シオネビュラの神官たち

文字数 4,830文字

 1.

 シオネビュラは猥雑な都市だ。造船所が二十四時間体制に切り替わってからは眠らぬ人も増えた。港に明かりが絶えることはなく、街路を荒くれ者と男娼、娼婦が行き来する。
 その往来も、神官団の先触れが鈴を打ち鳴らすや、酔いと熱気が払われた。歌う侍者(じしゃ)、旗手に続くは歩兵に護衛された騎馬の神官兵。その列の中ほどに、三位神官将の姿があった。
 体つきも立派な騎兵と歩兵の中にあって、その女性の神官将は小柄だった。赤髪(せきはつ)を短く切り、シオネビュラ神官団の若草色の神官服の上に純白のマントを重ね、馬上で背筋を伸ばしている。目が大きく童顔だが、口もとはきつく結ばれ、白い肌は、そこに映るガス灯の光さえも近寄りがたいものに変えていた。
 行列は、歌と鈴の音を撒きながら、夜のただなかに黒く(そび)える城壁へと吸い込まれていった。明かりの漏れぬそここそは、シオネビュラ市の南神殿、正位神官将の本拠地である。
 通用門が開かれて、いくつもの尖塔を持つ神殿の敷地へと一行を迎え入れた。数分ののちには、三位神官将ニコシア・コールディーの姿は本棟二階の廊下にあった。
 石造りの廊下には、天籃石(てんらんせき)のランプがいくつも掲げられていた。その白色光の中を、後ろに補佐官を連れてニコシアは急ぐ。ついぞ奥の扉を開け放てば、一つだけある円卓を、既に四人の男女が囲んでいた。
「お待たせいたしました。申し訳ございません」
 硬い声で述べながら入室し、自席につく。非公式の会議では、着席の指示は待たなくて良いのが慣習であった。早く本題に入るためだ。続けて入室した三位神官将補ミオン・ジェイルが扉を閉める。閂をかける音がした。
「なに、定刻には間に合っている」
 上座の正位神官将、ヤン・メリクルが鷹揚に答えた。五十手前の働き盛り。浅黒い肌の中に、金色の目が光っている。
「ときにコールディー三位神官将、ヨリスタルジェニカはモラン主席技師をシオネビュラに引き渡すつもりがないようだが」
「ヨリスタルジェニカは有事に共同戦を張らねばならぬ我らの同盟相手でございます。その責任者が、己の軍を守るためにその程度さえ思いつかぬようであれば、むしろ私は直々に乗り込んで正位神官将をその椅子から蹴り落としたまでのこと。我らのためにも、ヨリスタルジェニカには持てるものすべてを活用してもらわねばなりません。できぬなら、行って取り戻すまでです」
 メリクル正位神官将は静かに唇を吊り上げた。
 ニコシアの向かいには、一組の黒髪の男女がかけていた。
 男のほうは二位神官将レグロ・ヒューム。女のほうは二位神官将補メイファ・アルドロス。メイファはかつて『月』の痕跡をたどってコブレンに派遣され、以降この件の調査を担当している。レグロのほうは海の動向に目を光らせているが、敵対するソラート神官団はこの頃「シオネビュラが『月』の持ち主たる北の公女を監禁している」と吹聴しているようだ。嘆かわしい。むしろ件の公女の身柄が手許(てもと)にあれば、どれほど多くの面倒な仕事が片付くことだろう。
「リジェク・北ルナリア両市からの要求は変わらない」
 正位神官将が厚い唇を開いたので、ニコシアは彼にまっすぐな目を向けた。
「日輪連盟加盟諸都市の産物に対する関税緩和。シオネビュラに居住する両市の民の安全及び財産の保証。ヨリスタルジェニカ神官団の南洋進出阻止への協力要請。最後に、所在不明の聖遺物を我々が隠蔽しているという疑惑に対する釈明」
 北方領で聖遺物が失われた件を、今となっては誰も隠そうとしていなかった。
「両市は我々と(せん)を交えるべく進軍中であるが、現時点では攻城戦に持ち込む戦力はない。まずは北のシオン丘陵を確保し、日輪連盟から駆けつける他都市の援軍を待つようだ。現時点でも援軍の呼びかけを続けているが、それに応じた軍勢のうち実際にどれほどの数が腰を上げるかは未知数」
