市街での戦い(1)

文字数 3,999文字

 2.

 ミスリルは目測する。
 (サイ)と己の距離は二十歩。突進をかけられた場合、この狭い通路で接触せずに()け切る自信はない。
 犀の後ろにいる男は、明らかに民間人ではないとわかる(たたず)まいの髭面(ひげづら)。行商途中の商人といった出で立ちだが、弩を胸壁に立てかけて置き、今は片手剣を下段に構えている。犀が一撃でミスリルを仕留め損ねても、次はあの男が控えているというわけだ。
 犀は唸り、だがそれは低い獣の唸りではなく、水中でごぼごぼと息を吐く、溺れるような音だった。水の蹄でいらいらと床を掻き、ミスリルの出方を待っている。
 次には後ろに立つ男の唸りが徐々に高くなり、喉が開く。ヒゲに埋もれた唇が動き、それは明瞭な声になり、歌になった。
 この動物が星獣化する前の生息環境の音を擬音化したもので、歌詞はなくとも、濁った水の重い揺らめきがミスリルの皮膚に感じられた。泥水に鼻まで使っているような錯覚まで覚える。
 ミスリルは腕を下ろし、中央の棍に両手をかける。それを縦方向に振り回し始めた。
 次第に加速をつけていく。
 間もなくその鈍器は目にも止まらぬ高速回転となり、左右の棍がいくつにも分裂して見え、先端の(おもり)が恐ろしい勢いで舗道を削り散らしていく。ミスリルの体の前面を覆うように現れた回転する棍の円が、ミスリルの腕の動きに合わせて左に動き、右に動き、また左に動く。
 これはただの威嚇だ。だが効果は十分だった。相手がどれほどの剣士であろうと、この武器の恐ろしさは理解できたはずだ。
 三本の棍のどこを握るかで射程は自由自在に変わり、変幻自在な動きのせいで攻撃は予測不可能。
 髭面は歌う。
 踏み分けられる草の音。物音がどこまでも続く草原――。
 犀の体内の七割がたが水で満たされていることに気づいたのは、歌に合わせてその水が泡立ちはじめたからだった。煮え立っているのだろうか。犀が一層激しく床を掻く。身震いし、短い首を仰け反らせ、口からあのごぼごぼという音をこぼした。獣の咆哮には程遠い。だがそれは間違いなく、戦闘開始を告げる合図だった。
 棍の回転を止めた。右手を右端の棍に移し、鞭のように大きく左に振って体に巻きつける。
 犀が、顎を引き、角を見せつけながら突進をかけてきた。
 息を止め、ミスリルはその巨体を迎えた。
 棍を左に振る。
 まだ射程に入らない。
 床を蹴る。ほとんど体を前倒しにするように飛び出して、腰にひねりを加えながら体を一回転。もう一度棍を左に振った。
 錘がガラスにのめり込むような感触があった。
 (つの)に当たったのだ。
 そのひび割れた角はもう、残り一秒でミスリルの腹と胸を貫ける距離にあった。
 跳ね返ってきた左端の棍を左手で掴む。踊るような足さばきで右の壁際へ。体の左側ぎりぎりを、真紅の犀が通り抜けた。(あか)い胴、揺れる渦模様に縞模様、中で荒れ狂う水と、それを透かして見える向こうの景色。それらがミスリルの精神に錯乱を誘い、だがミスリルは誘いには乗らず、眼差しを前に飛ばす。
 星獣の持ち主は、ミスリルが犀を回避し得るという予測はできていたようだ。両手剣を抜いて待ち構えていた。
 針を束ねた鋭い尾を(かわ)し、通路の端から中央へと躍り出たミスリルへと剣を大きく振り上げる。
 そのときにはもうミスリルは、剣を振り下ろしても無駄なほど相手の懐深くにもぐりこんでいた。
 自警団に伝わる近接格闘術の独特の歩法ゆえに、正対すれば、相手がどれほど迫ってきていても動いているようには見えないのだ。結果、間合いを測るなどという悠長なことをしているあいだに手遅れになる。
 ミスリルはごく短く持った棍で敵の眉間を打った。殺すつもりはない。少しの間動きを封じられればよい。敵の膝が砕ける。
 犀の二度目の攻撃に備えて振り向いたミスリルは、その巨体がもう向きを変えいるのを見て取った。持ち主もろとも巻き込むつもりか、次の突進に備えて身構える。
 と、その後ろ足に紐のようなものが巻きついた。
 真紅の体がミスリルの網膜に強い印象を焼き付けながら横倒しになる。
 その向こうに立つ女が初めて見えた。
「なんでお前が来るんだよ」
 飴色の髪。細く尖った顎と尖った目線。鋭く冷たい気配を待とうその女は、エーデリアだった。
 コブレン自警団の好敵手、市内第二位の勢力〈タターリス〉の幹部の一人だった。
「はぁ? デカいだけが取り柄の相手に手こずってる坊やが偉そうに」
「手こずってないし! まだ戦い始めたばっかだし!」
 と、殺気を感じて摺り足で左に飛びのく。左手で真横に手刀(しゅとう)を繰り出せば、それが誰かの顔面に直撃する手応えを得た。
 よろめきながら後ずさるその男を、ミスリルはもう相手にしなかった。犀が短い足を胴体に引き寄せ、立ち上がろうとしていた。
