心の応報

文字数 6,035文字

 6.

「リージェスさん!」拡大する火災から逃れながら、リレーネは叫んでいた。「リージェスさん!」
 だが、炎の中に戻っていくほど愚かではなかった。
「東の運河に逃げろ! そこで火の手が止まるはずだ」
 誰かが指示しているのを他人事のように聞いた。
「ゼフェルの後継のコルが死んだぞ」
 そんな囁きが聞こえてきたが、リレーネにはどうでもいいことだった。リージェスが戻ってくるなら。
 月がほしいと願うのはこんなときだ。リレーネははっきり理解した。二度と手に入らぬものを取り戻したいとき、その願いが月に仮託されるのだ。
 私がほしいのは……ほしいのは……月じゃない。
 リージェスだ。ここまで守り導いてくれたリージェス・アークライト少尉だ。
 彼はもう生きていないとリレーネは感じていた。何故感じるのかわからないが、それでも感じるのだ。
 夜空を見上げる。
 光を放つ天球儀。この惑星を包み込む、固く扉の閉ざされた鳥籠。その網目の向こうから、冷たい星々と赤い星雲を背景に、月がアースフィアの地表に向けて迫ってくるのを見た。
 月は既に巨大だった。
 明るさを増しながら接近し、ついにその灰白色の地表で空一面を埋め尽くし、天球儀と触れ合わんばかりになった。月の地表の凹凸までよく見えた。
 リレーネは少しのあいだ、リージェスのことを忘れた。
「月が落ちてきますわ」
「いや」
 さすがにヨリスタルジェニカの神官兵はよく訓練されていた。異変を目の当たりにしながらも、混乱に陥ることなく避難を続けている。
「あの月に実体があるのなら、既に互いの引力によってアースフィアと衝突しているであろう」
「では……」
「あの月に実体はない。それか」
 シンクルスは唾を飲み、月を顎でさした。それきり月を見るのをやめた。
「……それか、あれはもう、別の宇宙なのだ」
 これはリージェスの賭けが引き起こした結果だろうとリレーネは考えた。
「リージェスさんは命に換えてまで月の存在を拒みましたわ」
「恐らく、月には消えたくないという自我がある」
「月が自我を持つなどおかしな話ですわ」
「自我があるとしたら、それは一度人間として存在した影響であろうな。マナとして存在したことによって付与された性質だ」
 ああ、では、マナという少女さえいなければ、月はリージェスの要請に応えて姿を消してくれただろうか?
「貴様は消えろという要請は人の心を殺す」シンクルスは言った。「殺された心は、怨念となって本人に舞い戻ってくる。そのことを我々人間は、少なからず経験しているのではあるまいか?」
「私たちはどうすれば?」
「ならば月を受け入れるしかあるまい。あれがある世界を」
 心の底に寒々とした風が吹き抜けるのをリレーネは感じた。
 本心から、嫌だった。
「俺たちはもう、もとの世界には戻れぬのだ」

