第317話 きっとここから

文字数 1,633文字

きっとここから愛なんだ はじめる事が愛なんだ♪

 アイドルグループV6の持ち歌『愛なんだ』のサビの部分だ。私はどう言うわけかこの歌のサビだけ覚えていて、事あるごとに口ずさむ。無論CDを購入したわけでもないし、きちんと聞いたことがあるわけでもない。ただこのサビの部分だけは、いつからだろう?いつも頭の中にある。

 話しは移る。うちの親父と兄そして私、3人ともサッカーが好きだ。ただ親父と兄、そして私ではサッカーに対する愛情の形が異なる。親父と兄はザスパクサツに愛着を持っている。どんなにザスパ草津が、負けようが、つまらないサッカーをしようが、変わらずザスパを応援している。親父などはいつもザスパをぼろくそに言うくせに、それでもまた次を見る。応援をやめない。対して私は地元のチームだという事以外、ザスパにこれと言った関心はない。そもそもどこのチームが好きと言うのがない。より面白いプレイ、より意外性に溢れるプレイ、より美しいサッカーをするところが好きだ。親父と兄がザスパとその選手を愛しているのに対し、私はサッカーと言う競技の概念や理想を愛している。同じサッカー好きでもその違いは大きい。

 それもあってか、話がかみ合わない事が多い。ザスパにいたあの選手は今どこそこへ行って活躍しているとか、今年はなんとかと言う選手が入ってチームがどう変わったとか、あまり私には興味がない。私にはザスパ愛がないのだろうか?

 話はまたまた変わる。私は昔高校の歴史の教員をしていた。数年務めた後、私はいわゆる進学実績の高い私立高校の教員募集に応募するようになった。その後いろいろあって現在に至る。

 今にして思えば、ひどい事をしたものだ。私のことを慕って授業に望んでくれた生徒達からしたらひどい裏切りだ。でも当時の私は若かったし、まだまだ自分を試したかった。いわゆるイジメもあった。

 私にはやはり当時勤めていた学校に対する愛が無かったのだろうか?

 そんな私は想像してしまう。もし自分が子供を持った際、生まれてきたその子に重い障害があったら、その子を心から愛せるだろうかと・・・。このような発想をすること自体、私は人でなしなのかも知れない。(重度の障害をもつ当事者とその保護者の方々、どうぞお許しください)

 サッカーのチームでも何でもよいが、誰かを、何かを愛するという事はひょっとすると物凄い時間と努力と忍耐が必要なのではないだろうか?そしてもしかするとそれは、ある種のあきらめを出発地点とするのかもしれない。・・・・・・・いや、それは違う。私の中で何かがそれを否定する。あれは誰だったか?確か、前橋育英サッカー部の監督山田耕助先生がおっしゃっていた。「どんな子供にもいい所、悪い所がある。いい所をのばしてやることで悪い所はおのずと引っ込んでいく」と。まず、いい所を見つけてそれを愛してみる事。そこからなじゃないのだろうか?もしかしたら徒労に終わるかもしれない。でもまず愛してみる事。そこから始まるんじゃないのか?評価したり消費したりするのとは違う。愛するというのは自身と対象との間に温かみのある関係を構築していくことだ。その為にはまず相手の悪い所ではなく、良い所を見つめる事が最初の一歩なのだ。何かを誰かを愛するってそう言う事なのかもしれない・・・・・。
 
 そんな事をふまえた上で冒頭の挙げたV6の「愛なんだ」を聞いてみると面白い。

そうなんだ♪
きっとここから愛なんだ♪
はじめる事が愛なんだ♪
傷つくこと恐れちゃ
だめだめだめだめだよベイべー♪

 ノリのいいメロディーと同時に、とても大切な事を言っている。何故この歌のサビがずっと頭の中にあったのか解った気がした。

 いつだって、どこにいたって

「そうなんだ、きっとここから愛なんだ!」

多分そう言う事なんだと思う。

作詞:松井五郎さん
作曲:玉置浩二さん

どうも有難うございます。


https://www.youtube.com/watch?v=XJZMGOW6SS0

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