 三節棍を振り上げて、頭上で円を描く。
 二周。三周。
 背後では、星獣を戦いに駆り立てる歌が歌われる。
 大きな唸りとともに、棍と先端の錘とが、犀の額に叩きつけられた。
「黙れ!」
 腕を引き、左端の棍を手繰り寄せて左手で握った。
「お前がその気なら、殺すぞ」
 だが、男はそれ以上ミスリルたちを直接相手にしようとしなかった。よろめきながら駆け去っていく気配。ミスリルとエーデリアの間には、三節棍の威力によって再び顎を床に叩きつけられた星獣、そして歌の余韻が残された。
 棍と鞭、それぞれが獣を打ち続けるが、それでも星獣立ち上がりつつあった。
 星獣の模様が動く場合、それを凝視してはならない。
 知ってはいても、ミスリルは見た。
 犀の胴体に蠢く黒い線や渦は、遠い沼沢(しょうたく)、南西領には生息しないこの生き物が星獣と化す以前の自然を映していた。
 見えない指がつまむように、模様、それが描く星獣の曖昧な自我、かろうじて留められた生体の記録が集められ、すり潰され、鎖のように引き伸ばされてその全身を巻いていく。
顕鎖(けんさ)――」
 呻くように呟く。
 それからエーデリアに叫んだ。
「エーデリア! 歌え!」なおも加速をつけた三節棍を全力で犀の額に叩きつける。ついぞ角が砕けたが、立ち上がるのをこれ以上阻止できそうになかった。「(なだ)めるんだ。こいつ化生(けしょう)になるぞ!」
「はぁ?」振り回される針の尾を回避しながらも、エーデリアは(たく)みに鞭を繰り出して打撃を与え続けていた。「偉そうに。お前が歌えばいいじゃない」
「顕鎖が始まってる。わからないのか!」
「だからお前が早く歌えばいいんだ! 馬鹿め!」
 星獣を戦に駆り立てる歌があるように、宥める歌、御する歌もある。今、どれほど効果があるかはわからないが。
 犀がいよいよ立ち上がり、身震いした。エーデリアの姿が見えなくなる。
「馬鹿はお前だ!」三節棍で前足を打つが、関節のない足に、その打撃はさほど有効ではなかった。「こういうときは強いほうが攻撃続けて弱いほうが歌うのが定石だろ!?」
「は? 舐め腐ってんのか童貞」エーデリアも負けていない。「殺すぞ」
 突進が来る。
「童貞じゃない!!」
 星獣の体を巻く鎖が、その体に一層きつく巻きついたように見えた。声なき声、溺れる者のあぶくの音が不気味に膨れ上がる。
 間一髪、ミスリルは胸壁をつかみ、ひらりと飛び乗った。残された牙が空振りし、犀が地団駄を踏む。
 それは獲物を逃した苛立ちからというよりは、苦痛に耐えかねての動きに見えた。
「ああ、そうそう」エーデリアの鞭の一撃が、ついぞ針の尾の付け根に穴を穿った。「思い出した。童貞じゃなくて純潔だったわね」
「おい。……おい。殺すぞ。そっちこそ」
「あたしはいつでもいいわよ。()る?」
()ってやる」
 城壁の上、通路に立つエーデリアと胸壁上に立つミスリルの、敵意に満ちた視線が互いを突き刺しあった。星獣の口から音がこぼれる。ゴボゴボゴボゴボ。
 ミスリルは右端の棍を握り、先端をエーデリアに突きつけた。錘をこれ見よがしに揺らす。エーデリアもまた鞭を短く持って床を打ち、敷石を砕いて散らした。
 そこへ。
 黒い疾風が来る。
 ミスリルも、エーデリアも、互いから目をそらした。反対側の胸壁。その障壁体(しょうへきたい)の隙間を飛び越えながら、黒い大鎌を振りかざし、黒に近い藍色の髪をなびかせて、それは駆けてきた。視認が遅れ、身構えたミスリルは危うくそれを敵と誤認するところだった。
 掛け声も、(とき)の声もなく、アエリエが障壁体の上で飛び上がる。大鎌を上段に構え、振り下ろし、その刃を深々と犀の背中に突き立てた。
 側転。ミスリル同様に、胸壁の上に退避する。
 大鎌が、犀の体を黒く巻く模様を分断した。
 吠えることもできない哀れな星獣は、ゴボゴボ、ゴボゴボ、ただその音で何かを訴えながら、背中に大鎌を立てたまま、城壁の上を直進していった。
「鎖は断ち切る」
 静かに、しかし力強く宣言するアエリエは、笑みさえ浮かべていた。ミスリルは安堵しながら頷いた。
「遅いぞ。どうしたんだ」
「あの尻尾で打たれて動けなくなってた人たちがいたの」
 星獣の体を巻く模様が、大鎌で分断されたところから(ほど)けていく。その模様は、灰のような砂のような黒い粒となって、床に道筋を描いた。
「やっぱり今のが致命打ね。潜鎖(せんさ)が始まってるわ」
 この城壁は円形だ。我を失った星獣は、カーブを曲がりきれなかった。胸壁にぶつかり、つんのめる。障壁体はその巨体の胸にまで届いておらず、犀は見苦しい前転でもって胸壁を乗り越えた。地面に向かって姿を消し、砕け散る音で、その末路を三人の耳に伝えた。


