第84話 年末年始は……

文字数 1,376文字

 年末の慌ただしさは嫌だ。先週、女だけでクリスマス会をしたのに、昨日また来た。次女はみかんを、長女はきんつばを届けに来る、と。夫があとで取りに行くのに……孫たちが来てくれるのは嬉しいが。娘たちは寒い冬に大掃除などしない。

 結婚して最初の正月。妊娠してつわりがあったので買い物はほとんど夫に任せた。買い方は豪快だ。ふたりなのに大量買い。正月明けには大量に捨てることに。それは……最近まで続いた。

 屠蘇器と重箱のセット。40年前、夫は4段の立派なものを買ってきた。中身を埋めるのは大変だ。そして埋めたものは残る。残りは廃棄される。いつのまにか立派な重箱セットは正月のインテリアに。
 1度やってみたい。何も作らない、何も買わない。夫の大好きなカップラーメンで過ごす正月……私はパンと紅茶だけで……浮いたお金は山分けで。

 施設のスタッフが器用で、毎年干支の置物を折り紙で作ってくれる。ずっと折り紙を習っている。出来栄えは素晴らしい。紙とは思えない海老のお飾り。それにビーズ。いろいろいただいた。アクセサリーにマスコット。作品は増えていく。

 慌ただしいが、年末が来ないと換気扇は掃除しない。数年前キッチンをリフォームした。換気扇は奮発し掃除の楽なものにした。簡単に外せる小さなファン。揚げ物などほとんどしない老夫婦だ。汚れはひどくはない。それを時々食洗機に入れればいいものを。なぜ1年間やらないのだ? そして、付け置き洗いが必要に。掃除した時はきれいを保とうとは思うのだが。
 乾物類が廃棄される。使わない香辛料。何年前からあるだろうか? 思い切って捨てよう。オレガノ、オールスパイス、シナモンも滅多に使わなくなった。

 作るものは、栗きんとん。暮れになると冷凍の裏漉ししたさつまいもが出回るので買っておく。作り方は袋の裏側に印刷してある。簡単だ。水飴は省略するがおいしくできる。
 煮なますは鈴木登紀子さんのレシピ。20年も前に作ったら、初詣に行っている間に、娘が友人と鍋半分平らげていた。たいそうおいしかったらしい。
 材料はヘルシーだ。切り干し大根、しいたけ、にんじん、蓮根、しらたき、牛蒡、油揚げ、すべて千切りにして炒め調味し、最後に酢を入れる。翌年から材料を倍にしたら味がボケた。最初の感激したおいしさにはできない。それでもこれは女には人気がある。年始早々のダイエット料理。

 煮物はいっとき、分けて煮ていた。濃い味のものと薄味のもの。ある年に、焼き豆腐とがんもどきをレシピを見て煮てみた。絶対食べ残されると思ったら……夫がうまいうまいと食べた。何がヒットするかはわからない。
 最近の煮物は鶏肉を入れひとつの鍋で。このときだけは奮発して、どんこ(干し椎茸)を使う。それに太く切ったきんぴらごぽう。子供の頃、母はそれをタラコで和えていた。父がどこかの家でご馳走になり気に入った。よその家の味を私も姉も引き継いだ。薄味のきんぴらをタラコで和える。

 あとは作っても誰にも食べてもらえない八頭(やつがしら)の煮物。食べるのは私だけ。これも母は甘く煮ていた。白く丁寧に煮る。正月から私はひとりで朝晩芋を食べる。

 年末慌ただしくお節料理を作るのは、正月に主婦が休むためではないのか? お節があっても夫は言う。
「何かおいしいものないの?」
そして言う。
「たまには、おいしいものを食べたい……」
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