第245話 ある2人の40代男性の肖像

文字数 1,241文字

 本を読む事の楽しみの半分は、感想や発見を誰かと共有し、吟味することにある。少なくとも私にとってはそうだ。近くの喫茶店でお茶を飲みながら友人と読んだ本・マンガについて語らうのが日課だった。過去形にしたのは、ここ1~2年でその様子が少し変わってきたからだ。友人が子育てや仕事で忙しいのに対して、独り身の私は比較的ヒマだ。当然、読む本やマンガ、考える時間も私の方が多い。よってその分、語るべき内容も質・量ともに私の方が充実する。まあ当然と言えば当然だ。ところがそれが友人には面白くない。難癖付けて私の語りを妨害してくる。やれ「お前の知識は浅はかだ。」とか、やれ「お前の話はつまらない。」とか。俗な言い方をすると友人は私に対して“マウント”を取りたくて仕方ないのだ。やれやれ。でも大概の場合、私は友人に好きにマウントを取らせてやる。それで彼の気が済むなら安いものだからだ。ただその日はちょっと違った。その日、10こ下の友人と彼と3人で近くの喫茶店でお茶をしていた。するとそこに妙齢の女性グループ5~6人ほどが近くの席に着いた。そうこうしているうちに話題をリードしていた彼がトイレに席を立った。そこで私が若い友人と昨今の日本企業の在り方について話し始めた。曰く「企業ってのは先を先を見越して早め早めに手を打っていくものだ。K君ちの親父さんはどう?」(若い友人の親父さんは経営者)   
 私と若い友人がその話題で盛り上がっているところにトイレから帰って来た友人はいきなり「サラミスの海戦ってのはね・・・。」と話を無理やり戻し、独りで語り始めた。「もうその話は終わったよ!」と言わないところが、私の良い所なのか悪い所なのか自分でもわからない。そんな私をよそに彼の話は暴走し始め、結局「そろそろ帰るか?」というところに落ち着いた。それはまあいい。ただ彼が帰り際、周りに聞こえよがしに「お前の突発性睡眠障害は大丈夫か?」と聞いてきたのは腹が立った。近くに座っていた女性グループを気にし過ぎだ!本人「俺にはもう色欲はない。」などとうそぶいているのに言行不一致も甚だしい。情けない話だ・・・。
ただ、そんな友人にも褒めるべき点はある。2人の娘さんをとても大事にしているところだ。絵を描いてやったり、工作を一緒に作ったり、ギターを教えてやったり。そういうのって大切な事だと思う。「ああ見えて父親なんだなあ」と頭が下がる。正直たいしたものだと思う。一方で「父親ってのも大変だ」とも思う。ひまな俺とは違うんだな、とも。
 そんなわけで今日「お前は子育てに専念しろ!俺は暇だからその分自分を高める。お前にトリクルダウンしたる。素直に恩恵を受けろや!」とラインした。友人は「どーでもいーや。」と返信。当然意図は伝わっている。と思う。
 妻子持ちにしろ、独り身にしろ40代男性には40代男性ならではの葛藤や悩みがある。今日はそんな話だった(笑)。だからどうした?まあそんなことは言わずに次も読んでやってください(多謝)。
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