 メリクルは言葉を切り、どこか面白がるような目を二位神官将レグロに向けた。レグロが(こた)える。
「海側に目を向けますと、ソラートと連携をとるはずだった海上戦力の集結は鈍く、航行に適した時期であるにもかかわらず、ここ三月(みつき)の間ほとんど動いておりません」
 軽薄に聞こえるほど軽やかな喋り口なので、ニコシアはこの男の言うことを話し半分に聞くことにしていた。
「陸で戦いの端緒が切られるときには、敵海上戦力はほぼソラートが独力で動くことになるでしょう。そうなれば、ヨリスタルジェニカは安心して、というのもおかしな話ですが、宣戦布告をするはずです。ソラート神官団はそれを受けて立つしかありますまい」
 メリクルは頷いた。
「では、続けてコールディー三位神官将、南西領陸軍中トレブレン守備隊の動きを改めてこの場で報告してくれ」
 ニコシアは着座のまま一礼し、口を開いた。
「敵主力部隊であるリジェク神官団の先遣部隊、北ルナリア修道騎士団、及び北ルナリアとグロリアナの民兵団がトレブレン地方を通過したのち、城塞都市中トレブレンの守備隊が大道路を塞ぐ形で野戦演習を開始しました。演習はだらだらと覇気がないまま幾日も続き、そのためリジェクに続く日輪連盟側の神官団の勢力はもう一週間もグロリアナで足止めをされています」
 神官たちは地球人によって独立性を保証された軍隊を持っている。直接の挑戦を受けたわけではないにも関わらず、それに手出しをすることは得策とは言い難い。さりとてシオネビュラを失うわけにはいかない総督シグレイの考えた結果がこれだ。シグレイはただ、自分の直轄地で自分の軍隊を訓練しているだけ、というわけだ。
「後続の日輪連盟軍は、()いて陸軍の野営地を越えようとはしておりません。ただ一部の部隊は迂回路をとり始めており、経済への影響を考えても、南西領総督が大道路を封鎖し続けられなくなるのは時間の問題でしょう」
「コールディー三位神官将、会戦はいつだ」
 質問の意を汲み、唾をのんで答えた。
「中トレブレン守備隊によって補給線を断たれたリジェク神官団は、街道でシオネビュラの商人を襲い、行く先々の修道院や派出神殿で略奪まがいの行為を行っております。大義名分を手に入れた以上、我々が会戦の日まで待つ必要はないと考えております」
 強気な言葉とは裏腹に、ニコシアの胸中は不穏だった。
 ――海の動きも陸の動きも、シオネビュラ神官団にとって都合が良すぎないか?
「結構だ。だがその前にもう一つ、君たちと分かち合いたい情報がある」
 不吉な予感が伴って、沈黙の幕が下りた。その中でメイファ・アルドロスが微笑む。
「今宵の闇に紛れて寄港した密使が、タルジェン島での異様な騒動について情報をもたらしております。件の聖遺物がタルジェン島に持ち込まれていることはヨリスタルジェニカからの急使によって正式に情報共有されておりますが、どうやらそれが何者かによって持ち去られた恐れがあるようで」
「それはいつの話だ」
 ニコシアはテーブル越しに身を乗り出した。癪に触る笑みを湛えたメイファの視線が返ってきた。
「件の人質交換の四日前、今から数えること八日前。タルジェン島内で発見されたという報告は未だされておらず……」
「海上の要衝ではタルジェン島を()った全ての船の厳重な調査を行なっている。そのため『月』の運び手が乗るはずだった船はいまだシオネビュラに到着していない状態だ。無論、シオネビュラにおいても万全を期して船団を受け入れるよう準備している」
 正位神官将の言葉は、しばしの間、再度の沈黙をもたらした。次にそれを破ったのは、ニコシアの隣に座る青年、三位神官将補ミオン・ジェイルの静かな声だった。
「アルドロス二位神官将補殿、タルジェン島へ『月』を運んだコブレン自警団の三人組の身柄はどうなっておりますでしょうか」
