第60話 ブランド

文字数 1,530文字

 ブランドと言うものに無頓着だ。全身ブランドで固めている人など見かけると「あれ一体いくら掛かっているんだろう?」と興味本位の視線を向けてしまう。機能とデザインにそうそう変わりがないなら安い方がいいのに。ずっとそう思っていた。でもそういうものでもないらしい。思い当たる節があったので以下に記したい。

 先日、スマホの機種変更を思い立って近くの家電量販店に行ってきた。買ったころはサクサクと小気味よく動いてくれたスマホが最近では調子が悪い。処理速度が追い付かなくてモッサリと重くて仕方ないのだ。そのことを店員さんに告げると、店員さんは早口でまくしたて、あろう事か、通信会社の変更を勧めてきた。現在ガラケーの両親と家族割にするつもりいた私は面食らってしまい、「また来ます。」と言い残して退散した。

 そういえば、かつてドラッグストアに勤めていた頃、花粉症の季節になると「お客さんに聞かれたら必ずこれを勧めるように。」と言われていたある目薬があった。同じような効き目、同じような価格の目薬が多々ある中で何故この目薬?と思っていたら何のことはない。その目薬が一番仕入れ値が安かったのだ。つまりお店にとっては一番儲けがいい。もしかすると家電量販店の店員さんもそれを狙っていたのかもしれない。

 そんな事を後で友人に伝えると友人は「じゃあ、自分で調べるべきだよ。現代は自己責任の時代。何をするにもね!」との事。私は「そうだな!」と納得はしたものの、これが難しい。処理速度が追い付かないのはおそらくCPUのせいなのだろうが、そう簡単にその違いを見極めることはできない。単純に数字の大きい方が性能も良いと言うなら話は簡単だ。でも実際には数字とアルファベットでCPUの名称が示されており、容易には判断できない。困ったな。と言うと友人は「やっぱ最後は人だよ。どれだけその店員さんが信用に値するか?人を見る目を養う必要があるんじゃない?」とのたまう。確かにそれはそうだが、会って数分でその人が信用に値するかどうか?見極めろというのも無理な話だ。そこで「なるほど、最後に頼るのは“ブランド”なんだな。」という結論に友人と私は落ち着いた。細かい事、詳しい事は解らないが、あのブランドの製品なら間違いは無いだろう!そう信頼させる力をブランド力と言うのだ。ちなみにその友人はパソコン・タブレット・携帯すべてアップル社製を使っている。ブランドに信頼を置いているというのも勿論あるし、端末を全て同じブランドで統一する事で統合のメリットが生じる、つまり使い勝手が良いとの事。ブランドって奴も馬鹿に出来ないんだな。と感心した。これまでブランドなるものに少なからず懐疑的だった私は大いに反省した。

 少し話は飛躍するが
「四・五十年も生きていれば自分の顔に責任を持たねばならない。」
と言う話をよく聞く。生き様が顔に現われるというのだ。今までの話で言えばそれが自分と言う”ブランド”なのだろう。別の友人が私の教員時代の写真を見て「長谷川さんて昔はカッコよかったんすね!」とよく言う。「今だって悪くないだろ。」と言い返すのだがその友人は笑って応じない。ふと鏡を見て見る。この20年で何がどう変わったのか?定かではない。ただ、人間味に深みが増した。と自分では思っている(笑)

 まあ、顔は良いとして、少なくともこの文章が長谷川漣と言うブランドイメージを形作っているのは確かだ。下手なことは書けないな。と思う。それを踏まえた上で最後に再確認しておきたい。前にも述べたが毒にも薬にもならないような文章なら、はなから書く必要はない。私こと長谷川漣の書く文章はいわば劇薬だ。ブランドイメージは「劇薬」。そういうのも悪くない(笑)
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