第23話 殴らせるために嫁にやったんじゃない

文字数 767文字

 父の古くからの友人がマンションを買って近くに越してきた。40年近く前のこと。私の母は50歳で亡くなり、父は酒浸りだった。友人は奥様と仲が良く、息子さんと娘さんがひとりずつ。奥さんは私に母がいないのを不憫に思い、出産前後よく来てくださった。人のいい世話好きな元気な方だ。
 ご自分の子供たちはそれぞれ結婚してすぐに別れた。娘さんの旦那は暴力を振るったらしい。おとうさんが怒った。
「殴らせるために嫁にやったんじゃない」

 妻を殴る……女を殴る……よくあることらしい。経験はあるが。噛み付いてやったが。

 知り合いは旦那のことを『ドメオ』と呼んでいた。優しい旦那様に見えた。出かける時は車で送り迎え。私も乗せていただいたことがある。奥様に心底惚れていた……感じ。なのに時々暴力が。知り合いは私が知る限り最強の性格。負けてはいない。「殺せ、殺せ」と叫ぶそうだ。そして子供たちが集まり『ドメオ』は怒られる。孫にもひどいジジイだと思われる。そんなことを隠しもしないで話してくれたので、悲愴感はなかった。喜劇のようだった。勇ましかった。
 暴力のあとは、預金を奥様名義に移してくれた、とか。働き者だった。自分の死後、妻が困らないように貯金をしていた。

 ○の高校からの友人が、同棲していた男に殴られた。○は相談にのっていた。顔のあざを見て憤慨し、それを母にも話した。男はそのあとは謝るらしい。中絶もしたと聞き○はまた怒った。
 ある日、○は取ったばかりの車の免許でトラックを借り、男が仕事中に友人を脱出させ、自分の住まいにかくまった(?)
 ○も彼氏と同棲中。1LDKのリビングに友人は寝泊まりした。母は布団を寄付させられた。ひと月後に友人はアパートを借り仕事も見つけ頑張っている。○の結婚の時には多過ぎるお祝いをいただき、引っ越しの時はよく動いてくれた。

 

 
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