第42話 自意識の仮面

文字数 968文字

 夜更けに目が覚めると、何故か頭の中で『宇宙刑事ギャバン』の主題歌が流れていた。

~若さ若さってなんだ?
 振り向かない事さ!
 愛ってなんだ?
 ためらわない事さ!~

 我が身を省みてハッとした。どれ程多くためらってきたことか?何故ためらうのか?その理由のほとんどは「自分の内心を気取られたらどうしよう!」と言う恐れからだ。要は自意識過剰なのだ。

 その昔、村上春樹さんのデヴュー作「風の歌を聴け」で読んだ。

 ~かつて誰もがタフになろうとした時代があった。僕は思った事の半分しかしゃべらないようにしようと思った。でも気が付いたら思った事の半分もしゃべれない男になっていた。~

 私も同じだ。考えて、考えて、考えてから喋るようにしていたら、いつの間にか思っている事の半分もしゃべれない男になってしまった。考えて、考えて、考えて相手が傷つかないように苦心してから喋る。でもそれは裏返せば、実は自分が傷つかないように仕向けているだけなのだ。情けない話だ。

 今日、職場で人手が足りない場面があって、それで切羽詰まって久しぶりに怒鳴ってしまった。怒鳴った事自体は失敗したと思ったのだが、それとは別に、感情のおもむくままに怒鳴れて、ある意味気持ち良かった。忙しさが、普段は外すことのない「自意識の仮面」を取っ払ってくれたのだ。大人になるとはこの「自意識の仮面」をつけるようになることを言うのだと思う。この仮面を上手に付けたり外したりする事が出来る人もいれば、私の様に滅多なことでは外せない人間もいる。ただそれでは寂しいので、たまにはこの仮面を外した自分を知ってもらいたくもなる。そんな時、人は誰かを飲みに誘うのだ。この人には自分を知ってもらいたい。つまり飲みに誘われるのは光栄な事なのだ。また、逆に言えばお酒も飲めないうちはこの「自意識の仮面」などつける必要などない。言いたいことを言えるのは子供だけの特権なのだ!

 話しは戻るが、『宇宙刑事ギャバン』の主題歌によれば、「自意識の仮面」を取っ払うのは「愛」だという事になる。切羽詰まって外した私とは大違いだ。どうやら私は「愛」には程遠い人間らしい・・・。

 さて、この文章をお読みの皆さんは「自意識の仮面」つけてますか?外してますか?えっ、はなからそんなモノ持ってない!まさか?大阪のおばちゃんじゃあるまいし(笑)
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み