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登場人物紹介

◆ミスリル・フーケ

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


『暗殺者を狩る暗殺者』の育成機関、コブレン自警団の団長の一番弟子。正義感が強く、好戦的で熱血だけど気分屋なのでいきなり冷める。自分のことを暗殺者だと思ってるわりに騒々しい。11歳のときに実の母親との間にできた娘が「いないつってんだろっ!!」いません(忖度)。

画像は「このカス野郎をどう始末してやろうか」と思案しているときの顔。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アエリエ・フーケ

◆27歳/女性

◆所属:コブレン自警団


もとは豪商の娘だったがいろいろあって10歳で浮浪児となり、コブレン自警団に保護された。

女性ながら大鎌をはじめとする長柄武器の扱いに長け、ミスリルの行くところにはどこにでもついて回って敵の生首を刎ね飛ばす。恐い。ちょっと恐い。笑顔がちょっと恐い。足許にひれ伏すと踏んでくれる。マゾは急げ!


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆マリステス・オーサー

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称テス。鳥好きで頭が緑とかいう実に安直な理由で『真鴨』とか『鴨』とか呼ばれている。

自閉傾向が顕著に強く、表情の変化の乏しさと相俟って「何を考えているのかわからない」という印象を与えがちだが、感じる力も考える力も強いほう。

コミュ障の自覚があるため、コミュ力の高い兄弟子のトビィに対してとても屈託している(嫌ってるわけではない(むしろ大好き(面倒くさいタイプ)))。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アザリアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称アズ。自警団の武術師範の一人であるオーサー師の一番弟子。30歳以下の自警団主力戦闘員の中では第一位の戦闘能力を持つ。

戦いになると実に容赦ないが、素の性格はシャイで温厚。天然だけど人から天然って言われると傷つく(繊細)。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆トビアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称トビィ。アズの双子の兄弟。長柄武器を得意とするほか、犬を訓練する技能を持つ。陽気でとっても優しくて、子供と動物が大好きな親しみやすいお兄さんだよ! たまに笑いながら人殺しちゃうけど……。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆レミ・イスタル

◆25歳/女性

◆所属:コブレン自警団


イスタル師の二番弟子。朝寝坊クイーン。三人一組が基本となる重要な仕事ではアズ&トビィと組むことが多く、この二人と一緒にいる日は朝自分から起きてこない。

生真面目かつ強気にふるまっている反動か、妹のようにかわいがってくれる人の前では子供のように無邪気な態度になる。かと思えば妙に機嫌が悪いときもある。特に朝。朝。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆リレーネ・リリクレスト

