第197話 チャイコフスキーの死

文字数 3,923文字

『ブラウン神父の事件簿』にLとGがときどき出てくる。(Gは頻繁かも)
 聖書では禁じられているから罪だ。知られたら破滅する。
 隠すが、バレて脅迫され、相手に迷惑がかかるから、と自殺したり。

 別のドラマ(確かオランダ)では石の重しを付けられ海に沈められる刑だった。あとは、投獄されるか、ホルモン注射されるか……

LGBTQとは、
Lesbian(レズビアン=女性同性愛者)
Gay(ゲイ=男性同性愛者)
Bisexual(バイセクシャル=両性愛者)
Transgender(トランスジェンダー=心と体の性が異なる人)
Queer/Questioning(クィアまたはクエスチョニング=性的指向・性自認が定まらない人)
の頭文字をつなげた略語で、いわゆる性的少数者(セクシュアルマイノリティ)の総称。

 1970年代に主にゲイが差別撤廃や法的権利の獲得を求めて行ったパレードなどを出発点に、性的マイノリティへの理解を求める活動が世界的に広がっていき、その過程で使われるようになった。

✳︎✳︎

 チャイコフスキーは実は同性愛者だった。
 ロシアの偉大な作曲家の死因はコレラではなく、それが発覚して、封建的な旧ロシア社会の圧力で彼は自殺を強要されたのだ……という説がある。

 彼は日記に書いている。
「今日、Zが異常に激しく私を苦しめる。おー、神よ、私がどんなに苦しんでいるか、Zの感情にでなく、なによりもそれが私の中にあるという事実に」
 Zとは、彼が必死に隠そうとした同性愛的性向のことである。彼は世間の目をごまかすため、好きでもない女性と結婚した。(これは悲惨な失敗に終わった)

 チャイコフスキーが本当に深く愛したのは、彼が優しく「ボビック」と呼んだ甥で出版商のウラディーミル・ダヴィドフだった。しかし他にも何人かの愛人がいた。その中の一人はある侯爵の甥で、ひょんなことからその侯爵に大作曲家との仲を知られてしまった。そしてこの侯爵は、何と、ロシア皇帝アレクサンドル3世に直接手紙を書いて訴えた。
 困った皇帝は、この件の処理を検事総長ニコライ・ヤコビに任せた。ヤコビは、法律学校の同窓生チャイコフスキーが同性愛という破廉恥な罪で母校の名誉を傷つけたことで怒り、また、ロシアの大作曲家としてのチャイコフスキーのブランド・イメージを守る必要も感じた。
 そこでヤコビがやったことは、秘密法廷を開き、チャイコフスキーに名誉の自殺を求める判決を言い渡すことだった。自殺用の毒薬(砒素とされる)は後日判事が届けることになった。
 チャイコフスキーは真っ青になって震えながらヤコビの家から飛び出していった。

 第6交響曲を書いている最中のチャイコフスキーは、かつてないほど自信に満ちていた。第1楽章を4日足らずで書き終えた時、
「私は人生のうちで今ほど充実し、誇らしく、幸せなことはなかったと誓って言えます」
とユルゲンソン出版社に書き送っている。
 ところが秘密法廷の直後から、チャイコフスキーは抑鬱状態となる。交響曲のリハーサルの時、彼の顔色は真っ青で、
「チャイコフスキーは妙にぼんやりしているように見えた。悪寒が彼の体を走った。彼はただ指揮者になりきろうと焦っていて、中断し、訂正したり、何か集中できなかった。時折彼はオーケストラに向かって、愛情を込めて弾いてくれ、これが私の告別の曲だとは思わないかい、永遠の別れだと? と訴えているようであった」(クルト・パーレン)
 チャイコフスキーがこの交響曲のタイトルを弟モデストと相談して「パテティチェスキー(悲愴)」に決め、出版社ユルゲンソンに宛てて指示したのは、初演わずか2日後だった。
 
 11月1日、レストラン・ライナーに入った夜も、チャイコフスキーは愛人ウラディーミル・ダヴィドフその他2、3人の美青年と一緒で、彼はマカロニを食べ、ミネラル・ウォーター入りの白ワインを飲んだだけだった。彼はコレラなどには感染しなかったのだ。
 チャイコフスキーの抑鬱状態はひどくなり、閉じ込もって独り言をぶつぶつつぶやいたり、すすり泣いたり、囚人のように部屋をうろつき回るようになった。
「まるで逃げ場を失った人みたいだった」
 書類を整理し、遺言状に目を通し、……そして、毒薬を持った死神は、11月5日の夜に現れた。
 チャイコフスキーは遂に毒を飲んだ。兄の苦しみに驚いた弟モデストが医者を呼んだものの、砒素を飲んだのでは手の施しようがない。
 4時間後、「悲愴」の作曲者は、封建的なロシア上流社会の掟に従い、“悲愴”な死を遂げた……
http://oo11.web.fc2.com/MM/Tchaidth_fr.htmを参考にしました。