「その三人も行方知れずのようですねぇ。出航を一日半送らせて全ての船と積荷を検査したヨリスタルジェニカの神官の(げん)によれば、彼らがタルジェン島本島を出たわけがないとのことですが」
「実際に消えたのは、『月』と自警団の三人というわけでございますね。その三人に『月』を持ち去る動機があるかないかに関わらず」
 何故かしら満足げな笑みを浮かべ、メイファは補足した。彼女によれば、三人の客人を乗せた船団がタルジェン島を発つ日の朝、彼らの様子に変わった点は見られなかった。特に代表者に至っては、早く帰りたくて仕方がないと正位神官将を相手に言い放つほどであったという。
「彼らがどこからともなく出てくる可能性というのは考えられるかい? メイファ?」
「出てくるに決まっているだろう」レグロの発言に苛立ちながらニコシアは言い放った。「そいつらは消えていなくなったわけじゃないはずだ。必ずヨリスタルジェニカの領土・領海のどこかにいる」
「ところが、聖遺物に関わり合って人が消えた事例が過去一つ」
 歌うように軽やかなレグロの言葉に、正位神官将の口角(こうかく)が吊り上がった。
「それも古い例ではないときた。君も知っているはずだ、ニコシア」
「グロリアナの浚渫(しゅんせつ)工事の件でございますか。あれは――」
 正位神官将は右手を上げて、発言を制した。
 メイファが座ったまま身を屈める。足許(あしもと)から丸めた羊皮紙を取り上げて、紐を解いた。
「さすがに現物を持ってくるわけにはいきませんでしたが」
 巻物が円卓に広げられ、順に立ち上がったメイファとレグロ、ミオン、最後にニコシアが四隅を押さえた。
 そこには黒ずんだ死体が描かれていた。
「やっと見つけたのですよぉ。リジェク神官団の動きを嗅ぎまわっていた陸軍情報部の間諜(かんちょう)です」
「生きているようには見えないねぇ、メイファ。彼はどこに?」
「グロリアナの郊外の林に埋められておりました。近くの小屋には彼が連絡用に持ち歩いていた胡桃も落ちておりまして。ところで是非とも注目していただきたいのは、この(むくろ)の腹から胸にかけてですが」
 死体は臭いがしそうなほど生々しく描かれていたが、メイファが示す箇所には、虫が食ったり、腐乱した痕跡すらなかった。
 肌が黒く変色していた。この男は埋められた後、野犬に掘り返されでもしたのだろう。変色を免れた脇腹が食い破られている。そこから見える体内、すなわち黒く変色した皮膚の下には、骨も内臓も見えなかった。
「これは……」人間の死体と呼ぶには、その空洞はあまりに奇妙だった。「言語崩壊を起こしたのか。これが人間なら」
「だとしたら噂に信憑性が出てくるねぇ」
 レグロが顎に手を当てる。
「グロリアナでの件の工事以来、歌流民(かりゅうみん)たちが多くリジェクに抱え込まれている。彼らは星獣どころか人間を化生(けしょう)に作り変える方法を……いや、方法といわずともその手がかりを探している、と」
「グロリアナからリジェクに出稼ぎに行ったきり消息不明になった人間が何人もいると聞く」
 ニコシアはレグロとメイファを順に見た。
「確かこの男はそれについて探っていたのだろう。でも、『月』と運び手が姿を消したことに何の関係が?」
 控えめに扉がノックされた。正位神官将補が歩いて行き、閂を外し、廊下に姿を消した。ニコシアはほとんど息を詰めていた。メイファが羊皮紙を巻いて片付ける。
 正位神官将補が足早に戻ってきて、上官に耳打ちした。
「諸君」
 四人の部下たちの前で、正位神官将は立ち上がる。
「たった今、ヨリスタルジェニカ神官団が南東領ソラート神官団に宣戦布告したとの知らせが入った」
 直立したままのニコシアたちは、正位神官将の宣告を待つ。それはすぐに下された。
「時は来た。リジェク神官団を討つ」