◆17歳/女性

◆所属:北方領リリクレスト公爵家


北方領リリクレスト家の公女だが、他家に嫁がせるためのお飾りとして育てられた。でも根が逞しいので環境への適応力が高い。


リリクレスト家は惑星アースフィアが移住可能な環境になる遥か以前から続く古い家であり、その血筋は地球における最初の10体の言語生命体試作品にまで遡るとされている。

それゆえ言語生命体の神である地球人からさえも重んじられ、宇宙戦争が行われた時代に授与された宝冠が数千年ものあいだ家宝として受け継がれてきたがリレーネが6歳のときに壊しちゃった。昔お転婆だったから壊しちゃった。

6歳だけどさすがにこれはヤバイと思って庭に埋めてしまった。

家じゅう大騒ぎになってたけど無駄に意志が固いので沈黙を守り抜いた。

ときおり思い出して寝れなくなる。

たぶん今も埋まっている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆リージェス・アークライト

◆22歳/男性

◆所属:北方領陸軍


北方領陸軍で最もぼっち飯が似合う男と恐れられる若き護衛武官。階級は少尉。士官学生時代は優等生だった。毎日ぼっち飯だったけど。

なんだかんだでお人好しなので、試験の前にノートを貸してくれと泣き付かれて貸したら試験が終わるまで返ってこなかったりしたタイプ。怒っていいと思う。


巻き込まれ型の不幸体質なので登場するたびにひどい目に遭う。

仮にもシリーズ第1作目のメインヒーローが何故このような扱いをされるのかと思うと不憫で笑いが止まらない。

ごめん間違えた。

涙が止まらない。


とってつけたように言うけどリレーネ付きの護衛である。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

(過去作での名はリージェス・メリルクロウ)

◆パンジェニー・ロクシ

◆22歳/女性

◆所属:北方領陸軍


北方領の護衛武官。試験が終わるまでリージェスにノートを返さなかった犯人。

本編ではリレーネとリージェスが南西領に潜入するのに協力したが、コブレンの手前ではぐれたらしい。過去作を読まれた方のうちの実に99%以上が忘却の彼方へと葬り去ったであろう、シリーズ一作目からのリベンジャー。それでは一言意気込みをどうぞ。

「パンジーって呼んでよ(血涙)」


◆初登場回:8章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

◆リアンセ・ホーリーバーチ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


陸軍情報部の間諜。間諜は単独での潜入が必要となる任務が多いため、油断を誘うべく実年齢より幼く見える格好を普段からしている。上腕二頭筋とかムキムキだけど。任務のためだけでなく、本人もかわいい服や小物が大好きである。背筋とかゴリゴリだけど。その甲斐あってか潜入や工作の成功率が非常に高く、情報部内ですら(服の上からの)外見に騙される者が一定数いる。腹筋とかバキバキだけど。

でもそれは、強くなければ生き残れないことをよく知っているからこそ。毒舌だったり辛辣なところがあるけれど、姉と妹のことは大好きな三姉妹の次女。

シリーズ1作目からいるけど登場するたびに箍が外れていく。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆シルヴェリア・ダーシェルナキ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領総督シグレイの長子。自分の軍隊が欲しくて18歳のお誕生日に少将の官位を買ってしまった(買ってしまった)。

買官によって権威を得た者に武官たちが向ける目は冷ややかなものだが、シルヴェリアは卓抜した手腕によってたちまち最悪の評価を覆した。

ただし露出の多い服装で人前に出たり、高貴な身分の人間が口にすべきでない単語や言いまわしを使いこなしたり、好色が過ぎて男女問わず手を出したりと問題行動が多い。


弟妹が5人いるのだが、2歳年下の妹エーリカには嫌われている。

もともとプライドが高いエーリカのコンプレックスを刺激しがちなうえ、10歳の頃にエーリカが丁寧に作った押し花を目の前でムッシャムッシャバリボリと貪り食ってからは蛇蝎の如く嫌われている。

何故そんなことをしたのか全くわからない点もまた嫌われている。

しかも父シグレイがその件でシルヴェリアを叱責しなかったので必要以上に嫌われている。

まあとにかく嫌われている。

結論:全部パパが悪い。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆フェン・アルドロス

◆37歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


シルヴェリアの副官。美少年のような色香を漂わせる37歳独身美熟女というちょっとどういう層を狙っているのかよくわからない逸材。お遊びの度が過ぎ、陸軍司令部で17股をかけていたことがばれて無事職場の人間関係を崩壊させる。