 ※

 そこは風向きが悪かった。
 瀟洒な邸宅が立ち並ぶ地区にも火災の煙が流れ込んできていた。大通り一本隔てれば、煉瓦と木造の家が混在する燃えやすい地区だ。
 大通りでヨリスは、白い息を吐きながら顔を空に向けた。血に汚れた手で前髪を耳にかけ、月がアースフィアに接近する一部始終を見ていた。
 諦めのような、感嘆のようなどよめきが後ろから聞こえてきた。ヨリスもどこか感心していた。ここまでくれば、いっそ世界がどこまでおかしくなるのか見届けたいという気持ちがある。
 もはや終末を叫ぶ者はいなかった。裁きもだ。死後の裁き? 誰が裁くというのか。月か。
 遥か昔、月は地球から移植された際にクレーターまで忠実に再現されたと聞いたことがあるが、それは今頭上にあるまやかしの月にもあてはまるかどうかはわからない。クレーターは、あるにはある。月は平坦な灰白色ではなく、濃淡があり、熾烈な宇宙環境を生き延びてきた痕跡が刻まれていた。クレーターは天球儀の網目からアースフィアを見下ろす目のようだった。
 ヨリスは、隣にいる副官ミズルカ・ディン中尉にとって驚くべきことを言った。
「今日は星獣祭の最終日か」
 ミズルカは、それは今言う必要のあることかと疑問に思ってから、いいや、驚くべきではない、と考えを改めた。ヨリスは決して無駄なことは言わない。
「はい。あと二時間程度で零刻となります」
「星獣祭が終われば年が明ける」
 ヨリスは後ろを振り向いた。
「アッシュナイト中尉」
 今は都解放軍の、かつてはヨリス率いる強攻大隊の屈指の射手、アウィン・アッシュナイト中尉が、長弓を手に前に出た。
 ヨリスは冷ややかな視線で月を串刺しにし、アウィンに命じた。
「あれに新年を迎えさせるな」
「はっ」
 と反射的に返事をしたはいいものの、アウィンは途方にくれた。どうしろと言うのだ? だが結局のところ、狙撃手が呼ばれる理由など他にないではないか。
 アウィンは矢筒から矢を抜いた。月が一部、ほの赤く見えた。火災が映っているのか? いや、気のせいだろう。弓を引き絞りながら、アウィンは目をしばたたいた。しっかりしろ。
 月は赤くなどなかった。
 矢を天空に向ける。
 しかしヨリス少佐、確かに的はデカいけど、ちょいと遠すぎやしませんかね?
 この場には、ヨリスとミズルカとアウィンの他には、アウィンの相棒アイオラと、月の掘り起こしに居合わせたリーン・イマエダ大尉がいた。計五人だ。
「月よ」
 リーンがアウィンの隣に並び、声を張り上げた。
「可能性を選べとお前は言った」
 言いたいことがあるなら早く言ってくれ、アウィンは願った。腕が震え始める前に。頼むぜ。
「これが私たちの願う可能性だ」
 幸い、リーンの言いたいことは短かった。
「いなくなれ」
 アウィンは矢を放った。弦が唸り、アウィンは思ってもみなかった光景を目にすることとなった。
 矢は落ちることなく、天球儀、その網目の向こう、月へとまっすぐに吸い込まれていった。
 魔法を目にした気分だった。
 矢はすぐに目視できなくなった。本当に月にぶっ刺さったのか? アウィンは考える。まさか。
 と、思考も視界も灰白色の光に塗り潰された。
「アウィン」
 どれだけ経ったか、いきなり頬をひっぱたかれた。
「目を開けなさい!」
 ひっぱたいたのはアイオラだった。そうされるまで目を閉じてしまっていたことに気付いていなかった。
 屈辱はすぐに恐怖に近い不安に変わった。
 五人は灰白色の光の中で、不安によって連帯する無力な一団となっていた。
 そこには都にあるべき全てのものが存在しなかった。住居? 教会? 会議所? 冗談ではない。
 広間だった。
 装飾のない灰白色の床、同じく味気ない灰白色の壁。正方形の空間の右手と前面に廊下が伸びていた。アウィンはあるべきものを探した。戦闘の痕跡。死体や血痕、折れた弓矢。それから生きている人間を。ここには靴磨きの子供はいなかった。しこたまアルコールを取り込んで路上に横たわる凍死寸前の路上生活者もいなかった。馬車と御者、バターを売り歩く女、荷運び業者、デル貨十枚で体を売る男女、梅毒にかかってなお体を売る男女、性風俗の乱れを改善すべしと息巻く目つきのキツい女、成金、生垣に小便を引っかける男、壁に漆喰を塗る左官、猫好きおばさん、鳩を追い散らすガキ、そうした人間は誰もいなかった。馬糞も落ちていなければ、どこかの露店で値切りをする客と主人の攻防も聞こえてこなかった。
 つまるところここは都ではなかった。
 悪いことに、右の廊下から金属質の物音が迫ってくる。
 足音?
 ヨリスが命じた。
「走れ」
 どことも知れぬ場所、いかなる罠が待ち構えるかもわからぬ前方の廊下へ先陣を切って走り始めたのはヨリスだった。遅れまじとミズルカが続く。
 アウィンとアイオラとリーンは、半ば立ち竦んで互いに目配せをしあった。
「走れ!」
 ヨリスが立ち止まり、再度命じた。ミズルカがヨリスに激突する。今度の命令で金縛りが解けたように体が動いた。アイオラとリーンを先に行かせ、アウィンが最後尾についた。
 五人は一かたまりになって廊下を走った。
 金属の足音が追いかけてくる。
 最初の四つ辻を五人は右に曲がった。直後、耳をつんざく音がして、曲がり角の壁に大量の(つぶて)のようなものが浴びせられた。
 アウィンは振り返りたい衝動を堪えてアイオラの背中を追った。
 今のはなんだ? 地球兵器か? わかるのは、壁に浴びせられたのと同じ礫が人体に当たったら、ひとたまりもないだろうということだった。
 美しい音色が響いた。しかも、誰もいない頭上から聞こえた。
 音色のあと、男の冷たい声が告げた。
『いなくなれ』
 先行するリーンが、素早く左右を見回した。それはリーン自身が放った言葉だった。
『いなくなるのはお前たちのほうだ』
 なるほど、先の音色は重要な知らせが行われる先触れだったようだ。新しい報の公布を知らせる喇叭のように。
 再びの右折。
 両開きの扉があった。月のような灰白色の扉。ヨリスが、ついでミズルカが扉の向こうに飛び込んだ。
