが剥がした画面は無傷だ。よかったあ。

 ネットで注文しようとしたらサイズがわからない。iPadの種類、何世代、とかわからない。iPadの裏にはルーペで見てもぼんやりした数字。ようやく判明し、注文した。

 届いた箱を開け、シールをそっと剥がした。頭の中には薄いもの、という思い込みがある。シールを剥がしiPadの上にそっと載せた。張り付かない。少しずつ馴染んでいく……そう思った。テーブルの上で操作している分には困らないが、仰向けに寝て持つと保護シールがフワッと落ちてくる。
 安かったからこんなもん。おめでたい無知な年寄りは何の疑問も持たず、そのうち剥がれるのが面倒くさくなり使わなくなった。家で使うだけ。孫に触らさなければ必要はない。安かったからあんなもん。安物買いの銭失い。

 娘ふたりと孫3人が遊びに来た。来る前に、iPadは壊れたことにして、孫には触らせないよう念を押しておいた。
 私が保護シールのお粗末なことを怒りながら話すと……ペラペラのシールをふたりの娘に見せたら、大笑い。
「さすがおかあさん」
シールを貼ってあった厚みのある台は既に処分した。下敷きより厚いと思ったのだ。
 ふたりは大笑い。笑いが止まらない。
「アハハ、ハハハ、旦那になんて話そう」
「シール代分笑わせてもらった」
涙目で笑い続けた。
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