前線送りとなった先で出会ったシルヴェリアとはすぐに意気投合し、同性の愛人の座を獲得した。

しかしながら誰にでも見境なくちょっかいを出すわけではなく、性的合意があっても未熟過ぎたり責任能力のない相手には一切手出ししない。当たり前のことなんだけど……。

シオネビュラ神官団のメイファ・アルドロスの実の姉。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆マグダリス・ヨリス

◆35歳/男性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


歩兵精鋭部隊を指揮する大隊長だったが、編成中だった親衛連隊内の一個大隊を鍛えるべくシルヴェリアに抜擢されていた。階級は少佐。陸軍内においては『歩く殺戮装置』とか『三つ編み三十代』とか陰口を叩かれる。

高潔さと冷酷さを併せ持ち、他人に厳しいが自分に対してはもっと厳しいので立場の弱い者たちからは愛されている。

ときに行動が大胆なだけでなく、天才的な剣の腕を持つため恐い人だと思われることもしばしば。大丈夫。恐くない。たまに一人で百人殺しちゃうだけだ。よくあるよくある。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ヴァンスベール・リンセル

◆20歳/男性

◆所属:南西領陸軍


通称ヴァン。前線部隊に配属されたばかりの士官学校の新卒。リンセル家は海軍士官を多く輩出する家柄だが、本人曰く「伯父さんが恐いから陸軍に来た」。でも本当は船酔いするからである。実は馬にも酔う。

一見してそんなに強そうには見えないけれど実力派のダークホース。士官学校の剣術の成績は一、二を争うレベルだった。なお座学に関しては下から一、二を争うレベルだった模様。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆プリシラ・ホーリーバーチ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍


通称プリス。ロザリア、リアンセに続くホーリーバーチ家三姉妹の三女。お姉ちゃんたちが大好きで、リアンセが父親を見限って西方領を出奔するとき一緒に家を出てしまった。

11歳で家をでた娘を心配して母親は父に内緒で送金してくれたのだが、そのお金で「神学校に通う」と嘘をついて陸軍士官学校を卒業。

性格は明るく大胆で、良くも悪くも自分に正直。

陸軍広報部徴募部隊所属。ヴァンとは士官学校の同期の間柄。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆アイオラ・コティー

◆26歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領陸軍の歩兵部隊指揮官で、階級は中尉。弓術・馬術に秀でるほか、詩人の才をも併せ持つ画伯。特に男性同士の濃厚な接触の模様を描いた画を得意とし、それらの作品は女性士官たちの間でひっそりと流通している。

反乱によって中隊を追われたのちは手許にある過去作と新作を火にくべてから都解放軍に合流。「いつどこで討ち死にしようともこれで私の秘密は守られる」と思ったようだが、まさかこんなところでバラされているとは夢にも思うまい。


◆初登場回:20章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ララセル・ハーティ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍


エーリカの専属護衛で、侍従長を兼任する。階級は大尉。クールビューティーなので周囲から勝手に有能そうだと期待されるけど、何かが人よりずば抜けているわけではないので結局勝手にがっかりされる。

冷たい印象の見た目に反して性格は至って素朴で素直。「あっち向いてホイ→」ってやったら全く何の疑問も抱かずに顔を「→」ってやっちゃうくらい素直。褒められて伸びるタイプだと思う。かわいがってあげて……カワイガッテアゲテ……カッ…………カワイガッ…テ…………………………カ……………ゲテ……………………。


◆初登場回:21章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆エーリカ・ダーシェルナキ

◆18歳/女性

◆所属:南西領ダーシェルナキ公爵家


ダーシェルナキ家の第二子。こじらせてるシスコン。

グロリアナ領主ゼラ・セレテスに言い寄って困らせているけど自分は四十手前のトリエスタ伯に言い寄られて困っている。

それではトリエスタ伯に一言

「死にさらせですわ!」

口汚ぇですわ。

そして怖くて誰も指摘しないんだけどインテリアの趣味が悪い。


◆初登場回:10章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミサヤ・クサナギ

◆31歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団二位神官将補。農民の出だが村をあげての推挙と資金援助を得て高位聖職者になる夢を叶えた地元大好きお姉さん。それでは南東領ソラート地方のいいところを語っていただきましょう。



