第37話 雌雄同体の軟体動物

文字数 867文字

 不快害虫が出てきます。苦手な方ばかりですね。

 海辺の家に来ている。古い一軒家だ。湿度が高い。
 虫が出るのは当たり前。覚悟していた。虫好きの長男を育てたのだ。カマキリをつかんだ時には子供たちに尊敬された。
  
 蚊、蜘蛛はいるだろう。殺虫剤がそこらじゅうに置いてある。窓を開ければ網戸にスプレーする。前日にはゴキさん用のホウ酸団子を家中に置いた。
 しかし……だから出てきた。弱って痩せ細ったのが1匹。息子は留守だった。孫が騒ぎ自分でスプレーをかけた。親の仇を相手にするように。顔つきも言葉も変わった。そして動かなくなったのを2枚だけのティッシュでつかみ、手でつぶそうとした。
 つぶすのはやめて。何枚ものティッシュでぐるぐる巻にして捨てた。

 次に出たのは……孫にも初めてのことらしい。リビングのフローリングの床の上を茶色い毛虫が這っていた。孫は手が出なかった。私はそっとティッシュでつかみ、外に出て逃した。つぶすのは嫌だ。
 次女が子供の頃、虫を捕まえると、殺さないで、殺さないで、と叫んだ。優しいのか、必ず言った。そのくせ、次女夫婦は揃って虫が苦手なのだ。1歳の孫が外で、ミミズをつかんでいた……まだ、気持ち悪いともわからない男の子だ。この先大丈夫か?
 そういえば長女の孫が言っていた。パパはトングでゴキさんをつかんだ、と。この孫もこの間までゴキさんを見ると、カブトムシだと思いさわろうとした……

 毛虫、ゴキさん、なんでも来い。しかし……
 風呂場に出た。体を洗っていたら排水溝のそばに……私は目が悪い。近くで見たら、小さな○○○○さん。それだけは勘弁して。
 シャワーで追いやろうとしても排水溝に流れてくれない。桶に両足を乗せて頭を洗った。浴槽に入って排水溝に追いやろうとした。数分の格闘ののちの勝利。

 翌朝、息子に言うと、棚の上の塩をかけるんだそう。きれいなボトルに入っているのはバスソルトだと思っていた。
 浴槽の水を抜いたら栓をしておかないといけない。排水溝は桶をかぶせて暗くしておかないと。
 まだ、当分こちらに滞在する。研究せねば。
 
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