第257話 天空の城ラピュタに見る文明論

文字数 1,458文字

「これが玉座ですって?ここはお墓よ。あなたとあたしの。
国が滅びたのに、王だけ生きてるなんて滑稽だわ。あなたに石は渡さない。あなたはここから出ることもできずに、私と死ぬの!
今は、ラピュタがなぜ滅びたのかあたしよく分かる。ゴンドアの谷の歌にあるもの
 『土に根をおろし、風と共に生きよう。種と共に冬を越え、鳥と共に春をうたおう。』

どんなに恐ろしい武器を持っても、沢山のかわいそうなロボットを操っても、土から離れては生きられないのよ!」

私 「土から離れては生きられない」か・・・。
友人「?」
私 「いや、天空の城ラピュタのシータのセリフ。学童で今度借りる本にどうかなと思って。」
友人「あっ本になったやつね!いいんじゃない。そのセリフ深いよね。」
私 「どういう事?」
友人「宮崎駿さんの考える文明の終末論。」
私 「???」
友人「例えばさ、古代ローマが滅びたのと同じだと思う。古代ローマが滅んでヨーロッパは暗黒時代を迎えるだろ?古代ローマ・ギリシアで花開いた文化・芸術・学問は衰退して、キリスト教がそれらに取って代わる。経済規模は縮小し治安は悪化、民衆の生活レベルも下がる。」
私 「直接的な原因はゲルマン民族の侵入だっけ?」
友人「それはキッカケに過ぎない。それ以前に帝国は内部から精神的に崩壊していたんじゃないかと思う?」
私 「やっぱりキリスト教?宗教は人の心を縛る。宗教は精神の麻薬ってやつか?宗教を道具として使った頭のいいいやつがいたんだろね。みんなそいつに騙されちまったんだよ。」
友人「俺が思うにね、あれ程速くキリスト教がローマ帝国に浸透していったのは、みんな何かに“騙されたかった”からなんじゃないかと・・・。」
私 「騙されたかった?」
友人「逆説的だけどそれが的を射ていると思う。その心のスキをキリスト教が埋めたんだ。みんな虚ろに生きていたんじゃないか?」
私 「虚ろか・・・。」
友人「騙されてしまう人って普通に考えたらそんな事あるはずないのに騙されてしまう。言い方は悪いかもしれないけど、何かに騙されたがっているんじゃないだろうか?つまり虚ろに生きているんだよ。それが個人レベルにとどまらず、社会レベルにまで蔓延してしまったら・・・。その時文明は終末を迎えるのかも。外敵とか後付けの話だろ。」
私 「確かに、パンとサーカスとか、ご馳走をたらふく食べてお腹いっぱいになったらクジャクの羽を使って吐き出して、それでまた食べるとか。それに誰の子だか解らない赤ちゃんがたくさん生まれて、それをポイポイ捨てたりとか、一方ではその赤ちゃんを拾って奴隷に育てたりする商人がいたりとか、ローマ帝国の後半以降は確かに虚ろだ。」
友人「みんな虚ろに生きていた。そこにキリスト教が浸みこんできたって感じ。」
私 「虚ろに生きちゃダメなんだなー。虚ろにならない為には“基本的な人倫”と“額に汗して働く事”この2つが不可欠なのかも。」
友人「話は戻るけど、ラピュタ人は虚ろだったんだよ。超古代文明だか何だか知らないけど。だから宮崎駿さんは“土に根差せ”とシータに言わせてるんだ!」
私 「なるほど、そう考えると結構深いな、ラピュタ!」
友人「単なる冒険活劇とは違うんだよ。」
私 「さすが宮崎駿。世界が認めた男!」
友人「真面目な話、宮崎駿って相当造詣深いんだよ。文化人類学とか歴史とか。」
私 「クリエイトするためには下地が必要だ!俺も学ばないと。負けてられないぜ」
友人「世界の宮崎に挑むか!?(笑)骨は拾ってやるぞ(笑)」
私 「よせやい!言ってみただけだよ(笑)」
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