第314話 ねじれの位置

文字数 1,515文字

 前回に引き続き、年下の友人K君が恋愛相談を持ち掛けてきた。
私が
「K君は前の彼女、年上だったんだよな?」
と聞くと
「ええ。そうですよ。」
とK君。
「ふむ。」
と私。
「それがどうかしたんですか?」
と聞き返すK君に私は、
「ここから先は、ひょっとすると品のないと言うか下品な話になってしまうかもしれないんだけど・・・。」
「て言うか、長谷川さんの話って基本的にいつも下品じゃないですか?(笑)」
「おい、バカ言うな!俺の話はいつも理性と知性と品性に裏打ちされてるだろ!(笑)」
「はいはい、解りましたよ(笑)。自分で言っちゃうあたりが長谷川さんの凄いとこだな(笑)」
「まあいいや、でな、いきなりだけど、K君は女性の胸と・・・つまり、おっぱいとおしりだったら、おっぱいの方が好きだろ?」
「えっ、まあそうですけど。それが何か・・・?」
「やっぱりな。」
「???」
「これは何の確証もない、俺のタダの私見に過ぎないんだけど・・・、おっぱい好きの男性ってのは保護、被保護の関係で言ったら被保護願望、つまり保護されたいって願望が強い。もしくはリードされたい、掌の上で転がされたいって感じ。それに対してお尻好きはその逆だ。保護したい。リードしたい。で、K君はその典型的前者だ!」
「・・・・言われてみれば、確かにその方が気楽って言うか・・・。」
「だとすると・・・、こいつはねじれの位置だぞ」
「ねじれの位置?」
「むかし、中学だか、高校の数学でやったろ?同一平面上に無い為、決して交わらない2つの直線。」
「あああ、なるほど。」
「今までの話を聞いていると、その女性はその女性でK君に年上的な何か?つまり尊敬できる何か?を求めているし、K君はK君で相手の女性に保護されたい、もしくはリードして欲しい的な願望を抱いている。これってねじれの位置だぞ!。」
「あ~そうか・・・。」
「無論これは俺の私見に過ぎない。何の確証もない話だ。だからそんなに真に受けることはないんだが・・・。」
「いや、長谷川さんの言う事よく解ります。ねじれの位置か・・・。」
「うん、ねじれの位置。我ながらうまい例えだ。」
「あ~ねじれの位置か・・・。」
「いや、すまん。相手に理解力があると思うとついつい調子に乗ってしゃべりすぎてしまうのが俺の悪い癖だ。あんまし真に受けないでくれ。」
「いや、そう言う“気づき”って言うか、視点をえられただけでも良かったですよ。話した甲斐がありました。」
「うん、もしかするとそういう新たな視点を得る事を“成長”って言うのかもしれん。」
「長谷川さんはどうやってそう言う“1を聞いて10を知る”ようになったんすか?どうやって成長したんすか?」
「そりゃ、本とマンガだよ。近所のツタヤにはほんとお世話になっている(笑)。あのな、ジムに行って外見をシュッとさせることも大切だが、内面を磨くことはもっと大事だぞ!」
「そうですね。なんかお勧め在ります?」
私はせっかくなので自宅までK君を連れて行って
「これなんかどうだ?」
と『町田くんの世界①~⑦』(安藤ゆき 集英社)を読ませてやった。私は疲れてK君の横で寝てしまったのだが、しばらくするとK君は
「これ借りってっていいですか?」
と④~⑦巻を持って言った。
「うん、面白いだろ!」
と私は快く貸し出した。

少し大げさかもしれないが
本やマンガを読む事で私は物事の本質が見えるようになった。

物事の本質がよく見えるというのは幸せな事だ。
同時に
物事の本質がよく見えすぎるというのは不幸せな事だ。

もしかすると私は後者の側に片足突っ込んでしまったのかもしれない。
でもまあ、今更後戻りはできないし、それは仕方ない。

それにK、君、君はまだまだ発展途上だ!
がんばれK君‼‼‼
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