第35話 家事分担

文字数 1,223文字

 共働き夫婦の家事分担は、妻が9割というのが多いようだ。私がパートに出る条件も、家事の手を抜かないことだった。ブティックに勤めていた頃は週3日だが、帰りは7時半。朝、掃除機をかけ、夕飯の支度をし、帰るとトイレも着替えもせずに台所に立った。土日に仕事が入ることが続くと、夫は『仕事を辞めろ』と言った。真剣に言った。店長にその旨話すと、当時素直で気に入られていた私は融通を利かせてもらうようになった。他のスタッフは面白くないだろう。
 たまに顔を出す社長には○○さんは旦那さんに愛されているんだなあ、と皮肉(?)を言われた。他のスタッフは旦那が家にいる時は仕事に出たいらしい。
 店長はすぐに忘れ、また日曜にも仕事が入るようになった。14年続けた仕事だ。そういう日は夜待ち合わせをして外食をするようになった。帰ると洗濯ものがたたんである。やれば私よりきれいにたたむのだ。

 息子の家に来て6日が過ぎた。お嫁さんは東京の病院で出産した。明後日退院する。息子と小学校1年の孫に、おいしいものでも作って食べさせてやれ……夫が言った。私もそのつもりで来たが、釣り船に乗っている息子は魚を持って帰ってくる。連日台所に長い時間立ち調理してくれる。昨日はマグロの唐揚げに、小アジの骨、ししとう、とうもろこしを少量の油で揚げた。手際がいい。とうもろこしは丸ごとレンジで加熱し、小さく切って揚げた。初めて食べたがおいしかった。残しては悪いと思い食べてしまう。太って帰ることになりそうだ。
 夫にメールしたら、『私はろくなものを食べていない』と返ってきた。
 洗濯は教えてきた。掃除機の充電器、コロコロクリーナー、ダスキンは出してきた。ベランダの植物の水やりもやってくれているようだが、長引けば怒り出すのではないか?

 息子は朝3時半に起き、4時半には出て行く。私は眠れない時間なので起きて朝飯のおにぎりを作り持たせるが、普段は自分でやっている。午後も船が出る時は弁当も詰めていく。共働きのお嫁さんに起きてやれ、とは言えないだろう。
 息子は帰るとすぐに着ていたものを洗濯する。休みには掛け布団のカバーをはずし洗っていた。仕事の前にはゴミを出す。風呂は1年生の孫が毎日洗っている。夕食の後は、無線の試験の勉強をしながら孫に平仮名を書かせていた。ちょこれーと、ゆーちゅーぶ、ゆなちゃん(赤ちゃんの名前)等々。
  
 長女はこの息子が実家に来た時に、オムツを変え着替えをさせ、こまめに動くのを見ていた。だから自分の夫もそうなると思っていたようだ。何度も喧嘩をした。
 比べてはいけない。おまえの旦那様も料理が上手になったではないか。チャーシューと煮卵は集まる時にはお願いする。
 次女の家での初節句。うちの夫はケーキの飾りを工夫していた。厚紙とアルミホイルを重ね兜を折った。携帯を見ながら。それを竹串に付けてシフォンケーキに刺した。拍手喝采かと思いきや……次女は兜の形の春巻きを揚げていた。
 



 


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