第72話 give & take

文字数 1,146文字

 今日、書店に行って5月25日発売の(『ハイパーミディ中島ハルコ④』林真理子先生原作 東村アキコ先生作画)を買ってきてソッコー読んだ。結論から言うと大変面白かった。特にラストの終わり方が良かった。作中の序盤で、自分が受ける相談を有料に出来ないかと話を持ち掛ける中島ハルコ。それに対して“年の離れた妹分”である、いづみは次のように応じる。

「傍若無人なハルコさんの唯一のやさしさが
これなんです!!
人の相談に乗ってあげるってやさしさです!!
その唯一のやさしさである
お悩み相談でお金取ったら
唯一のやさしさが
商売になっちゃって
やさしさじゃ
なくなっちゃいます!!」

 実はこの箇所が④巻全体を通じた伏線になっている。
後半で今度はいづみ自身が熊咲産業の庶子である熊咲雄介との結婚をめぐってハルコに相談を持ち掛ける。ハルコの意表を突くアドヴァイスの結果、二人はめでたく結婚に漕ぎつける。それは二人にとってはめでたし、めでたしなのだが、1つ私には気がかりがあった。いづみが雄介と結婚してしまったら、中島ハルコ自身は「ヒマ」になってしまうのではないか?ここで私の言うところの「ヒマ」とは言い方を変えれば「孤独」に他ならない。自分の妹分が幸せに結婚して家庭を持つのは喜ぶべきことだ。でも同時にそれはハルコが「ヒマ」若しくは「孤独」になる事を示唆してもいる。傍若無人で歯に衣着せぬ物言い、キオスクでは堂々と立ち読みする自分勝手さ。でも不思議と人には嫌われない。そんなハルコに私は知らず知らずのうちに肩入れしていたのだ。でも私の心配は杞憂に終わる。
最後のシーン。ブーケトスを横目で見やるいづみの大学時代の友人。聞けば旦那と別居中との事。我らが中島ハルコは

「ワケありね
悩みごとなら
聞いてあげるわよ」
あなた 本当に
ツイてるわよ」
と、最後のセリフを決める。
人生には出会いと別れがある。別れではなくとも、環境が変われば自ずと疎遠になる。それは致し方ない事だ。でもきっとまた新しい出会いもある。与えたり与えられたりしながら人は寂しさを埋め合わせて生きていくのだ。だからこそいづみは巻の序盤で

お悩み相談でお金取ったら
唯一のやさしさが
商売になっちゃって
やさしさじゃ
なくなっちゃいます!!」

 とハルコをいさめたのだと思う。無論ハルコの方もそんなこと百も承知でポーズをとっていたのだと思うのだが・・・。
 
 今まで述べてきたようなことが物語中に説教臭く描かれているわけでは決してない。でもあくまで、あくまでほのかにそんなことを感じさせる構成になっていたのは林先生の筆力か?それとも東村先生の画力か?はたまた担当編集者さんの力か?
 いずれにせよ『ハイパーミディ中島ハルコ①~④』大変面白かったです。
 林先生、東村先生、有難うございました!!!

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