「ソラートの富の源は潤沢な湧き水にある。平原を裂いて流れる水と温暖な気候は滋味豊かな作物を育て、その地方の最も貧しい村の民ですら、まず飢え渇くということがない。澄んだ空気と穏やかな野山に囲まれた環境が人を朗らかにすることから療養地としての人気も高い。かくいう私の夫も、喘息の治療のため幼少期に都から移り住んだ口だ。田舎にありがちな排他的な空気もソラートにはなく、そのため移り住む者がもたらす知識や技術が容易に根付き、その地をさらに住みよい場所にするのだ。無論、これほど恵まれた土地であるから、無闇に野山を切り開いたり、または武力で支配しようとする者たちも多くいた。一つはっきり断っておきたいのだが、住民が温和であることは、侵入者や圧政者への従順とは結びつかない。歴代の……(※これがあと30分続く)


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆ゾレア

◆14歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団の従軍歌流民。浮世離れしたミステリアスな少女(※ぼーっとしているだけだ)。


歌流民とは、野山に身を置く流浪の民。大陸中に散らばる彼らは共通する生活様式を持っており、すなわち氏族の歌い手は、歌うときしか声を出さない。

ゾレアの氏族は戦時に歌を売るのみでなく、平時にキノコや薬草を原料とする丸薬を作っていた。歌流民の神秘の力で病が癒されるという思い込みによって服用者の本来の自然治癒力を引き出し、さも薬が効いているかのように見せかけるただの黒い粒である。人体って不思議。

ソラートの住人たちは知っているので買わない。「本体価格よりレジにて20%オフ」とか言われても買わない。


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

 なし

◆エルーシヤ

◆17歳/女性

◆所属:-


ゾレアと同じく歌流民の少女であり、歌うときにしか声を出さない。その生活で得た不思議な感性を有しておれど、中身は普通の女の子。田舎暮らしが嫌になって逃げてきてしまった。今は陸軍広報部のプリシラ・ホーリーバーチ少尉と行動を共にしている。


都の星獣祭で配られる胡桃の護符は、北ルナリアやグロリアナの山塊を塒とする彼女の氏族が歌によって清めながら作るものだ。胡桃の可食部はクッキーにしてグロリアナの周辺で売られる。商品名は「グロリアナに行ってきましたクッキー」とかだろうか。知らんけど。


ちなみに「エルーシヤ」は歌流民の中でありふれた女性名であり、『失語の鳥』の番外編に出てくるエルーシヤとは完全に別人。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆マナ

◆14歳(※肉体年齢)/女性

◆所属:-


旅の途中でミスリルが出会う謎めいた少女。自称ミスリルの娘。もし本当に娘だったらミスリルが11歳のときの子になるのだが、当然ながら彼に心当たりはない。心当たりどころか女性と手を繋いで街を歩いたことすらない。

14歳という年齢は推定であり自称。なお生まれてきたとき既に14歳だった。


◆初登場回:6章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆シンクルス・ライトアロー

◆25歳/男性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


ヨリスタルジェニカ神官団正位神官将。政争によって傾きかけた西方領の名家の嫡男で、家の再興のために父親によって南西領に送り込まれた。古風な喋り方が特徴だが、ここだけの話普通に喋ろうと思えば喋れる。


過集中と注意力散漫を繰り返す。黙ってさえいればとても美形なのにいらんことまでよく喋る。実家は太いが傾きかけている。頭が良くて弁も立つけどこれっぽっちも自重できない。

そんな残念なタイプの天才だが、物事は前向きに考えよう。

普段はあちらこちらに興味の対象が移ろうが、並外れた集中力を発揮した際の成果は素晴らしい。近寄りがたいほどの美形だが、中身は気さくで親しみやすい。実家も傾きかけたとはいえまだ太い。自然に振る舞うだけで目立ってしまうのは自信家で聡明だからである。

残念なタイプの天才なのではない。

天才なタイプの残念なのだ。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ロザリア・ライトアロー

◆25歳/女性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


正位神官将夫人。シンクルスの妻であり、リアンセとプリスの姉。西方領出身。

シンクルスと初めて顔を合わせたのは三歳のときで、このとき既にライトアロー家とホーリーバーチ家の第一子同士として結ばれることが決まっていた。

親同士が決めた結婚とはいえ、成長に従い二人は自然に惹かれあうようになった。

政治的なごたごたから逃れるべく、ロザリアとシンクルスは南西領の神学校に入り直すことが決まり家を出る。同じ時期に、リアンセは父親の当主としての資質に疑問を抱き出奔。