 扉の向こう側は、広間を見下ろす吹き抜けで、壁沿いに廊下があった。右の壁に沿って一行は走る。どこへ? 知るか! 爆発音。アウィンの後ろで両開きの扉が吹き飛んだ。広間に落ちて轟音を響かせる。アウィンは背後にただならぬ熱気を感じた。服越しに背中の産毛(うぶげ)がチリチリと焦げるようだった。
「くたばれ!」
 とりあえず罵った。追跡者が使っているのが地球兵器ならば、剣や弓矢が通用する相手ではないだろう。
 廊下にある扉をヨリスが開き、全員が後に続いた。最後尾のアウィンは、扉を閉めても無駄ではないかと思ったが、そんなことはなかった。閉めた扉が、あの礫を浴びせられる音を立てたからだ。
 リーンが走りながら言った。
「月じゃない」
 扉の向こうはまた廊下。扉が並ぶ廊下。ヨリスが真正面の扉を開けた。
 そこは逃げ場のない小部屋だった。
 扉を閉ざし、五人は息を殺して追跡者の足音が遠ざかるのを待った。奴には俺たちの居場所がわかるんじゃないか? アウィンは恐れた。蛇のように、体温で獲物の居場所がわかるのかもしれない。それかとんでもなく耳が良くて、こちらの息遣いが聞こえているとか。
 だが、幸いにして追跡者の足音は小部屋の前を素通りし、いずこかへ消えていった。
 ヨリスが詰めていた息を吐いた。
「イマエダ大尉、『月じゃない』とはどういう意味だ」
「はっ。私が現場に居合わせたとき、月は……『砂の書記官』かもしれません、あるいは両者を媒介するマナかも……我ら言語生命体に対し、可能性を選択せよと言いました。まるで話者の主体性がそこにないような、他人事のように。
 我らが月の存在しない可能性を望んだからといって、やり返すような……我らのほうを消そうとする存在という感触はなかったのです」
「だが現実に我らは追われている」ヨリスは自分の言葉に疑問を挟んだ。「現実?」
 俺たちのかわいいお月さまは、『砂の書記官』と分離した寂しさで攻撃的になっちまったのかもしれないぜ。アウィンは思ったが、黙っていた。ヨリスが何を言い出すかのほうが重要だった。ヨリスの疑問符にはぞっとするものがあった。
「これが現実だとしたら、我々は都にいる」
 ここは都だと、ヨリスは呟いた。
「そのはずだ。そして、地球兵器などない。我らを追い回す者がいるとしたら、日輪連盟の兵士だろう」
「しかし、ヨリス少佐」
 アイオラが小部屋の壁に向き合って、軽く叩いてから、さも残念そうにうなだれた。
「この空間は消えません」
「それでも都だ」
「どうすればいいのですか?」
「信じろ」ヨリスは強く言った。「ここは都だと。我らは月に矢を放ったあの通りから一歩たりとも動いていない」
「ですが、見る限りここは私たちの知るどのような場所でもありません」
「ならば見えていないところが都なのだろう」
 ヨリスは小部屋の扉に目をやるが、他の四人の誰にも扉を開ける勇気がなかった。これはつまり、不条理を受け入れろという話なのだ。扉の向こうが都の通りであっても、または灰白色の廊下でも、同じくらい不条理なのだ。
「イマエダ大尉」
 不意に、ヨリスがいいことを思いついたと言わんばかりの口調になった。
「はっ」
「この扉を開くことができたらプリンタルトを作ってくれよう」
 リーンの目に希望の輝きが宿った。そこにもアウィンは不条理を見た。マジかよ。食い意地張ってるのは知ってるけど、そこまでか?
 リーンはつかつかと扉に歩み寄り、取っ手に手を置いた。
「ここは都だ……」
 呪文のように呟いて、一気に扉を引いた。
 宣言する。
「ここは都だ!」
 扉が開かれると同時に、小部屋に熱風が吹き荒れた。
 部屋の外は都で、火事だった。物の燃える音と、臭い、煙が吹き込んでくる。木造の家が焼け崩れる音が遠からず聞こえた。
 目の前には熱い石畳の舗道。
 と、その景色が急速に遠かった。
 小部屋が延びて、出入り口が遠ざかる。
 扉の向こうの景色は一枚の風景画ほどの小ささになり、熱気や臭気、火災につきものの騒音もろとも遠くなっていく。
「脱出する」ヨリスが宣言した。「アッシュナイト中尉、今度は君が先頭だ。急げ!」
 アウィンは走り出した。体が動けば、全速力となるのに時間は要さなかった。訓練された軍人とはそういうものだ。学生時代、短距離走は常に学年三位以内だった。見てろよ! アウィンは足を飛ばす。だが、同じ速さで空間が延び、扉が遠ざかっているように思えた。
 もっと早く! もっとだ!
 自分に喝を入れるアウィンの横で、左隣の壁から人影のようなものが出てきた。アウィンは立ち止まらなかった。
 だが声は聞いた。
『千年』少女の声だった。『私は砂の中で一人だった』
「何を言う?」最後列のヨリスは走りながら尋ねた。全く息が乱れていない。「貴様は『砂の書記官』なのか?」
 少女の声が囁く。
『寂しい……寂しい……』
「なるほど」ヨリスは独り言を呟いた。「そうか」と。
 扉が遠ざかっている気がしたのは錯覚だった。
 出られる。
 頬に火災の熱気を受けてアウィンは確信した。ここを出たら火災の中に飛び込むことになるわけだが、ここよりはマシだ。
 走る五人の足音のうち、一人分の足音が減った。
「君たちは行け!」
 直後、扉が急激に近くなった。アウィンはほとんど意識せずに熱風の中に躍り出た。
 息苦しい。
 そこは、確かにアウィンが月に向かって矢を放った地点だった。
「お前ら、こっちだ!」
 仲間の声がした。
 振り向くと、後ろの路地でお調子者のクラウス・リッカード中尉が大きく腕を振っていた。アウィンの後ろにはアイオラがいた。ミズルカも、リーンもいた。
 アウィンはクラウスのもとに駆け寄った。強攻大隊時代のクラウスの直属の上官、ユン上級大尉も一緒だった。
「全員、無事か?」
 クラウスの問いにミズルカが呻く。
「いない……」
 火災から少しだけ離れた路地で、月と炎と天球儀の光を浴びながら、ミズルカが絶望的な叫びをあげた。
「ヨリス少佐がいない!」


