第12話 小説からの引用

文字数 784文字

 シャーロック・ホームズは少年向けを読んでしまうともったいない。ホームズのイメージが全然違う。
 引用したのはプライオリスクール。

「私がまだ非常に若かった時のことだ。ホームズ君。私は生涯に1度しか経験したことのない恋愛をした……
 彼を見ていると愛おしい彼女のあらゆる仕草が私の記憶に蘇ってきた」

 これは筋書きにぴったりだった。著作権は切れているな。

 乱歩の小説の中の同性愛者……
 中学生の頃、江戸川乱歩を読んだ。文庫本で次から次に。その中の1冊。長編の『孤島の鬼』に出てくる医者、諸戸道雄。同性を愛してしまった青年……
 心を鷲掴みにされ、恋焦がれて痩せた。ほんと。何度も読み返し布団の中で泣いた。なんだったんだろう? あれは?
 探偵小説、江戸川乱歩の突拍子もない物語の中の……主人公を恋する一途な男。ネットで検索すると同じような方が。ラストの1行で胸がいっぱい、諸戸はとても魅力的だなぁ、と。

 タッチの漫画の中にこの本の背表紙が出てきた。本屋か図書館か忘れたけど、ふたりで同時に取り合うの。タッチの作者にも思い入れのある作品だったのか?

 あれほど読み返した本はない。

 『ベニスに死す』という映画を観た。10回以上観た。10代の頃、高田馬場の早稲田松竹という名画座、その他の映画館で。どこかで上映していれば観に行った。当時は2本立て300円。
『午後の曳航』はそのうちの1本。三島由紀夫原作のアメリカ映画。
 これは友人と観に行ったが、恥ずかしかった。しかしすぐに原作を買い読んだ。感化されやすいのだ。
 三島由紀夫は初めて読んだが、これは読みやすかった。

 最後はママの恋人に睡眠薬入りの紅茶を飲ませ眠らせ、少年4人が解剖する……前で終わる。小説も映画も。
 昭和43年の解説にある。読者は、こんな13歳の少年など現実に存在しないことを知っている。

 時代は移り、事実は小説より奇。


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