第75話 遺伝ですから

文字数 950文字

 夫が毎月歯医者に行く。えらいと思う。毎月1度の検診と歯石とりをここ数年欠かさない。こうなるまでにはいろいろあった。

 物心ついた頃から歯が痛かった。反対咬合で噛み合わせが悪かった。知り合って結婚した時には諦めていた。40歳くらいで入れ歯になると。そのほうが楽だ。
「おう、洗っておけ」
妻に洗わせるつもりだった。

 歯に関する本をよく買ってきた。歯医者で勧められれば電動歯ブラシ、高い歯磨き粉もいろいろ買ってきた。
 しっかり磨かねば、という気持ちはあるのだが、酒を飲めば磨かずに寝てしまう。朝起きて反省。
 歯医者も遠のく。歯茎が腫れて痛くなれば、また違う歯医者に。そんなことの繰り返し。

 数年前に近所のかかりつけ内科のそばに歯科医ができた。そこに変えてから毎月予約を入れてくる。治療時間は短い。歯石とりを上下順番に。 
 予防は大事だ。早くに抜けると覚悟していた歯で、まだしっかり噛めている。食事を楽しんでいる。子供たちが来れば自慢して、歯医者に行け、と勧めている。

 お口の中は人それぞれ。生まれ持ったものもある。父は、50歳前に入れ歯だった。母はタバコを吸っていたが、歯は丈夫だった。長女は学校では表彰された。今でも歯医者に行けば褒められるが……3歳の孫が……
 
 先天性欠損歯(歯の数が生まれつき足りない)
 かなりショックを受けていた。10人に1人くらいいるらしい。
 
 次女は歯科検診で言われた。
 反対咬合です。遺伝ですね。治りません。
 小学校に入った頃から矯正を。ヘッドギアで矯正?
 ショックを受けて調べた。かかる金額。そんな金は……

 遺伝ですね。治りません……
 次女の友人も反対咬合だった。彼女の母は自然に任せた。

 私は調べて食べさせた。硬いもの。フランスパンに焼いたスルメ。とにかくおやつは硬いもの。なんだか、みんなで食べてたな。

 遺伝です。治りません……
 治りましたよ。きれいな歯並びになりましたが……
 親の執念で治しました。

 検索してみた。
 乳歯のときに反対咬合でも永久歯に生え変わる時に治るケースは、ままあります。
 
 次女は、歯に敏感だ。上の前歯の隙間が空いてきたと悩んでいる。言われなければ気が付かない。歯医者に相談したら、削って被せるのは勿体ないと言われたそうだ。良心的な歯医者だと思う。

 
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