第354話 背伸び

文字数 1,108文字

 私事で恐縮だが、高校サッカーのテレビ中継を見ていると自分がサッカーをやっていた頃の事を思い出す。当時成人用のサッカーシューズは大方23.5㎝からで、まだ足の小さかった私は大人用のシューズを履きたくて、わざと自分の足より若干大きめの23.5㎝のシューズを選んでいた。無論、サッカーシューズは本来少しきつい位のほうが足にフィットしてよい。つま先に空洞ができてしまうようなシューズを履いていたのは、今にして思えば「馬鹿だったなぁ~。」という事になる。また「あの頃は背伸びしたかったんだなぁ~」と自分の事ながら微笑ましくもある。

 そういえば、高校生の時も、どちらかと言うと数学が苦手だった私は「背伸び」して『赤チャート』を使っていた。苦手だからこそ基礎基本に戻る必要があるのに、全くあべこべな事をしていた。あの頃の私は、1番難易度の高い『赤チャート』を使えば数学が得意にでもなるかのように≪錯覚≫していたのだ。今振り返ってみるとなんと効率の悪い学習をしていた事か!今なら客観的に自分を分析して最適解を、つまりどういう学習法が最適かを導き出せる。でもあの頃、私は自分が数学を苦手にしているというコンプレックスを客観視できなかった。そのコンプレックスこそが私をして『赤チャート』を使わしめていたのだ。自己を客観視するためにはある程度の経験が必要で、それが当時の私には足りなかったのだと思う。結果、問題を解けない。だから解答を見る。でも理解できない。とにかく解答をノートに書き写す。そして解ったつもりになる。でも解っていないからストレスがたまる。ストレスが積もれば嫌いになる。嫌いになれば余計に解けない。この繰り返しだった。今ならもう少し上手に数学と向き合えるのではないか?そんな風に思う時がある。

 何を言いたいかと言うと「背伸び」は良くないという事だ。でもって、我々の日常生活で1番身近な「背伸び」とは「知ってるつもり」を演じてしまう事だ。「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ではないが、解からないことは解らないと正直に言ってしまうのが結構近道だったりする。解らない事を解らないと、知らない事を知らないと、出来ない事を出来ないと、認めるのには若干の勇気が必要だが、その勇気さえあれば首尾、生きやすくなるのは確かだと思う。その意味でソクラテスが言った「無知の知」(自分は何も知らないという事を知っている。)は我々に重要な示唆を与えてくれるのだ!
 
 結論としては「来年も背伸びせず、等身大の俺で行こう!」と言ったところか?

 では皆さん、今年もお付き合いいただき、有難うございました。
 来年もどうぞよろしくお願いします。良いお年を!
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