第326話 職業に見るカッコよさ

文字数 1,136文字

 いつも髪を切ってもらっている美容師さんが、来月よりカット料金を値上げすると申し訳なさそうに伝えてくれた。昨今の物価高で光熱費等が上がっているとの事。私は「了解です。今後もよろしくお願いします。」と言って店を出た。いつもぶっきらぼうで、おしゃべりはお世辞にも上手とは言えない。でも美容師としての腕は確かで、自分の仕事に誠意と熱意とプライドを持っている。この人が私は決して嫌いではない。口ばかり達者で腕の悪い美容師などよりはるかに良い。だから万一のことでもない限り、今後もこの人に切ってもらおうと思っている。少しの値上げなど問題ではない。

 また、私には行きつけの蕎麦屋がある。昔ながらの蕎麦屋で、店主と数名の女性従業員がきびきびと気持ちよく働いている。椅子などはもうずいぶん使い込まれていて、店内は決して華美ではない。でも安価で美味い蕎麦と1つ120円で各種揚げたてのてんぷらを提供してくれる。この蕎麦屋も今後続く限り懇意にしたい。

 美容室は上手に髪を切り、蕎麦屋は美味い蕎麦を提供する。そして両者ともそのことに誇りとプライドを持っている。カッコいいなあと思う。

 さてひるがえって、我々学童支援員はどうあるべきか?美容師が上手に髪を切り、蕎麦屋が美味い蕎麦を提供する。では私たち学童支援員は子供たちに何を提供し、どう向き合うべきか?果たしてカッコいい支援員とはどんな支援員か?

 私が思うに
 まず大切なのは“安全”だ。子供たちを安全にお預かりすることが第一だ。
次に大切なのが“確かな倫理観”だ。確かな倫理観のもとに子供たちをお預かりすること。挨拶とありがとうとごめんなさいと、そして時にはきつくしかることも必要だ!
3つ目に重要なのが、充実した時間だ。子供たちが漫然とお迎えを待つのではなく、夢中になれる何かを提供すること。遊びでも勉強でも時間を忘れるくらい熱中にさせられれば最高だ!

 そして、これら3つのことの大前提として毎日の掃除や雨の日の靴下の替え等の準備や、その他    もろもろの事務作業がある。学童の仕事につき4年目、現在の職場で3年目。やっとそういったことが分かってきた。

 我々現代人の多くは1週間のうち5日は仕事をしている。その5/7が面白いのか?つまらないのか?で人生が大きく異なってくる。夢を語る人と、愚痴をこぼす人と、魅力的なのは明らかに前者だ。そして学童支援員という職業にはまだまだ“面白くする余地”が残っていると思われる。つまり大げさかもしれないが夢を語るに十分足る仕事だという事だ。

 そんなわけで、我々はまだまだ学童保育支援員という仕事を通じて“カッコよくなれる”かもしれない。そんなことを考えながら今日も眠りにつく。

 明日がいい日でありますように。


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