第288話 愛と嫉妬

文字数 1,526文字

「みんな、いきなりだけど堕天使ルシファーって知ってる?」

「何それ知らない。」

「うん、結論から言うと悪魔の事なんだよね。別名サタン。悪魔つまりサタンのもとの名前が大天使ルシファーなんだ。何故、大天使が悪魔になってしまったか?かいつまんで話すね。ルシファーは元々は神の横に立つ事を許された最も強く美しい大天使だったんだ。ところがある理由で彼は神に背き、全天使の三分の一を率いて神に挑んだ。結果、神の軍勢に敗れたルシファーは地上へと堕とされる。ここから来ているのが堕ちた天使、つまり堕天使ルシファー。そしてルシファーは悪魔、サタンと呼ばれるようになる。色々な物語の中で出てくる悪魔ってのはこのルシファーの事なんだよ。」

「何故、神に背いたの?」

「うん、そこで出てくるのがアダムとイブのアダム。神はルシファーに「アダムに“拝せよ”。」つまり仕えよ、と命じたんだ。それにルシファーは腹を立てたんだ。」

「何故腹を立てたの?」

「うん、これは先生の私見だけど、実はこれは愛と嫉妬の物語ではないかとみている。」

「愛と嫉妬?」

「つまり、最も強く美しい天使であるルシファーを神は愛していたんだと思うんだよ。その神が自分に似せて作った人間アダムを拝みなさいと言うのがルシファーには面白くなかったんだろうね。神の人間への愛情が面白くなかったんだ。つまりルシファーも神を愛するがゆえに、人間に嫉妬したんだと先生は解釈している。」

「天使も嫉妬するのか。面白いね。」

「そう、面白いんだ。人間でも神(神話)でも煮詰めるとそこには愛と嫉妬が浮かび上がってくる。そういう視点で神話を読んでみると面白い。」

「確かに、ギリシャ神話とかそんなんばっかだよね!」

「何故、そんなの(愛と嫉妬)ばっかなのか?そこは考える価値があると思う。ほとんどの神話や古典と言われる書物や(現代だってそうだろうけど)ドラマは突き詰めると「愛と嫉妬」に収斂する。何故だろう?」

「子孫を残す事と関係してんじゃない?」

「うん、そうなんだよね。愛の反作用として嫉妬がある。そして種を残すために愛情が関わってくるのだとしたら、生物一般にとってこのテーマは必然と言えば必然なんだよね。まさに根源的かつ必然的なテーマと言える。一見当たり前に見えることを紐解いていくとそこにはある種のダイナミズムがある。面白いだろう?」

「なるほど。面白い。でも昆虫例えばハチとか性転換してしまう魚とかもいるから生物全般とは言えないんじゃないかなあ?」

「うん、いい所に気づいたね!確かにハチは女王バチがいて働きバチがいて、人間などとは違った子孫の残し方をするよね。それに魚でも、オスだった個体がメスに変わってしまう種もいる。一概に生物全般とは言えないところがあるよね。んっ、ちょっと待ってよ、みんなは『ハンター&ハンター』(冨樫義博 週刊少年ジャンプ 集英社)は知っている?」

「知ってる、知ってる!」

「あの作者がそこまで踏まえた上で、ハチや昆虫をモチーフとして使っているのだとしたら・・・。彼はやっぱある種の天才だなぁ~。うん、そう考えるとやっぱ彼は凄いや。才能かなぁ?チッ!」

「あ、先生、今舌打ちしたね!それってハンターハンターの作者への嫉妬だよ!」

「あっ一本取られたね。そう先生も嫉妬する。先生も人間だもの(みつを)(笑)」

「そんなわけで今日は【愛と嫉妬】について堕天使ルシファーを例に考えてみたよ。生命のリレーが続いてゆく以上避けられない永遠のテーマかも知れないね。それとも人は機械人間になって永遠の命を手に入れるか?(『銀河鉄道999』松本零士より)。でも限りある命だからこそ人は・・・。おっとそれはまた別のテーマだ!
今日はここまで!
ではまた!
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