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登場人物紹介

◆ミスリル・フーケ

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


『暗殺者を狩る暗殺者』の育成機関、コブレン自警団の団長の一番弟子。正義感が強く、好戦的で熱血だけど気分屋なのでいきなり冷める。自分のことを暗殺者だと思ってるわりに騒々しい。11歳のときに実の母親との間にできた娘が「いないつってんだろっ!!」いません(忖度)。

画像は「このカス野郎をどう始末してやろうか」と思案しているときの顔。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アエリエ・フーケ

◆27歳/女性

◆所属:コブレン自警団


もとは豪商の娘だったがいろいろあって10歳で浮浪児となり、コブレン自警団に保護された。

女性ながら大鎌をはじめとする長柄武器の扱いに長け、ミスリルの行くところにはどこにでもついて回って敵の生首を刎ね飛ばす。恐い。ちょっと恐い。笑顔がちょっと恐い。足許にひれ伏すと踏んでくれる。マゾは急げ!


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆マリステス・オーサー

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称テス。鳥好きで頭が緑とかいう実に安直な理由で『真鴨』とか『鴨』とか呼ばれている。

自閉傾向が顕著に強く、表情の変化の乏しさと相俟って「何を考えているのかわからない」という印象を与えがちだが、感じる力も考える力も強いほう。

コミュ障の自覚があるため、コミュ力の高い兄弟子のトビィに対してとても屈託している(嫌ってるわけではない(むしろ大好き(面倒くさいタイプ)))。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アザリアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称アズ。自警団の武術師範の一人であるオーサー師の一番弟子。30歳以下の自警団主力戦闘員の中では第一位の戦闘能力を持つ。

戦いになると実に容赦ないが、素の性格はシャイで温厚。天然だけど人から天然って言われると傷つく(繊細)。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆トビアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称トビィ。アズの双子の兄弟。長柄武器を得意とするほか、犬を訓練する技能を持つ。陽気でとっても優しくて、子供と動物が大好きな親しみやすいお兄さんだよ! たまに笑いながら人殺しちゃうけど……。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆レミ・イスタル

◆25歳/女性

◆所属:コブレン自警団


イスタル師の二番弟子。朝寝坊クイーン。三人一組が基本となる重要な仕事ではアズ&トビィと組むことが多く、この二人と一緒にいる日は朝自分から起きてこない。

生真面目かつ強気にふるまっている反動か、妹のようにかわいがってくれる人の前では子供のように無邪気な態度になる。かと思えば妙に機嫌が悪いときもある。特に朝。朝。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆リレーネ・リリクレスト

◆17歳/女性

◆所属:北方領リリクレスト公爵家


北方領リリクレスト家の公女だが、他家に嫁がせるためのお飾りとして育てられた。でも根が逞しいので環境への適応力が高い。


リリクレスト家は惑星アースフィアが移住可能な環境になる遥か以前から続く古い家であり、その血筋は地球における最初の10体の言語生命体試作品にまで遡るとされている。

それゆえ言語生命体の神である地球人からさえも重んじられ、宇宙戦争が行われた時代に授与された宝冠が数千年ものあいだ家宝として受け継がれてきたがリレーネが6歳のときに壊しちゃった。昔お転婆だったから壊しちゃった。

6歳だけどさすがにこれはヤバイと思って庭に埋めてしまった。

家じゅう大騒ぎになってたけど無駄に意志が固いので沈黙を守り抜いた。

ときおり思い出して寝れなくなる。

たぶん今も埋まっている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆リージェス・アークライト

◆22歳/男性

◆所属:北方領陸軍


北方領陸軍で最もぼっち飯が似合う男と恐れられる若き護衛武官。階級は少尉。士官学生時代は優等生だった。毎日ぼっち飯だったけど。

なんだかんだでお人好しなので、試験の前にノートを貸してくれと泣き付かれて貸したら試験が終わるまで返ってこなかったりしたタイプ。怒っていいと思う。


巻き込まれ型の不幸体質なので登場するたびにひどい目に遭う。

仮にもシリーズ第1作目のメインヒーローが何故このような扱いをされるのかと思うと不憫で笑いが止まらない。

ごめん間違えた。

涙が止まらない。


とってつけたように言うけどリレーネ付きの護衛である。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

(過去作での名はリージェス・メリルクロウ)