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登場人物紹介

◆ミスリル・フーケ

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


『暗殺者を狩る暗殺者』の育成機関、コブレン自警団の団長の一番弟子。正義感が強く、好戦的で熱血だけど気分屋なのでいきなり冷める。自分のことを暗殺者だと思ってるわりに騒々しい。11歳のときに実の母親との間にできた娘が「いないつってんだろっ!!」いません(忖度)。

画像は「このカス野郎をどう始末してやろうか」と思案しているときの顔。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アエリエ・フーケ

◆27歳/女性

◆所属:コブレン自警団


もとは豪商の娘だったがいろいろあって10歳で浮浪児となり、コブレン自警団に保護された。

女性ながら大鎌をはじめとする長柄武器の扱いに長け、ミスリルの行くところにはどこにでもついて回って敵の生首を刎ね飛ばす。恐い。ちょっと恐い。笑顔がちょっと恐い。足許にひれ伏すと踏んでくれる。マゾは急げ!


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆マリステス・オーサー

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称テス。鳥好きで頭が緑とかいう実に安直な理由で『真鴨』とか『鴨』とか呼ばれている。

自閉傾向が顕著に強く、表情の変化の乏しさと相俟って「何を考えているのかわからない」という印象を与えがちだが、感じる力も考える力も強いほう。

コミュ障の自覚があるため、コミュ力の高い兄弟子のトビィに対してとても屈託している(嫌ってるわけではない(むしろ大好き(面倒くさいタイプ)))。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アザリアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称アズ。自警団の武術師範の一人であるオーサー師の一番弟子。30歳以下の自警団主力戦闘員の中では第一位の戦闘能力を持つ。

戦いになると実に容赦ないが、素の性格はシャイで温厚。天然だけど人から天然って言われると傷つく(繊細)。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆トビアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称トビィ。アズの双子の兄弟。長柄武器を得意とするほか、犬を訓練する技能を持つ。陽気でとっても優しくて、子供と動物が大好きな親しみやすいお兄さんだよ! たまに笑いながら人殺しちゃうけど……。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆レミ・イスタル

◆25歳/女性

◆所属:コブレン自警団


イスタル師の二番弟子。朝寝坊クイーン。三人一組が基本となる重要な仕事ではアズ&トビィと組むことが多く、この二人と一緒にいる日は朝自分から起きてこない。

生真面目かつ強気にふるまっている反動か、妹のようにかわいがってくれる人の前では子供のように無邪気な態度になる。かと思えば妙に機嫌が悪いときもある。特に朝。朝。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆リレーネ・リリクレスト

◆17歳/女性

◆所属:北方領リリクレスト公爵家


北方領リリクレスト家の公女だが、他家に嫁がせるためのお飾りとして育てられた。でも根が逞しいので環境への適応力が高い。


リリクレスト家は惑星アースフィアが移住可能な環境になる遥か以前から続く古い家であり、その血筋は地球における最初の10体の言語生命体試作品にまで遡るとされている。

それゆえ言語生命体の神である地球人からさえも重んじられ、宇宙戦争が行われた時代に授与された宝冠が数千年ものあいだ家宝として受け継がれてきたがリレーネが6歳のときに壊しちゃった。昔お転婆だったから壊しちゃった。

6歳だけどさすがにこれはヤバイと思って庭に埋めてしまった。

家じゅう大騒ぎになってたけど無駄に意志が固いので沈黙を守り抜いた。

ときおり思い出して寝れなくなる。

たぶん今も埋まっている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆リージェス・アークライト

◆22歳/男性

◆所属:北方領陸軍


北方領陸軍で最もぼっち飯が似合う男と恐れられる若き護衛武官。階級は少尉。士官学生時代は優等生だった。毎日ぼっち飯だったけど。

なんだかんだでお人好しなので、試験の前にノートを貸してくれと泣き付かれて貸したら試験が終わるまで返ってこなかったりしたタイプ。怒っていいと思う。


巻き込まれ型の不幸体質なので登場するたびにひどい目に遭う。

仮にもシリーズ第1作目のメインヒーローが何故このような扱いをされるのかと思うと不憫で笑いが止まらない。

ごめん間違えた。

涙が止まらない。


とってつけたように言うけどリレーネ付きの護衛である。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

(過去作での名はリージェス・メリルクロウ)

◆パンジェニー・ロクシ

◆22歳/女性

◆所属:北方領陸軍


北方領の護衛武官。試験が終わるまでリージェスにノートを返さなかった犯人。

本編ではリレーネとリージェスが南西領に潜入するのに協力したが、コブレンの手前ではぐれたらしい。過去作を読まれた方のうちの実に99%以上が忘却の彼方へと葬り去ったであろう、シリーズ一作目からのリベンジャー。それでは一言意気込みをどうぞ。

「パンジーって呼んでよ(血涙)」


◆初登場回:8章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

◆リアンセ・ホーリーバーチ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


陸軍情報部の間諜。間諜は単独での潜入が必要となる任務が多いため、油断を誘うべく実年齢より幼く見える格好を普段からしている。上腕二頭筋とかムキムキだけど。任務のためだけでなく、本人もかわいい服や小物が大好きである。背筋とかゴリゴリだけど。その甲斐あってか潜入や工作の成功率が非常に高く、情報部内ですら(服の上からの)外見に騙される者が一定数いる。腹筋とかバキバキだけど。

でもそれは、強くなければ生き残れないことをよく知っているからこそ。毒舌だったり辛辣なところがあるけれど、姉と妹のことは大好きな三姉妹の次女。

シリーズ1作目からいるけど登場するたびに箍が外れていく。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆シルヴェリア・ダーシェルナキ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領総督シグレイの長子。自分の軍隊が欲しくて18歳のお誕生日に少将の官位を買ってしまった(買ってしまった)。

買官によって権威を得た者に武官たちが向ける目は冷ややかなものだが、シルヴェリアは卓抜した手腕によってたちまち最悪の評価を覆した。

ただし露出の多い服装で人前に出たり、高貴な身分の人間が口にすべきでない単語や言いまわしを使いこなしたり、好色が過ぎて男女問わず手を出したりと問題行動が多い。


弟妹が5人いるのだが、2歳年下の妹エーリカには嫌われている。

もともとプライドが高いエーリカのコンプレックスを刺激しがちなうえ、10歳の頃にエーリカが丁寧に作った押し花を目の前でムッシャムッシャバリボリと貪り食ってからは蛇蝎の如く嫌われている。