家族喧嘩の最中に妹のリアンセ(脳筋)がカッとなって父親の頭を壺でぶん殴り、心配して見に来たシンクルスが我慢できずに腹を抱えて笑うのを見て以来「実はこの人ちょっとバカなんじゃないか」と思っている。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆レグロ・ヒューム

◆34歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将。

独特の個性と落ち着きなさゆえに生家では「将来の見込みなし」と冷遇されていたが、実際大人になったら兄弟の中で一番有能だったというオチがつく。たぶんヒューム家はもう終わっとる。

他のことはともかく仕事はできるというタイプ。

何故かしら自分のことを美男子だと思っている(根拠不明)。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆メイファ・アルドロス

◆32歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将補を務めるクレイジー長広舌。南西領陸軍のフェン・アルドロスの妹。

アルドロス家の後継がフェンとメイファしかいない事実からお察しいただける通り、もうアルドロス家も終わっとる。

人間としての中身に関しては姉より多少マシなレベル。

甲冑の上から乳首の位置を当てる能力を持っている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ニコシア・コールディー

◆29歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将。真面目で責任感が強い性格。二位神官将に対する態度が横柄だが、これでもかつては敬意を払っていた。

出身もシオネビュラ西部で、居城である西神殿の近くに妹夫婦が住んでいる。市内巡行の際など幼い姪が「おばさまー!」と手を振ってくる。

「お姉さまと呼べ」と思っている。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミオン・ジェイル

◆25歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将補。神学校卒業から僅か一年で現在の地位に抜擢された経歴を持つ。振る舞いは優等生然としているが口が悪い。

ジェイル家は家格が低く、神学校には長男である兄しか通えないはずだったが、武芸と学問の両方で兄より優れていることを証明し、進学の権利を勝ち取った。この生い立ちゆえに成果主義者である。

現在の地位を得てから両親は掌を返してちやほやしだしたが、家督を継ぐ気はない。ジェイル家も終わっとる。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ゼラ・セレテス

◆25歳/男性

◆所属:ソレリア民兵団


グロリアナ領主にしてソレリア民兵団代表。セレテス家は吹けば飛ぶような底辺領主(((失礼)))ながら、質実剛健を旨とする家風によってグロリアナ領を堅実に治めてきた。

セレテス流炎剣術の継承者。一子相伝なので、ゼラが死んだら剣術も絶える。


性格はやや強情で、数年前に自分で育てた野菜を上流貴族の客に供したところ「痩せた土で育った貧乏くさい味」と馬鹿にされ、「嫌なら召し上がらなくて結構でございます」と言って皿を下げ父親にこっぴどく怒られた。

以来、気にいらない客に対しては問答無用で畑を手伝わせている。


◆初登場回:3章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

付録◆アースフィア世界の度量衡


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◇長さの単位


基本単位はセスタセリオン。地域や職業によってセスタ尺とセリオン尺が使い分けられる。


1セスタ=2.5㎝

1セリオン=7.5㎝

1リセスタ(1リセリオン)=1/10セスタ(1/10セリオン)

1ニ―セスタ(1二―セリオン)=100セスタ(100セリオン)

1デセスタ(1デセリオン)=100ニーセスタ(100ニ―セリオン)

1クレッセスタ(1クレッセリオン)=10デセスタ(10デセリオン)


言語生命体たちが地球で創造主たちと暮らしていた時代、言語生命体の独立をかけた戦に異を唱え、地球人信仰を保つよう呼びかけた姉弟がいた。

姉の名はセスタ。弟の名はセリオン。

二人は同胞によって捕らえられ、両手をすりおろす拷問にかけられた。

救出されたとき、セスタの手首の関節より先の長さは2.5㎝、セリオンは7.5㎝しか残っていなかったと伝えられる。


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◇重さの単位


基本単位はケララ

ケララは麦をさす言葉だが、教会の伝統において典礼及び典礼聖歌を意味することもある。


1ケララ=2.5g

1リケララ=1/10ケララ

1ニーケララ=100ケララ

1デケララ=100ニーケララ

1クレスケララ=10デケララ


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◇体積の単位


基本体積はダータ。野蜜の意であり、血液ないし精液を暗喩する。


1ダータ=25ml

リダータ=1/10ダータ

ニーダータ=100ダータ

デダータ=100ニーダータ

クレスダータ=10デダータ

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