◆パンジェニー・ロクシ

◆22歳/女性

◆所属:北方領陸軍


北方領の護衛武官。試験が終わるまでリージェスにノートを返さなかった犯人。

本編ではリレーネとリージェスが南西領に潜入するのに協力したが、コブレンの手前ではぐれたらしい。過去作を読まれた方のうちの実に99%以上が忘却の彼方へと葬り去ったであろう、シリーズ一作目からのリベンジャー。それでは一言意気込みをどうぞ。

「パンジーって呼んでよ(血涙)」


◆初登場回:8章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

◆リアンセ・ホーリーバーチ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


陸軍情報部の間諜。間諜は単独での潜入が必要となる任務が多いため、油断を誘うべく実年齢より幼く見える格好を普段からしている。上腕二頭筋とかムキムキだけど。任務のためだけでなく、本人もかわいい服や小物が大好きである。背筋とかゴリゴリだけど。その甲斐あってか潜入や工作の成功率が非常に高く、情報部内ですら(服の上からの)外見に騙される者が一定数いる。腹筋とかバキバキだけど。

でもそれは、強くなければ生き残れないことをよく知っているからこそ。毒舌だったり辛辣なところがあるけれど、姉と妹のことは大好きな三姉妹の次女。

シリーズ1作目からいるけど登場するたびに箍が外れていく。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆シルヴェリア・ダーシェルナキ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領総督シグレイの長子。自分の軍隊が欲しくて18歳のお誕生日に少将の官位を買ってしまった(買ってしまった)。

買官によって権威を得た者に武官たちが向ける目は冷ややかなものだが、シルヴェリアは卓抜した手腕によってたちまち最悪の評価を覆した。

ただし露出の多い服装で人前に出たり、高貴な身分の人間が口にすべきでない単語や言いまわしを使いこなしたり、好色が過ぎて男女問わず手を出したりと問題行動が多い。


弟妹が5人いるのだが、2歳年下の妹エーリカには嫌われている。

もともとプライドが高いエーリカのコンプレックスを刺激しがちなうえ、10歳の頃にエーリカが丁寧に作った押し花を目の前でムッシャムッシャバリボリと貪り食ってからは蛇蝎の如く嫌われている。

何故そんなことをしたのか全くわからない点もまた嫌われている。

しかも父シグレイがその件でシルヴェリアを叱責しなかったので必要以上に嫌われている。

まあとにかく嫌われている。

結論:全部パパが悪い。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆フェン・アルドロス

◆37歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


シルヴェリアの副官。美少年のような色香を漂わせる37歳独身美熟女というちょっとどういう層を狙っているのかよくわからない逸材。お遊びの度が過ぎ、陸軍司令部で17股をかけていたことがばれて無事職場の人間関係を崩壊させる。

前線送りとなった先で出会ったシルヴェリアとはすぐに意気投合し、同性の愛人の座を獲得した。

しかしながら誰にでも見境なくちょっかいを出すわけではなく、性的合意があっても未熟過ぎたり責任能力のない相手には一切手出ししない。当たり前のことなんだけど……。

シオネビュラ神官団のメイファ・アルドロスの実の姉。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆マグダリス・ヨリス

◆35歳/男性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


歩兵精鋭部隊を指揮する大隊長だったが、編成中だった親衛連隊内の一個大隊を鍛えるべくシルヴェリアに抜擢されていた。階級は少佐。陸軍内においては『歩く殺戮装置』とか『三つ編み三十代』とか陰口を叩かれる。

高潔さと冷酷さを併せ持ち、他人に厳しいが自分に対してはもっと厳しいので立場の弱い者たちからは愛されている。

ときに行動が大胆なだけでなく、天才的な剣の腕を持つため恐い人だと思われることもしばしば。大丈夫。恐くない。たまに一人で百人殺しちゃうだけだ。よくあるよくある。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ヴァンスベール・リンセル