何故そんなことをしたのか全くわからない点もまた嫌われている。

しかも父シグレイがその件でシルヴェリアを叱責しなかったので必要以上に嫌われている。

まあとにかく嫌われている。

結論:全部パパが悪い。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆フェン・アルドロス

◆37歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


シルヴェリアの副官。美少年のような色香を漂わせる37歳独身美熟女というちょっとどういう層を狙っているのかよくわからない逸材。お遊びの度が過ぎ、陸軍司令部で17股をかけていたことがばれて無事職場の人間関係を崩壊させる。

前線送りとなった先で出会ったシルヴェリアとはすぐに意気投合し、同性の愛人の座を獲得した。

しかしながら誰にでも見境なくちょっかいを出すわけではなく、性的合意があっても未熟過ぎたり責任能力のない相手には一切手出ししない。当たり前のことなんだけど……。

シオネビュラ神官団のメイファ・アルドロスの実の姉。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆マグダリス・ヨリス

◆35歳/男性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


歩兵精鋭部隊を指揮する大隊長だったが、編成中だった親衛連隊内の一個大隊を鍛えるべくシルヴェリアに抜擢されていた。階級は少佐。陸軍内においては『歩く殺戮装置』とか『三つ編み三十代』とか陰口を叩かれる。

高潔さと冷酷さを併せ持ち、他人に厳しいが自分に対してはもっと厳しいので立場の弱い者たちからは愛されている。

ときに行動が大胆なだけでなく、天才的な剣の腕を持つため恐い人だと思われることもしばしば。大丈夫。恐くない。たまに一人で百人殺しちゃうだけだ。よくあるよくある。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ヴァンスベール・リンセル

◆20歳/男性

◆所属:南西領陸軍


通称ヴァン。前線部隊に配属されたばかりの士官学校の新卒。リンセル家は海軍士官を多く輩出する家柄だが、本人曰く「伯父さんが恐いから陸軍に来た」。でも本当は船酔いするからである。実は馬にも酔う。

一見してそんなに強そうには見えないけれど実力派のダークホース。士官学校の剣術の成績は一、二を争うレベルだった。なお座学に関しては下から一、二を争うレベルだった模様。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆プリシラ・ホーリーバーチ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍


通称プリス。ロザリア、リアンセに続くホーリーバーチ家三姉妹の三女。お姉ちゃんたちが大好きで、リアンセが父親を見限って西方領を出奔するとき一緒に家を出てしまった。

11歳で家をでた娘を心配して母親は父に内緒で送金してくれたのだが、そのお金で「神学校に通う」と嘘をついて陸軍士官学校を卒業。

性格は明るく大胆で、良くも悪くも自分に正直。

陸軍広報部徴募部隊所属。ヴァンとは士官学校の同期の間柄。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆アイオラ・コティー

◆26歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領陸軍の歩兵部隊指揮官で、階級は中尉。弓術・馬術に秀でるほか、詩人の才をも併せ持つ画伯。特に男性同士の濃厚な接触の模様を描いた画を得意とし、それらの作品は女性士官たちの間でひっそりと流通している。

反乱によって中隊を追われたのちは手許にある過去作と新作を火にくべてから都解放軍に合流。「いつどこで討ち死にしようともこれで私の秘密は守られる」と思ったようだが、まさかこんなところでバラされているとは夢にも思うまい。


◆初登場回:20章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ララセル・ハーティ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍


エーリカの専属護衛で、侍従長を兼任する。階級は大尉。クールビューティーなので周囲から勝手に有能そうだと期待されるけど、何かが人よりずば抜けているわけではないので結局勝手にがっかりされる。

冷たい印象の見た目に反して性格は至って素朴で素直。「あっち向いてホイ→」ってやったら全く何の疑問も抱かずに顔を「→」ってやっちゃうくらい素直。褒められて伸びるタイプだと思う。かわいがってあげて……カワイガッテアゲテ……カッ…………カワイガッ…テ…………………………カ……………ゲテ……………………。


◆初登場回:21章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆エーリカ・ダーシェルナキ

◆18歳/女性

◆所属:南西領ダーシェルナキ公爵家


ダーシェルナキ家の第二子。こじらせてるシスコン。

グロリアナ領主ゼラ・セレテスに言い寄って困らせているけど自分は四十手前のトリエスタ伯に言い寄られて困っている。

それではトリエスタ伯に一言

「死にさらせですわ!」

口汚ぇですわ。

そして怖くて誰も指摘しないんだけどインテリアの趣味が悪い。


◆初登場回:10章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミサヤ・クサナギ

◆31歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団二位神官将補。農民の出だが村をあげての推挙と資金援助を得て高位聖職者になる夢を叶えた地元大好きお姉さん。それでは南東領ソラート地方のいいところを語っていただきましょう。



