第93話 体にガタがきた

文字数 1,282文字

 新年から調子が悪い。腰痛がようやく少し和らぎ、普通の痛みになってきた。くしゃみをしてもそれほど響かず、痛み止めを飲まなくても我慢できる。
 仕事は、入浴介助ははずしてくれた。その変わり足浴を。足浴の中腰が原因で腰痛になったのです、とは言えず……
 おまけに月1度の体重測定の日。それを任された。エレベーターで体重計を取りにいく。車椅子ごと乗せる大きなものだ。重い。車は付いているが、慣れない身には難しい。大きなエレベーターでなければ入らない。腰に負担がかからないようにゆっくり運ぶ。

 20人の体重を計る。台の前の10センチくらいのスロープを車椅子を持ち上げる。やったことがないので慣れるまで力が入る。そのあと車椅子だけを計る。腰を庇う身には大変だった。
 その日は別の階でコロナ感染者が9人も出ていたので慌ただしかった。末端まで情報はこない。ゾーニングとか、着替えもエレベーターも別だが。挨拶も声を出さず会釈だけとか。しかし、ユニットでは大声を出さねば聞こえない。
 救急搬送のアナウンスも流れた。事務所には電話も多かった。
 
 午後、ゴロゴロしていたら足が()った。よくある事だ。夜中明け方、日常茶飯事。これが、ゴロゴロの昼間は脛側が攣るのだ。わっ! 来た! 勘弁して……猛烈に痛い。力を入れても、抜いても痛い。それが長い。
 だから薬はもらってある。漢方薬の芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

 這ってでも取りに行かねばこの痛みは続く。這ってキッチンに行き水で流し込む。這って、ホットカーペットの上に戻る。
 すると、痛みはみるみる消えた。速攻……そんなバカな? 攣ったのは夢の中でか? 寝てたかどうかもわからない。
 調べたら、『飲むとすぐに効果が出る……』

 夜中、明け方、胃が痛くなることが多くなった。食べていないようで食べすぎているのだろう。もう、普通に(?)食べたら太るし、胃もたれが……
 起き出してキャベジンを飲むと、速攻治る。そんなバカな? 痛かったのは、夢だったのか? と思うことが何度も。

 飲めばすぐに治る。これは気持ちの問題か? 施設に入居している方に出す偽薬のように効く。頻繁に頭痛を訴えるので、ラムネを薬の袋に入れておき飲ませる。これが効くらしい。

 足も胃も、年齢が上がるにつれて発症の頻度が増してくる。

 歩きに行かなきゃ。ゴルフのレッスンもひと月も休んでいる。これはレッスン代はもったいないがまあいい。去年、出産の手伝いでひと月休んだら上達していた? コーチに、「他でやってた?」と聞かれるくらい癖が取れてうまく打てた。ラウンドも寒いから行かないし。
 早く通常のペースに戻りたい。普通であることがどんなにいいか。普通である状態が減っていく。
 やがて訪れるのだろうか? 膝が痛いとか、転んで骨折。そして車椅子……
 歩かなきゃ!

 入居者さんがいつも、本を見ている。童話だ。95歳になる。白内障で片目を失明した。メガネも合ってはいないだろう。習慣なのか本を読んでいる。
「なにか読むものない?」
が口癖だ。
 よほど読書家だったのだろうか?

 幸い、まだ本も携帯も読むのに不自由はないが。
 
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