◆20歳/男性

◆所属:南西領陸軍


通称ヴァン。前線部隊に配属されたばかりの士官学校の新卒。リンセル家は海軍士官を多く輩出する家柄だが、本人曰く「伯父さんが恐いから陸軍に来た」。でも本当は船酔いするからである。実は馬にも酔う。

一見してそんなに強そうには見えないけれど実力派のダークホース。士官学校の剣術の成績は一、二を争うレベルだった。なお座学に関しては下から一、二を争うレベルだった模様。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆プリシラ・ホーリーバーチ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍


通称プリス。ロザリア、リアンセに続くホーリーバーチ家三姉妹の三女。お姉ちゃんたちが大好きで、リアンセが父親を見限って西方領を出奔するとき一緒に家を出てしまった。

11歳で家をでた娘を心配して母親は父に内緒で送金してくれたのだが、そのお金で「神学校に通う」と嘘をついて陸軍士官学校を卒業。

性格は明るく大胆で、良くも悪くも自分に正直。

陸軍広報部徴募部隊所属。ヴァンとは士官学校の同期の間柄。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆アイオラ・コティー

◆26歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領陸軍の歩兵部隊指揮官で、階級は中尉。弓術・馬術に秀でるほか、詩人の才をも併せ持つ画伯。特に男性同士の濃厚な接触の模様を描いた画を得意とし、それらの作品は女性士官たちの間でひっそりと流通している。

反乱によって中隊を追われたのちは手許にある過去作と新作を火にくべてから都解放軍に合流。「いつどこで討ち死にしようともこれで私の秘密は守られる」と思ったようだが、まさかこんなところでバラされているとは夢にも思うまい。


◆初登場回:20章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ララセル・ハーティ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍


エーリカの専属護衛で、侍従長を兼任する。階級は大尉。クールビューティーなので周囲から勝手に有能そうだと期待されるけど、何かが人よりずば抜けているわけではないので結局勝手にがっかりされる。

冷たい印象の見た目に反して性格は至って素朴で素直。「あっち向いてホイ→」ってやったら全く何の疑問も抱かずに顔を「→」ってやっちゃうくらい素直。褒められて伸びるタイプだと思う。かわいがってあげて……カワイガッテアゲテ……カッ…………カワイガッ…テ…………………………カ……………ゲテ……………………。


◆初登場回:21章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆エーリカ・ダーシェルナキ

◆18歳/女性

◆所属:南西領ダーシェルナキ公爵家


ダーシェルナキ家の第二子。こじらせてるシスコン。

グロリアナ領主ゼラ・セレテスに言い寄って困らせているけど自分は四十手前のトリエスタ伯に言い寄られて困っている。

それではトリエスタ伯に一言

「死にさらせですわ!」

口汚ぇですわ。

そして怖くて誰も指摘しないんだけどインテリアの趣味が悪い。


◆初登場回:10章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミサヤ・クサナギ

◆31歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団二位神官将補。農民の出だが村をあげての推挙と資金援助を得て高位聖職者になる夢を叶えた地元大好きお姉さん。それでは南東領ソラート地方のいいところを語っていただきましょう。



「ソラートの富の源は潤沢な湧き水にある。平原を裂いて流れる水と温暖な気候は滋味豊かな作物を育て、その地方の最も貧しい村の民ですら、まず飢え渇くということがない。澄んだ空気と穏やかな野山に囲まれた環境が人を朗らかにすることから療養地としての人気も高い。かくいう私の夫も、喘息の治療のため幼少期に都から移り住んだ口だ。田舎にありがちな排他的な空気もソラートにはなく、そのため移り住む者がもたらす知識や技術が容易に根付き、その地をさらに住みよい場所にするのだ。無論、これほど恵まれた土地であるから、無闇に野山を切り開いたり、または武力で支配しようとする者たちも多くいた。一つはっきり断っておきたいのだが、住民が温和であることは、侵入者や圧政者への従順とは結びつかない。歴代の……(※これがあと30分続く)