 1988年のアレクサンドル・ポズナンスキーの論文を皮切りに、チャイコフスキーを診た医者のカルテなど、残されている資料を調査した結果、やはりコレラおよびその余病である尿毒症、肺気腫による心臓衰弱が死因であるという反論が出された。
 現在ではやはりコレラによる病死だったという説が定説となった。
 なおチャイコフスキー自身、発病当日にはオデッサ歌劇場の指揮を引き受ける手紙も書いている。
 ポズナンスキーは緻密な検証を行った末、結局陰謀死説なるものが
「21世紀の今となっては、歴史のエピソードに過ぎないことであり、まったく根拠のない作り話」
であると結論づけている。
https://www.wikiwand.com/ja/ピョートル・チャイコフスキー

 日本でも大人気のドラマ『プリズン・ブレイク』で主役を演じた、実力派俳優ウェントワース・ミラーがずいぶん前にゲイであることをカミングアウトした。
 彼の写真を携帯の待ち受け画面にしていた姉はショックを受けていた。
 ウェントワース・ミラーは15歳の頃には何度も自殺を試みたことがあったそうだ。

 ジョディ・フォスターが同性愛者だとカミングアウトしたときには驚いた。
 第70回ゴールデン・グローブ賞授賞スピーチの中で突然のことだったが、このカミングアウトには会場から大きな拍手が送られていた。

「LGBTQ+コミュニティのレジェンド」とも呼ばれるエルトン・ジョンは、2005年から市民パートナーシップを結んでいたデヴィット・ファーニッシュさんと2014年に結婚した。

 フィギュアスケーターの村主章枝さんは2016年6月にテレビ番組でバイセクシュアルであることをカミングアウトした。
 その番組や発言内容には、
「なんでみんな男女にこだわるのかな? 性別はこだわらない」

 宇多田ヒカルさんはインスタグラムで、ぬいぐるみのクマをゲイだと紹介したあとで、自分のことをノンバイナリーと語った。「ノンバイナリー」とは、性自認が男性でも女性でもなく、どちらかの枠組みに自分を当てはめないことを意味する。

 アセクシュアルは、他者に対して性的な感情を抱かないセクシュアリティ。
 それはまだ、運命の人が現れていないからではないのか?
 などと言われたりするのに、うんざりしているらしい。
 https://diamond.jp/articles/-/275630?page=3

✳︎✳︎

 聖書は同性愛を不品行な性的罪として禁止している。同性同士の性行為を汚れた罪と書いてあり、同性愛への願望や行動を恥ずべき、不自然な、罪と書いてある。
 同性愛者達は義ではなく、神の国を受け継ぐ事はない。同性愛の行動や願望が聖書で罪とされている事から、同性同士の結婚も神の御心に反するので罪である。

 キリスト教の影響を受けた欧米諸国では伝統的に、同性愛は聖書において指弾される性的逸脱であり、宗教上の罪としてきた。

 一方、近年の欧米諸国においては、
「同性愛も異性愛と同様に生まれつきの性的指向であり、不当な扱いをされるべきではない」
との認識が広まっている。ただ、欧米諸国においても同性愛に対して、宗教的観点、道徳、倫理を主張する立場から問題とする意見も有力である。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/キリスト教と同性愛

 少し前まで、同性愛は医学界でも精神的な病気であると認識されていた。
 過去には、手術やホルモン注射をしたり、電気ショックによる嫌悪療法などの「治す」試みが実際に行われていた。
 しかしそうした治療はほとんどが失敗に終わり、「同性愛は病気や精神障害ではない」という結論を得ることになる。

 一方で、同性愛は幼児期の体験や心の傷、異性からの暴力によってなるのだとか、思春期特有の同性への憧れだということを言う人もいる。たしかに、そういう場合も全くないとは言い切れない。
 しかし、これは「人間は本来、異性に惹かれるものだ」という考えが前提にある。生物は本能的に雌雄がペアになるものだという考えだ。
 人を好きになるという人間の心理は、もっと自然で、生物学的な本能(種の保存)だけで説明できない面を多く持っている。
 
 もちろん、自然に恋をするといっても同性愛などにはまだまだ偏見が強く、学校でもおかしなものではないと教えてくれる機会はほぼないので、希望が持てず将来を悲観したり、当事者自身が自分を異常だと思いこんで「普通になりたい」と願っていることもある。
 けれどもこれらは病気ではないために、治す方法はない。治せないものを無理に治そうとし続けることは、激しいストレスと共に自己嫌悪・自己否定を強くさせる。
 異性愛者も同性愛者も共に生き、お互いの存在を受け入れていける社会になることが、何よりも大事なことなのではないだろうか。
http://gochamazetamago.main.jp/study/faq2/

 
 
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