第149話 姿勢

文字数 1,447文字

 以前、人の頭の良さって何だろう?というテーマで『スペック』と言う文章を書いたが、そこに新たな知見が加わったので以下に記したい。
結論から言うと人の頭の良さとは≪姿勢≫と深くかかわっている。英語で言うところの≪attitude≫だ。スティーブ・ジョブズが「Stay foolish」と言ったのも、ソクラテスが≪無知の知≫を唱えたのも、北野武さんが「礼儀作法を学ぶべき」とおっしゃるのも、基本的には皆同じだと思う。つまり、どんな事からも、どんな人からも何かしら学ぶ事があるという≪姿勢≫を持ち続けている限り人の学びは留まることがないのだ。
 この前、友人の家に遊びに行ってお子さん二人(小学生)と話をした。教育熱心な友人とその奥さんはお子さんに世界地図や日本全国、各県別の農産物の出来高ナンバーワンを暗記させていた。お子さんが「桃の生産量が日本一の県どこだか知っている?」と聞いてくるので「いや~わかんないなあ?どこ?」と答えると「そんなのも知らないの、山形だよ。山形。」とその瞳に8割のがっかりと2割のあざけりの表情を浮かべた。私の事がいかにも頼りなげな中年に映ったのだろう。しまいには「ねーなにが得意なの?」と聞いてくるから私は「そうだなー、敢えて言うならスキーかな。」その子は「よく行くの?」と聞いてくる「最近はあんまり行かないね。」と私。「なんで?」と聞いてくるので「スキー場行っても最近は私より上手な人がいないからかな~。」と私。「えーそんなにうまいの!?」「いや、昔は私よりうまい人たくさんいたのだよ。でもスノボが流行り出してから運動神経のいい人はみんなスノボ始めちゃって、こぶのあるとこでもぐいぐい滑るような人がいなくなっちゃったのだよ。」すると「へ~。」との事。私は「そんなことより、これ何だか知っている?」と持っていたビニール傘を見せた。「傘でしょ。」と言うお子さんに「違うよ、これほんとはおっきな耳かきなんだよ。ほら。」と耳を掻いて見せた。すると二人の顔に今度は、はじめ一瞬の戸惑いと次にいい笑顔が浮かんだ。「よし、これを使って何ができるか、考えよう!」
 私が2人に、ここで言うところの≪姿勢≫を伝えられたかどうか正直疑わしいが、それでも学ぶという事はそんなに単純じゃないよという意図は伝わったと思う。
県別農産物の取れ高ナンバーワンを暗記するのも大事だが、それを知っている、知らないで人を見下してしまうようなら、その学びははなはだ浅いと言わざるを得ない。何故この県からは桃がたくさん採れるのだろうという探求心、好奇心、このとっぽい中年からでも何かしら学ぶべきことがあるという謙虚さ、もしくは貪欲さ、そういった≪姿勢≫をもち続けている限り、人はいくつになっても学び続ける事が出来る。そういった≪姿勢≫が則ち、頭の良さにつながるのだ。難しい漢字や方程式を教えてくれるのも結構だが本当に大事なのはこういった≪姿勢≫を言葉によらずに伝えてくれることだ。それが出来る場所が本当に優れた教育機関なのだと思う。学校であれ、塾であれ。何だか、どこぞの評論家の様な結論になってしまったが、もう一度次の3者の言葉をもって締めくくりたい。

スティーブ・ジョブズ:「Stay hungry Stay foolish」
ソクラテス:「私は自分が何もわからないという事がわかった。」
北野 武:「礼儀作法を学ぶべき」

 お三方のおっしゃることが根底では通じているという事がよく解った気がします。
有難うございました。
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