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆ゾレア

◆14歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団の従軍歌流民。浮世離れしたミステリアスな少女(※ぼーっとしているだけだ)。


歌流民とは、野山に身を置く流浪の民。大陸中に散らばる彼らは共通する生活様式を持っており、すなわち氏族の歌い手は、歌うときしか声を出さない。

ゾレアの氏族は戦時に歌を売るのみでなく、平時にキノコや薬草を原料とする丸薬を作っていた。歌流民の神秘の力で病が癒されるという思い込みによって服用者の本来の自然治癒力を引き出し、さも薬が効いているかのように見せかけるただの黒い粒である。人体って不思議。

ソラートの住人たちは知っているので買わない。「本体価格よりレジにて20%オフ」とか言われても買わない。


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

 なし

◆エルーシヤ

◆17歳/女性

◆所属:-


ゾレアと同じく歌流民の少女であり、歌うときにしか声を出さない。その生活で得た不思議な感性を有しておれど、中身は普通の女の子。田舎暮らしが嫌になって逃げてきてしまった。今は陸軍広報部のプリシラ・ホーリーバーチ少尉と行動を共にしている。


都の星獣祭で配られる胡桃の護符は、北ルナリアやグロリアナの山塊を塒とする彼女の氏族が歌によって清めながら作るものだ。胡桃の可食部はクッキーにしてグロリアナの周辺で売られる。商品名は「グロリアナに行ってきましたクッキー」とかだろうか。知らんけど。


ちなみに「エルーシヤ」は歌流民の中でありふれた女性名であり、『失語の鳥』の番外編に出てくるエルーシヤとは完全に別人。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆マナ

◆14歳(※肉体年齢)/女性

◆所属:-


旅の途中でミスリルが出会う謎めいた少女。自称ミスリルの娘。もし本当に娘だったらミスリルが11歳のときの子になるのだが、当然ながら彼に心当たりはない。心当たりどころか女性と手を繋いで街を歩いたことすらない。

14歳という年齢は推定であり自称。なお生まれてきたとき既に14歳だった。


◆初登場回:6章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆シンクルス・ライトアロー

◆25歳/男性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


ヨリスタルジェニカ神官団正位神官将。政争によって傾きかけた西方領の名家の嫡男で、家の再興のために父親によって南西領に送り込まれた。古風な喋り方が特徴だが、ここだけの話普通に喋ろうと思えば喋れる。


過集中と注意力散漫を繰り返す。黙ってさえいればとても美形なのにいらんことまでよく喋る。実家は太いが傾きかけている。頭が良くて弁も立つけどこれっぽっちも自重できない。

そんな残念なタイプの天才だが、物事は前向きに考えよう。

普段はあちらこちらに興味の対象が移ろうが、並外れた集中力を発揮した際の成果は素晴らしい。近寄りがたいほどの美形だが、中身は気さくで親しみやすい。実家も傾きかけたとはいえまだ太い。自然に振る舞うだけで目立ってしまうのは自信家で聡明だからである。

残念なタイプの天才なのではない。

天才なタイプの残念なのだ。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ロザリア・ライトアロー

◆25歳/女性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


正位神官将夫人。シンクルスの妻であり、リアンセとプリスの姉。西方領出身。

シンクルスと初めて顔を合わせたのは三歳のときで、このとき既にライトアロー家とホーリーバーチ家の第一子同士として結ばれることが決まっていた。

親同士が決めた結婚とはいえ、成長に従い二人は自然に惹かれあうようになった。

政治的なごたごたから逃れるべく、ロザリアとシンクルスは南西領の神学校に入り直すことが決まり家を出る。同じ時期に、リアンセは父親の当主としての資質に疑問を抱き出奔。

家族喧嘩の最中に妹のリアンセ(脳筋)がカッとなって父親の頭を壺でぶん殴り、心配して見に来たシンクルスが我慢できずに腹を抱えて笑うのを見て以来「実はこの人ちょっとバカなんじゃないか」と思っている。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆レグロ・ヒューム

