第136話 お時給

文字数 1,704文字

 今月から、勤めている介護の仕事を減らした。週3日の3時間勤務に。体は楽になったはず……しかし家に帰って、洗濯をして早めの昼食が終わるとすごい睡魔が……ソファから動けない。iPadを見ながら、ときには操作しながら眠りに落ちる。打った文章が消えている! 

 疲れる。歳もあるが。
 今の介護施設、何年経っても人手が足りない。相変わらず常勤は超勤。タフな2年目の女性もついに休んだ。ひとり暮らしなのに遅刻も休みもなかったはずだ。契約社員の女性も休んだ。正社員になりたいと頑張っているフィリピンの女性。しわ寄せは出勤している者に。
 はい、超勤よろしく……

 そしてしわ寄せは私にも。当初、10時までの勤務に、入浴介助があるとは思わなかった。木曜日は、朝食時のパートが私ひとりだから、2ユニットの配膳、洗い物、米研ぎ。その間にシーツ交換2床。それから足浴、入浴、浴室掃除、記録。
 
 今日は常勤の女性が朝礼だったから、戻るまで私にリビングの見守りを頼んだ。待っていたら、9時20分ですけど。それから入浴させて掃除して10時までに終わると思うか? 
 ああ、この職員はパートの勤務時間を把握していない。食事形態さえ、パートにお任せで把握していない。ソフト食に変わった人に刻みを出していた。パン粥にしなければならないのに、食パンにジャムを塗って出していた。

 この職員は時間ギリギリに出勤してくる。他の職員の出勤は早い。時間前に来て日誌を読み、iPadを確認し、もう離床させている。そうしなければ終わらないのだろう。この職員は配膳はほとんどパート任せだ。

 9時半出勤の最近入ったパートの女性はシングルマザー。福利厚生のために週3日7時間勤務。自分になにかあったら遺族年金が子供に入るように……私にペラペラ喋る。しかし、保育園児がいる母親はよく休む。予定を組めないほど休む。だから来てくれたら(・・・・)入浴介助を。来てくれたら(・・・・)ラッキー。午後の常勤の入浴介助はなくなる。
 ああ、ありがたや……
 この女性は私に愚痴を言う。✳︎✳︎職員が口を利いてくれない、と。休みの多いことに腹を立てているのだろう。自分は超勤、腰も痛いし腕も痛い。新人には厳しい方だ。でも面と向かって不満を言えない。
 シングルマザーには生活がかかっているのだ。お金のことより、1年は働かなければ資格が取れないのだとか。居辛くても頑張れ! 

 入浴終えれば週1勤務の中国の男性が来ていた。10時からの8時間勤務。なのに、入浴介助はさせない。乱暴で任せられないからと。1年以上経つのに。資格もあるのに。あなたが3人入れてくれたなら、私の入浴介助はなくなるのに。隣のユニットの配膳も覚えて欲しいのに、
「ボク、できない……」
 それで済んでいるのだ。1年以上。✳︎✳︎職員は言う。
「クソの役にもたたない」と。
 男性は私に言う。
「ボク、あのひとこわい……」

 ここは、やる人がやる職場。やらなくても済む職場。影では文句を言ってるが、本人には言わない。別にいい。私は3時間忙しく働いて、何も考える時間もないほど、トイレ行く暇もないほど働いて帰るほうがいい。

 言いたいけどね。私は資格なしだからあなたたちより時給が安いのよ。ボーナスもないの。勤続年数表彰で金一封が出る頃だけれど、私は除外なのよ。開設当初からいるのだけど、勤務時間が短いから。密度は高いけどね。
 夫に愚痴を言えば、年寄りを働かせてもらってありがたく思え、と。

 男性のリーダーから勤務時間短くなってどうですか? と聞かれた。ねぎらってくれるのかと思ったら、
「お風呂ふたりは無理ですか?」
……本気で言っているのか?
 自分で入れろよ。

 前のリーダーは、10時までで入浴介助があると恐縮していた。掃除は間に合わなければやらなくていいですから、と。そう言われれば、時間が過ぎてもやっていくのだ。
 開設当初はパートは私ひとりだった。何人かいたはずだがすぐにいなくなった。私は最初は周辺業務だったから、常勤がシーツ交換も入浴介助も午前中やっていた。私は見守りを。それも大変だったが。常勤の男性は汗を吹き出し動いていた。
 どこでどうしているのやら?

 






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