第169話 ポニー

文字数 735文字

 私に乗馬の経験はない。あるとすれば子供の頃にポニーに載ったことがあるくらいだ。ぽくぽくとよく歩いたのを覚えている。その時のポニーはもちろん走りはしなかった。けれども、いかにポニーとはいえ走ったら私よりはるかに早かったろう。私は何もポニーとどちらが速く走れるかを競いたかったのではない。純粋にポニー(馬)に乗ってみたかったのだ。何が言いたいのかというと、人が馬のように速く走る必要はないという事。自分が乗っている馬より速く走れたなら、そもそも馬に乗る必要がない。ジョッキーとよばれる方々が自分の馬より早く走れるだろうか。否。馬の方が速いに決まっている。だからと言って馬に嫉妬する騎手がいるだろうか?腹を立ててその背から馬をいびるような騎手がいるだろうか?いるはずがない。もしそんな騎手がいれば、おとなしい馬なら走る気を無くすだろうし、気性の荒い馬なら騎手を振り落とすくらいの事はしかねない。ひょっとすると振り落とした騎手を踏みつけるかもしれない。
 さて私は馬に例えて言うならポニーだ。足はのろいし、これと言ったとりえはない。おとなしいのが売りと言えば売りだ。そのポニーであってさえやはり、背上からいびられたのでは腹のひとつも立つものだ。やる気はなくすし、ひょっとすると乗っている人を振り落とすこともあるかもしれない。窮ポニー人を噛むという事だってあるかもしれない。早いとこ話の解るいい騎手に乗ってもらいたいところだ。
 と、個人レベルの話をしてきたが、この話を組織レベルに敷衍するならば「才」を統べるのはやはり「器」であって、詰まる所より上位に位置するのは「器」なのだと思う。「才」も「器」もなき身としては、できるだけ「器」のでかい人に乗って欲しいなーと思う今日この頃だ。
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