◆34歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将。

独特の個性と落ち着きなさゆえに生家では「将来の見込みなし」と冷遇されていたが、実際大人になったら兄弟の中で一番有能だったというオチがつく。たぶんヒューム家はもう終わっとる。

他のことはともかく仕事はできるというタイプ。

何故かしら自分のことを美男子だと思っている(根拠不明)。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆メイファ・アルドロス

◆32歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将補を務めるクレイジー長広舌。南西領陸軍のフェン・アルドロスの妹。

アルドロス家の後継がフェンとメイファしかいない事実からお察しいただける通り、もうアルドロス家も終わっとる。

人間としての中身に関しては姉より多少マシなレベル。

甲冑の上から乳首の位置を当てる能力を持っている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ニコシア・コールディー

◆29歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将。真面目で責任感が強い性格。二位神官将に対する態度が横柄だが、これでもかつては敬意を払っていた。

出身もシオネビュラ西部で、居城である西神殿の近くに妹夫婦が住んでいる。市内巡行の際など幼い姪が「おばさまー!」と手を振ってくる。

「お姉さまと呼べ」と思っている。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミオン・ジェイル

◆25歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将補。神学校卒業から僅か一年で現在の地位に抜擢された経歴を持つ。振る舞いは優等生然としているが口が悪い。

ジェイル家は家格が低く、神学校には長男である兄しか通えないはずだったが、武芸と学問の両方で兄より優れていることを証明し、進学の権利を勝ち取った。この生い立ちゆえに成果主義者である。

現在の地位を得てから両親は掌を返してちやほやしだしたが、家督を継ぐ気はない。ジェイル家も終わっとる。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ゼラ・セレテス

◆25歳/男性

◆所属:ソレリア民兵団


グロリアナ領主にしてソレリア民兵団代表。セレテス家は吹けば飛ぶような底辺領主(((失礼)))ながら、質実剛健を旨とする家風によってグロリアナ領を堅実に治めてきた。

セレテス流炎剣術の継承者。一子相伝なので、ゼラが死んだら剣術も絶える。


性格はやや強情で、数年前に自分で育てた野菜を上流貴族の客に供したところ「痩せた土で育った貧乏くさい味」と馬鹿にされ、「嫌なら召し上がらなくて結構でございます」と言って皿を下げ父親にこっぴどく怒られた。

以来、気にいらない客に対しては問答無用で畑を手伝わせている。


◆初登場回:3章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

付録◆アースフィア世界の度量衡


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◇長さの単位


基本単位はセスタセリオン。地域や職業によってセスタ尺とセリオン尺が使い分けられる。


1セスタ=2.5㎝

1セリオン=7.5㎝

1リセスタ(1リセリオン)=1/10セスタ(1/10セリオン)

1ニ―セスタ(1二―セリオン)=100セスタ(100セリオン)

1デセスタ(1デセリオン)=100ニーセスタ(100ニ―セリオン)

1クレッセスタ(1クレッセリオン)=10デセスタ(10デセリオン)


言語生命体たちが地球で創造主たちと暮らしていた時代、言語生命体の独立をかけた戦に異を唱え、地球人信仰を保つよう呼びかけた姉弟がいた。

姉の名はセスタ。弟の名はセリオン。

二人は同胞によって捕らえられ、両手をすりおろす拷問にかけられた。

救出されたとき、セスタの手首の関節より先の長さは2.5㎝、セリオンは7.5㎝しか残っていなかったと伝えられる。


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◇重さの単位


基本単位はケララ

ケララは麦をさす言葉だが、教会の伝統において典礼及び典礼聖歌を意味することもある。


1ケララ=2.5g

1リケララ=1/10ケララ

1ニーケララ=100ケララ

1デケララ=100ニーケララ

1クレスケララ=10デケララ


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◇体積の単位


基本体積はダータ。野蜜の意であり、血液ないし精液を暗喩する。


1ダータ=25ml

リダータ=1/10ダータ

ニーダータ=100ダータ

デダータ=100ニーダータ

クレスダータ=10デダータ

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