第25話 借金

文字数 1,085文字

 ブティックで働いていた頃、朝1番でいらっしゃる客がいた。時々はミーティング中にドアを叩く。いいお客様だから時間前だが中に入れコーヒーを出す。
 朝1番でパチンコで5万円スッてきた……
 前回の宝飾のイベントで高額商品を買っていただいたが、クレジットが通るまで大変だった。社長が信販会社にお願いしてなんとか通した。
 パチンコをする金はあるのに、水道を止められたとか、すごい会話をしていた。店に出入りしていたのは短い間だ。最後に店長に借金を申し込んだ。金がない、と断ると、
「クレジットカード持ってるでしょ? キャッシングして貸してよ……」
それを断ると客は来なくなった。おそらく宝石も金に変えてしまったのだろう。

 クレジットカード。うまく使えば重宝だ。数年前、光熱費その他をクレジットカードから落ちるようにした。ポイントが貯まる。年に百万円使うと更に1万円分のボーナスポイントが付く。

 ○は勤めると会社のクレジットカードを作らされた。給料を全部使い、母に前借りする娘がカードを持つと恐ろしいことに……
 宮部みゆきさんの『火車』という小説がある。クレジットによる借金で自己破産。恐ろしい借金。しかし、○には母がいた。
 母は尻拭いをすべきではなかった。払えなければ信用をなくすが、カードは使えなくなる。遅れても返済すれば何事もなかったように復活する。そして限度額は上がっていく。

 △は派遣で、カードローン返済の督促の仕事をしていた。短期間だ。短期間なのに偶然だった。電話したのは近所のご主人。残高が100万ほどあった。守秘義務も守られない……
 奥様は知っているのだろうか? 余計なお世話だろうが、会うたび思う。返済し終わっただろうか?

 ブティックに長年リボ払いで買っていた客がいた。いつも限度額はいっぱいだ。過払い請求すればかなり戻るのではないだろうか? しかし、高齢だ。生きている間に返済し終わるのだろうか?

 知り合いの話だ。旦那様は亡くなり、私も雑事に追われ行き来も少なくなっていた。ある年、年賀状がこなかった。電話も通じない。マンションの表札はなくなっていた。こちらも3人の子供達に翻弄され、極め付けは父の認知症であたふたしていた。
 ある日電話がきた。息子さんが仕事に失敗し借金……
 知り合いは住んでいたマンションを売り、できるだけのことをした。アパートを借り、都営住宅に入ることができようやく落ち着いた、と。何もできなかった私は謝り、会いに行った。息子さんは行方不明。おそらくタイにでも行ったのだろう、と。
 息子さんからは連絡がない。死ぬまで会えないだろうと諦めている。

 
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