第86話 ダイナミズム

文字数 1,040文字

 友人に言わせると私にトークの才は無いらしい。友人が畳みかけて言うには「貴方は一般論をさもありがたみがあるようにデコレイトして述べる。笑止な限りだ」と。「それはちょっと違う」と私は思う。一般論の背後にある“仕組み”を解き明かす事は非常にダイナミズムに富む。それがどんなに単純な命題であったとしてもだ。

 どういう事か?「リンゴが木から落ちたことに着想を得た」という話が嘘か誠かはさておき、ロバート・フックのもしくはニュートンの発見したグラビティー(引力)は現代からすれば当たり前の事かも知れない。しかし話はそんなに単純ではい。そこに至る過程としてケプラーによる天体の運動法則、つまり
「惑星は太陽を焦点とした“楕円軌道”を描く」
事は解っていた。当時の自然科学者たちはそこに
「慣性の法則」
(ガリレイたちが作り上げてきた、外力が働かなければ地上の物体は等速“直線運動”をつづけるとする法則)
をあてはめて考えた場合“矛盾”が生じることに気づいていた。この“矛盾”を整合する上でフックが“考え出した世界の仕組み”が「グラヴィティー」
(全ての天体は引力によってその各部分を中心に引きつけているだけでなく、天体間で相互に引き付けあって運動する)
の概念である。
 そしてフックの提示した概念に着想を得て、それを数学的に証明したのがニュートンなのである。(ウィキペディアより)
アリストテレスに始まり、中世の概念、天動説と地動説の対立、等々の歴史を経て、直接的にはロバート・フックがたどり着いた「惑星は太陽を焦点とした楕円軌道を描く」事と「慣性の法則」との矛盾から「引力」と言う概念は成立に至るのである。なんとダイナミズムに富む事か!
で、何が言いたいかと言うと、私こと長谷川が綴っているこの文章は、フックのもしくはニュートンの考えたことに比べれば矮小な事甚だしい。ただ、“一般論の背後にある仕組みを解き明かすダイナミズム”を書いている当人は感じているのである。その辺、友人は理解していないはずないのだが・・・と思いながらキーボードをたたいていたら彼からラインが来た。
「やっぱり、長谷川の話は滑らないよ。」
「爆笑」
私が
「まあな!」
と返すと
「滑りまくり。一般論、虎の威を借る狐」
「愉快」
と返ってきた。
どうやら若干嫉妬交じりの憎まれ口だという事は向こうも自覚していたらしい。付き合いが長くなると気心も知れてくる。悪くない関係だ。もっとも一般論はともかく、私のトーク自体はどうやら滑るらしい。気を付けよう。(笑)
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