第353話 太陽を司る巨竜16

文字数 1,229文字

 真夏の肌を焼くような激しい日光のビーチでそこそこ腹筋が割れ、筋肉が隆起した者はいるかもしれない。しかし、それは皆どれも細マッチョ止まり……ゴリゴリのマッチョはその中に存在しない! 

 何故なら、ゴリゴリのマッチョは真夏のビーチではなく、空調の効いた室内にのみ存在しているからだ……そう。ゴリマッチョ達は女子にモテたいが為に筋トレをしているのではなく。己の限界を筋肉に求めているからこそ、日夜ジムで筋トレをしているのだ。

 そんな本物の肉体をゲーム世界で手に入れたところで使いこなせるわけがない。つまり、ボディービルダーの人口が極端に少ないのは、誰もが現実との肉体の違いに振るい落とされ淘汰されてしまったからなのだ――それが日本サーバーに本物のマッチョが少ない理由だ。まあ、他の海外のサーバーにはそれなりにいる種族である。

 スピードが大きく落ちる種族な為、ボディービルダーの殆どは攻撃力にステータスを寄せている傾向がある。それはヒューマンに比べて約二倍に匹敵するほど……つまり。彼等が戦闘に加われば、それだけで2人が戦闘に加わることと同じなのだ――。

 デイビッドの言葉通り。彼に少し遅れて、サラザ達オカマイスターの4人が誰も張り付いていなかった足に、素手でがっしりと張り付いた。

「行くわよ~。今だけは包み隠してきた男を見せるわよ!!」

 その直後、一度はバランスを崩した赤い鱗の巨竜が再び進み始めようと足に力を入れる。だが、すぐにそれを阻止するべく足に張り付いていた者達が一斉に全身に力を込めて声を張り上げた。

 その中でも目立つのはオカマイスター達の声だった。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「でやあああああああああああああああああああああッ!!」
「このおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
「おりゃああああああああああああああああああああッ!!」

 雄叫びを上げるその叫び声はまさに男そのものだった。

 いや、普段からその筋肉に覆われた体は男そのものだが、その中でも女の皮を……それも違う。肌が若干被れるくらいにしか女を纏えていない彼等だったが、今は間違いなく男だ――いや、それも違う。普段から男を抑え込んでいる彼等達の魂が男を開放する時……それは男からもう一段階上の男――つまりは『漢』となるのだ!

 サラザの体が金色のオーラを放ち、全身の血管が隆起し顔を真っ赤にしながら全身の力を使い切る様に叫ぶ。

 そのオカマイスターの雄叫びに負けじと叫んだメルディウス達も、今まで以上に全身に力を込めた。だが、その奮闘のおかげで、未だにその場に釘付けになって動けなくなっている。

 動けなくなっている赤い鱗の巨竜の隣にふわふわと浮いているデュランの左右に2人の従者が出現する。白い着物を来た男は、短い白髪に緑の瞳で手には刀を持っている。

 そしてその隣には、青い着物を着た青い短髪に青と緑のオッドアイの薙刀を持った男がつまらなそうな表情で現れた。
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