「ソラートの富の源は潤沢な湧き水にある。平原を裂いて流れる水と温暖な気候は滋味豊かな作物を育て、その地方の最も貧しい村の民ですら、まず飢え渇くということがない。澄んだ空気と穏やかな野山に囲まれた環境が人を朗らかにすることから療養地としての人気も高い。かくいう私の夫も、喘息の治療のため幼少期に都から移り住んだ口だ。田舎にありがちな排他的な空気もソラートにはなく、そのため移り住む者がもたらす知識や技術が容易に根付き、その地をさらに住みよい場所にするのだ。無論、これほど恵まれた土地であるから、無闇に野山を切り開いたり、または武力で支配しようとする者たちも多くいた。一つはっきり断っておきたいのだが、住民が温和であることは、侵入者や圧政者への従順とは結びつかない。歴代の……(※これがあと30分続く)


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆ゾレア

◆14歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団の従軍歌流民。浮世離れしたミステリアスな少女(※ぼーっとしているだけだ)。


歌流民とは、野山に身を置く流浪の民。大陸中に散らばる彼らは共通する生活様式を持っており、すなわち氏族の歌い手は、歌うときしか声を出さない。

ゾレアの氏族は戦時に歌を売るのみでなく、平時にキノコや薬草を原料とする丸薬を作っていた。歌流民の神秘の力で病が癒されるという思い込みによって服用者の本来の自然治癒力を引き出し、さも薬が効いているかのように見せかけるただの黒い粒である。人体って不思議。

ソラートの住人たちは知っているので買わない。「本体価格よりレジにて20%オフ」とか言われても買わない。


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

 なし

◆エルーシヤ

◆17歳/女性

◆所属:-


ゾレアと同じく歌流民の少女であり、歌うときにしか声を出さない。その生活で得た不思議な感性を有しておれど、中身は普通の女の子。田舎暮らしが嫌になって逃げてきてしまった。今は陸軍広報部のプリシラ・ホーリーバーチ少尉と行動を共にしている。


都の星獣祭で配られる胡桃の護符は、北ルナリアやグロリアナの山塊を塒とする彼女の氏族が歌によって清めながら作るものだ。胡桃の可食部はクッキーにしてグロリアナの周辺で売られる。商品名は「グロリアナに行ってきましたクッキー」とかだろうか。知らんけど。


ちなみに「エルーシヤ」は歌流民の中でありふれた女性名であり、『失語の鳥』の番外編に出てくるエルーシヤとは完全に別人。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆マナ

◆14歳(※肉体年齢)/女性

◆所属:-


旅の途中でミスリルが出会う謎めいた少女。自称ミスリルの娘。もし本当に娘だったらミスリルが11歳のときの子になるのだが、当然ながら彼に心当たりはない。心当たりどころか女性と手を繋いで街を歩いたことすらない。

14歳という年齢は推定であり自称。なお生まれてきたとき既に14歳だった。


◆初登場回:6章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆シンクルス・ライトアロー

◆25歳/男性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


ヨリスタルジェニカ神官団正位神官将。政争によって傾きかけた西方領の名家の嫡男で、家の再興のために父親によって南西領に送り込まれた。古風な喋り方が特徴だが、ここだけの話普通に喋ろうと思えば喋れる。


過集中と注意力散漫を繰り返す。黙ってさえいればとても美形なのにいらんことまでよく喋る。実家は太いが傾きかけている。頭が良くて弁も立つけどこれっぽっちも自重できない。

そんな残念なタイプの天才だが、物事は前向きに考えよう。

普段はあちらこちらに興味の対象が移ろうが、並外れた集中力を発揮した際の成果は素晴らしい。近寄りがたいほどの美形だが、中身は気さくで親しみやすい。実家も傾きかけたとはいえまだ太い。自然に振る舞うだけで目立ってしまうのは自信家で聡明だからである。

残念なタイプの天才なのではない。

天才なタイプの残念なのだ。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ロザリア・ライトアロー

◆25歳/女性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


正位神官将夫人。シンクルスの妻であり、リアンセとプリスの姉。西方領出身。

シンクルスと初めて顔を合わせたのは三歳のときで、このとき既にライトアロー家とホーリーバーチ家の第一子同士として結ばれることが決まっていた。

親同士が決めた結婚とはいえ、成長に従い二人は自然に惹かれあうようになった。

政治的なごたごたから逃れるべく、ロザリアとシンクルスは南西領の神学校に入り直すことが決まり家を出る。同じ時期に、リアンセは父親の当主としての資質に疑問を抱き出奔。

