第91話 海

文字数 960文字

 昨日は孫たちが来たので疲れていた。嬉しいが疲れる。内心では、早く帰れば……と思ってしまう。おじいちゃんはいい。嬉しくて、酒を飲んで、すぐに気持ちよく寝てしまうから。

 いつもは夜中に何度も目が覚め携帯を見るのだが、最初の目覚めが4時半だった。久々の熟睡だが、リビングのテレビはすでについていた。
「津波だよ。日本全国津波が来る」

 なに言ってんの? 
 そう言えばトンガの噴火がどうのって……
 それからが大変だった。息子の住んでいる地域は避難警報が出ている。家は海辺の古い一軒家。4ヶ月前、3週間滞在してきた。道路を渡り階段を降りれば海岸だ。岸壁は何メートル? おまけに息子は船に乗っている。通常ならもうすぐ船は出る。
 すぐにメールした。すぐに返ってきた。
「たいしたことないから通常通りだよ。津波自体は沖にいる方が安心」
 あんたじゃないの。お嫁さんと、ふたりの子供、7歳と、まだ4ヶ月の赤ちゃん。お嫁さんにメールをすると、
「今のところ避難してないです。いつでも出られる準備はしています。船は出たみたいです。夜中警報が凄くて眠れず眠いんですが、今後の事考えるとおちおち眠れないし、色々不安です」

 本来ならば、お宮参りとお食い初めのお祝いで、私たちも昨日行っているはずだった。コロナが急激に増えたので親子だけでやることになったのだ。行って泊まっていたら……
 避難場所が孫の通っている小学校なので少し安心した。しかし、船が出るなんて……釣り船である。釣り人は船が出ると思って行ったのだろうか? 東日本大震災の時は、ずっと港に帰れなかったという。燃料がなくなったらどうなるのだ?

 次女の旦那さんも、海に行くはずだった。こちらはサーフィンだ。これも、子供が生まれてからは喧嘩の原因。仕事がキツくとも休みの日には海に行きたい。海のそばに住みたいくらいだ。
 車に乗り、テレビをかけ津波のニュースを知った。こちらは行くのをやめたが。

 生きている間に、まだまだいろいろなことがありそうだ。災害、事件、事故、感染症。
 施設から連絡があった。2階で9人が陽性だと。職員4名と入居者5名。これで止まってくれればいいが。

『プライベートのお時間のことは強制できませんが、感染力が強い状況にあります。どうか、適切なご判断をして行動されることを願っています』
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