第388話 運命とは・・・2

文字数 2,473文字

 星の素顔を見た金髪の男は驚いた様子だったが、すぐに不気味な笑みを浮かべながら星の体を強引に路地裏に連れ込んで嫌がる星の手を掴んで彼女の頭の上に上げさせて壁に押し付けた。

「なんだよ。ニュースで見たぜ? お前犯罪者なんだろ? なら、別になにやったっていいよなぁ……」
「……なにするの!? いや! 放して!!」

 抵抗する星のパーカーのチャックをゆっくりと下げ、内側に着ていたティーシャツをめくり上げると露わになった星おへその部分を彼の指の腹が撫でる。

 更に激しく抵抗する星を嘲笑うかのように金髪の男が星の耳元で囁く。

「実は俺もあの世界にいたんだよ。彼女と一緒にな……」
「――ッ!!」

 その言葉に驚き目を見開いた星の抵抗が弱くなったのを見て、金髪の男は星の履いていたズボンのベルトに手を伸ばして緩めるとぶかぶかのズボンが地面に落ちて真っ白なパンツが露わになる。

 すると、そこに金髪の男の手が伸びてきて星の内太ももを撫でた。

 顔を真っ赤に染めた星は全力で体を捻って今までで一番の抵抗を見せる。

「お前のせいで俺の彼女は昏睡状態なんだよ。お前が俺達を始まりの街で見放したからよ……分かるだろ? お前がどれだけの事をしでかしたのかって……分かったら責任取って大人しくやらせろよ!」
「いや、放して! 放して下さい!!」
「暴れんなよ! 別に減りゃしないんだからいいだろうが!」

 金髪の男の手が星のパンツに伸びた瞬間。周囲に銃声が鳴り響き、金髪の男が足を押さえて地面に倒れ込んだ。
 突然の出来事に驚いた星は地面に座り込んでいた。もう一人の男は何が起きたのか分からずに動揺した様子で地面に倒れている金髪の男を見下ろしていた。

 銃声が聞こえた場所に目を向けると、そこにはローブを着た子供ほどの大きさの人物が立っている。その手に握られていた銃の銃口からは薄っすらと白い煙が上がっているのが見えた。

「――失せろ。お前達には用はない」

 そう言った直後、再び銃声が鳴り響きもう一人の男が地面に倒れている金髪の男を起こして肩を貸しながら慌ててその場を立ち去った。

 その場に取り残された星は突如現れたローブを着た人物を見据えている。

 座り込んだままの星は体が震えて動けないでいる。だが、それも無理はない。年上の男に強引にズボンを脱がされたのも初めてだが、銃声を聞いたのも初めてだ。一度に予想外のことが起きて星の体は完全に萎縮してしまっていて体に力が入らない。

「……あなたは誰なんですか?」

 ローブの人物は無言のまま近付いてくると、地面にぺたんと座り込んでいる星の眉間に銃口を向けた。

 星は自分に向けられた銃口を見つめ、諦めたように息を吐いた。

「はぁ……そうですよね。私のことを殺したいほど憎んでいる人はたくさんいますよね……」

 そう呟いた星は全てを悟ったようにゆっくりと瞼を閉じる。

 直後。辺りに銃声が再び轟き、星の体は徐々に傾いて横に倒れた。ローブを着た人物が構える銃は星にではなく空へと銃口が向いていた。それと同時に、遠くからサイレンが鳴り響き徐々にその音が大きくなる。

 ローブを着た人物は気を失って倒れている星にズボンを履かせると、抱きかかえながら一瞬で屋根へと跳び上がりそのまま星を連れ去った。

 
 星を抱きかかえたまま、結構な距離を移動するとローブを着た人物が突然道路の中央に降り立ち、走ってきた黒塗りの高級車が慌てて急ブレーキを掛けて目の前で急停車した。

「――大丈夫ですか!!」

 運転手であろう白髪に白髭の生えた60代後半のスーツを着た男性が車のドアを開けて飛び出してきた。

 しかし、その時にはローブを着た人物は消えていて、代わりに道路には星が横たわっていた。
 首を傾げながらも高齢の男性は倒れている星に駆け寄ると、抱き上げて声を掛けるが星の意識は戻らない。

 その直後、車の後部座席から一人の少女が降りてきた。

「どうしたの小林!」

 長い青い髪に綺麗な青い瞳の学生服を着た彼女は倒れている星の顔を見て驚いた表情で叫ぶ。

「小林! 早くその子を乗せて、近くの病院へ! 救急車を呼ぶよりもこのまま車で運んだ方が早いわ! さあ、早く!」
「はい! お嬢様!」

 道路に倒れていた星の体を抱きかかえると、車の後部座席に寝かせると少女は助手席に乗り込んでシートベルトを締める。

「飛ばします。しっかり掴まっておいて下さいよー」
「ええ、でも衝撃は最小限でね……」
「分かっております!」

 急いで車を出すと、近くの病院へと星を運ぶ。

 病院に着くと星を車から降ろして急いで院内に入る。病院で受付の女性の看護師の所に行くと、すぐに診察室に通されベッドに寝かせた星の着ていた服を脱がせて下着姿にすると、近くにいた複数の女性の看護師が忙しなく血圧や体温を測り始めた。

 そしてしばらくして年配の男性医師が入ってきて脈や胸に聴診器を当てて診断する。

「脈拍も心音も特に問題ありませんね。気を失っているだけで血圧、体温も正常です。しばらくしたら目を覚ますでしょう」

 年配の男性医師がそう言って笑顔を見せると青髪の少女が安心したようにほっと胸を撫で下ろす。

 すると、年配のスーツ姿の白髪の男性が少女に尋ねた。

「お嬢様のお知り合いですか?」
「ええ、この子には命を助けてもらったの」
「そうですか。命の恩人でしたか……」

 少女はゆっくりと頷くと、気を失っている星のおでこに手を置き優しく撫でる。

 少女とスーツ姿の白髪の男性の顔を交互に見て、年配の男性医師が徐に口を開く。

「どうしますか? もし良ければ、この病院で預かりますが……」

 顔色を窺う様に少女に尋ねると、少女は首を横に振って力強く答えた。

「いえ、この子は当家で預かります。大切な客人ですから」
「そうですか。伊勢家の方にはこの病院も多額の寄付を受けておりますから、何かありましたら遠慮なく言って下さいね」

 少女は頷くと徐に立ち上がり年配の男性医師に頭を下げる。すると、隣のスーツ姿の白髪の年配の男性も頭を下げてベッドに寝かされていた星を抱きかかえて診察室を後にする。
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