家族喧嘩の最中に妹のリアンセ(脳筋)がカッとなって父親の頭を壺でぶん殴り、心配して見に来たシンクルスが我慢できずに腹を抱えて笑うのを見て以来「実はこの人ちょっとバカなんじゃないか」と思っている。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆レグロ・ヒューム

◆34歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将。

独特の個性と落ち着きなさゆえに生家では「将来の見込みなし」と冷遇されていたが、実際大人になったら兄弟の中で一番有能だったというオチがつく。たぶんヒューム家はもう終わっとる。

他のことはともかく仕事はできるというタイプ。

何故かしら自分のことを美男子だと思っている(根拠不明)。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆メイファ・アルドロス

◆32歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将補を務めるクレイジー長広舌。南西領陸軍のフェン・アルドロスの妹。

アルドロス家の後継がフェンとメイファしかいない事実からお察しいただける通り、もうアルドロス家も終わっとる。

人間としての中身に関しては姉より多少マシなレベル。

甲冑の上から乳首の位置を当てる能力を持っている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ニコシア・コールディー

◆29歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将。真面目で責任感が強い性格。二位神官将に対する態度が横柄だが、これでもかつては敬意を払っていた。

出身もシオネビュラ西部で、居城である西神殿の近くに妹夫婦が住んでいる。市内巡行の際など幼い姪が「おばさまー!」と手を振ってくる。

「お姉さまと呼べ」と思っている。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミオン・ジェイル

◆25歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将補。神学校卒業から僅か一年で現在の地位に抜擢された経歴を持つ。振る舞いは優等生然としているが口が悪い。

ジェイル家は家格が低く、神学校には長男である兄しか通えないはずだったが、武芸と学問の両方で兄より優れていることを証明し、進学の権利を勝ち取った。この生い立ちゆえに成果主義者である。

現在の地位を得てから両親は掌を返してちやほやしだしたが、家督を継ぐ気はない。ジェイル家も終わっとる。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ゼラ・セレテス

◆25歳/男性

◆所属:ソレリア民兵団


グロリアナ領主にしてソレリア民兵団代表。セレテス家は吹けば飛ぶような底辺領主(((失礼)))ながら、質実剛健を旨とする家風によってグロリアナ領を堅実に治めてきた。

セレテス流炎剣術の継承者。一子相伝なので、ゼラが死んだら剣術も絶える。


性格はやや強情で、数年前に自分で育てた野菜を上流貴族の客に供したところ「痩せた土で育った貧乏くさい味」と馬鹿にされ、「嫌なら召し上がらなくて結構でございます」と言って皿を下げ父親にこっぴどく怒られた。

以来、気にいらない客に対しては問答無用で畑を手伝わせている。


◆初登場回:3章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

付録◆アースフィア世界の度量衡


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◇長さの単位


基本単位はセスタセリオン。地域や職業によってセスタ尺とセリオン尺が使い分けられる。


1セスタ=2.5㎝

1セリオン=7.5㎝

1リセスタ(1リセリオン)=1/10セスタ(1/10セリオン)

1ニ―セスタ(1二―セリオン)=100セスタ(100セリオン)

1デセスタ(1デセリオン)=100ニーセスタ(100ニ―セリオン)

1クレッセスタ(1クレッセリオン)=10デセスタ(10デセリオン)


言語生命体たちが地球で創造主たちと暮らしていた時代、言語生命体の独立をかけた戦に異を唱え、地球人信仰を保つよう呼びかけた姉弟がいた。

姉の名はセスタ。弟の名はセリオン。

二人は同胞によって捕らえられ、両手をすりおろす拷問にかけられた。

救出されたとき、セスタの手首の関節より先の長さは2.5㎝、セリオンは7.5㎝しか残っていなかったと伝えられる。


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◇重さの単位


基本単位はケララ

ケララは麦をさす言葉だが、教会の伝統において典礼及び典礼聖歌を意味することもある。


1ケララ=2.5g

1リケララ=1/10ケララ

1ニーケララ=100ケララ

1デケララ=100ニーケララ

1クレスケララ=10デケララ


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◇体積の単位


基本体積はダータ。野蜜の意であり、血液ないし精液を暗喩する。


1ダータ=25ml

リダータ=1/10ダータ

ニーダータ=100ダータ

デダータ=100ニーダータ

クレスダータ=10デダータ

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