第268話 読書体験

文字数 1,341文字

 職場の学童で月に一度、市の図書館から図書を50冊まとめて借りてくる。その際どんな図書がいいのか。いつも迷う。低学年は主として絵本や図鑑を借りてくるのだが、高学年の子供たちにはどんな本がいいのか?これが、なかなか難しい。私自身の経験から言えば、マンガで言ったらその当時は(『キャプテン翼』高橋洋一)(『ドラゴンボール』鳥山明)(『キン肉マン』ゆでたまご)などを一通り読んでいたのだが・・・。

 私が本格的に本を読んだのは(『アルセーヌ・ルパン全集1~24』偕成社)だったと思う。奇岩城、813の謎、ルパン対ホームズ等々。貪るように読んだのを憶えている。エピソードごとにルパンはヒロイン?の女性と恋をするのだが、恋愛のことなどまるで解らぬ子供心にルパンは女性にもてるんだなあと感心したのを憶えている。中でも印象に残っているのが、ルパンが自分のかつての危機を当時のフランス大統領に語る場面だ。その時のルパンは敵対する組織にがんじがらめに縛られて口にはさるぐつわを噛まされてしゃべることも出来ない状況だった。かのルパンも万事休すかと思われたその時、ルパンは組織の中の一人の女性に助けてもらい九死に一生を得る。どうやってその女性を味方につけたのか?手も足も出ないし、しゃべることも出来ない状況で?と、いぶかしがる大統領にルパンはこう言う「手も足も使えなくとも、しゃべれなくても、「目」は自由でした。」と。それを読んだ私は子供ながらに「ルパンは目だけで女性に自分の事を好きにさせてしまうんだ。すごいな。」と思った。アルセーヌ・ルパン全集は冒険活劇としての面白さはもちろんの事、小学生の私に初めて大人の恋愛と言うものを垣間見せてくれた読書体験だった。
 
 その後中学に入ってからは何と言っても田中芳樹先生の『銀河英雄伝説1~10・外伝1~4』を始めとした一連の作品群を片っ端から読んだ。これらの作品群がどれほど中学生の私にとって魅力的だったかは筆舌に尽くしがたい。さすがに学童の遊び時間に読むには少し無理があるが・・・。その他には『モモ』や『はてしない物語』共にミヒャエル・エンデ作を読んだ。それらの1つ1つが私の血肉となって今に至っている。

 このあたりから学童の子供たちにみつくろって来ようと思うのだが、実際には腰を落ち着けて読書する時間はほとんどないので、上記の本はなかなか選びづらい。そうすると細切れの時間の中でも読みやすいものという事で半分マンガで半分本の様な図書に限られてくる。やはり短い時間でも頭に入るのはさし絵(マンガ)が描かれているものになってくるのだ。そこで考えたのだが、ここはマンガそのものでもいいのではないかと。(『ちはやふる』末次由紀)を与えてみて結果、百人一首に興味をもってもらえれば上々だし、『ヒカルの碁』ほったゆみ(原作)と小畑健(漫画)を読ませても良い。結果、囲碁や将棋に興味を持ってもらえればしめたものだ。どちらも、うちの本棚に眠っているので今度許可が下りれば学童に寄付してもいいなと思った。

 1つ気づいたのは小学校高学年ともなれば、こちらがちょっと難しいかな?と思うものでも細かい部分はともかく、その本質は十分に理解可能だという事。小学生をなめてはいけないのだ。
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